『龍三と七人の子分たち』やってるから、北野映画の感想全部書く!(その1)

つーワケで『龍三と七人の子分たち』が公開中。
感想コッチ書いたが、コレかなり笑った。面白かった。
でもやっぱり昔の北野映画のが好きだなー、と思うトコもあんので、じゃあと感想書いてみた。

ってなワケでとりあえずその1、処女作から『みんな~やってるか!』までなんですが、アレだ、正直この並びは凄まじい。
興行的にはそーでもないらしいが、ほぼ毎年撮ってんのに全部がケッ作。

のっけからこんなコトゆーのもどーかと思うが、観たコト無い人は感想とか読んでないでさっさとレンタル屋さんで借りてくんのをオススメ。
感想読んで面白くなるよーな映画じゃないし、誰でも観れば分かる映画なんで。

『その男、凶暴につき』(1989)

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たけしは暴力的なアウトロー刑事。
今日も年端も行かない悪ガキを半殺しにしたり、ヤクの売人を拷問するみたいにビンタしまくる。
そんなたけしにも愛する妹がいた。
だが精神病院の入退院を繰り返す不安定な妹の存在は、彼の精神を密かに蝕んでいた。
殺しが趣味の狂ったヤクザがたけしの前に現れたのは、そんな時だった…。

こないだ『セブン・サイコパス』(2012)っつーヘンテコ映画を観た。ガイ・リッチー調のオフビートなバイオレンス・コメディだったが、そん中に主人公たちが映画館で『その男、凶暴につき』を観てるシーンがあった。
そーゆー文脈で出てくる映画なんで、コレも基本はオフビートなバイオレンス・コメディ(ビートたけしが出てんのにオフビートとは、これいかに)
…なんですが、もう冒頭から異様な緊張感と殺気漂いまくりの、笑いながら客を殺しにかかる恐ろしいコメディなのだ。

なにが恐ろしいって、描かれるコトの倫理観の無さというか、それを捉えるカメラの倫理観の無さが恐ろしい。
基本長回しボーっと撮ってで、あんまりシーンを作りこんでる感じもしないんで、なんだかドキュメンタリーみたいに見える。
で、そのドキュメンタリーのカメラマンが6歳くらいのコドモって感じ。良いも悪いも区別がつかないで全部撮っちゃう、みたいな。
映画は一見普通のガキどもが笑いながらホームレスをリンチしてるシーンから始まるが、映画自体もそんな感じなのだった。

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http://imgkid.com たけしと妹のコドモっぽい関係は、その後の北野映画でもたびたび出てくる。

倫理もないが、(映画の)常識もない。
一貫したハナシの流れとか説明とかほとんど無く、とにかく脱線しまくる。
製作にあたってまず北野監督が手を付けたのは脚本の改変だそうだが(オリジナル脚本の野沢尚はそれに怒ったりした)、ソコでセリフの大部分を削除するとともに、本筋とあんま関係ないシーンが大量に入ったらしい。
夏祭りのシーンや俳優・たけしが延々と歩くシーンなんてプロなら真っ先に切りそうなモンだが、むしろソコこそ北野監督は詩情を込めてジックリ描くのだった。

その野沢尚はこの映画を「偶然の産物」と評したとか評さないとかだが、プロの論理より素人の直感と詩情を優先したのは意図的なコトらしい。
後の『ソナチネ』は当初『沖縄ピエロ』とゆー仮題が付けられてたそーだが、これゴダール『気狂いピエロ』(1965)のパロディである。
どっかで北野監督自身が「俺の映画が分からねーヤツはゴダールぐらい観ろよ」的なコト言ってたと思うが、ゴダールは映画が好きすぎて映画を壊しにかかったとゆー人なので、北野監督もそれに(多分)倣って映画を壊すのだった。

http://www.dvdbeaver.com
http://www.dvdbeaver.com たけしが延々と歩くシーンは、なにか物凄い緊張感が漂う。

ゴダールとか出てきてしまった。
そーゆー名前出すと急にツマンナイ映画に思えてくっから困るが、しかしとにかく面白いんで、誰でも一度はマジ観て欲しいです。
笑いながら犬を蹴り殺して遊んでた少年が家に帰って、無邪気にヒマワリの絵を描いてるよーな、そーゆー映画。
すげー不快で恐くて疲れるが、でもその絵はとても美しいんである。

ちなみに、この感じがよく出てたなーと思ったのは『ありふれた事件』(1992)って映画で、この映画はドキュメンタリーのスタッフが大量殺人鬼に密着して殺人をカメラに収めてく、って設定のニセ・ドキュメンタリー(モキュメンタリーとかいう)
『その男、凶暴につき』が気に入った人なら間違いなくクるもんがあると思うんで、是非一緒にどうぞ。
こっちはもう、詩情とかそんなん全然ない。

『3-4X10月』(1990)

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柳ユーレイは無気力人間。
なーんもやる気起きず、ただ毎日をボーっと過ごしていた。
んなある日、ユーレイはヤクザに因縁をつけられてしまう。
近所に住んでる元ヤクザのガダルカナル・タカを巻き込んでハナシは拗れ、やがて抗争にまで発展。
こうしてユーレイは友人のダンカンと共に、銃を調達すべく沖縄に飛ぶが…。

なんとなく影が薄い気がしないでもないが、コレもすげー面白い。
フィックスと長回しを駆使して、クズ人間ダメ人間どもの所業をボーっと撮った爆笑巨編。とにかく笑えます。

よーするにウルトラ無気力人間の柳ユーレイの夏休みのハナシで、友達とボーっとコーヒー飲んで、彼女とボーっと釣りデートして、沖縄のオジサン(たけし)のウチに遊びに行くってだけ。
カンタン明瞭!このシンプルさはホント良い!

で、その沖縄のオジサンがメチャクチャ狂った人で、無邪気に笑ってたかと思えば唐突にビール瓶で殴りかかってきたりする。自己破壊願望があるんで、自分のオンナを舎弟(渡嘉敷勝男)に無理やり抱かせたり、舎弟を犯そうとする。
なんか恐いハナシに思えるが、でもコレが超笑えんのだ。
とくにアレ、スナックでダンカンが下手な歌歌ってる横でたけしが対立するヤクザをボッコボコにするシーンなんて、爆笑もんだネ!

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http://imgkid.com ホントに幽霊みたいな柳ユーレイ。なんだその血色の悪さは!

たけしとトカちゃんの漫才みたいなやりとりもすげー楽しいが、ユーレイとダンカンの迷コンビっぷりもサイコー。
二人とも無口無表情な人で、ロクに会話とかしないが、でも付かず離れずなその距離感に思わず笑う。
俺はとくにダンカンのキャラが好きで、この人が空港でブラブラしながらアイスかなんか食べてるシーンがあるが、そのあまりの可愛さにキュンときてしまった!
実際、そーとーイヤなヤツらしいけどね!

マァそんな風にとっても楽しいバイオレンス・コメディなんですが、でもすげー爽やかな感動作だったりもすっから恐ろしい。
友達と遊んで、彼女作って、沖縄に遊びに行って、無気力ユーレイはアレ?人生って意外に楽しいじゃん?ってコトに気付くのだ。
冒頭、やる気なく歩いてたユーレイは、同じ構図のラストカットで走り出す。

「(バットを)振らなきゃ、始まらないよ」

とゆーセリフが最初の方にあるが、なにはなくともとりあえず振ってみようよ、走ってみよーよ、そしたら人生楽しくなるからさ!とゆー優しい優しい映画なのだ。

http://eigazine.com
http://eigazine.com 恐すぎるオジサンの横で固まるユーレイとダンカン。

一応オリジナル脚本をプロが書た前作と違って、こっちの脚本は北野監督が書いた。
なので前作にも増して脱線しまくりで、セリフもあんまない。
その自由さ、なんか観てるだけで幸せになってくるよ。

ヤクザ、純愛、沖縄、静かな友情、男の子の夏休み…と後の北野映画っぽいぽいモチーフ全部もアリ。
とにかく「観なけりゃ、始まらないよ」な、北野監督の才気バクハツの大ケッ作がこの映画なのだった!

ところで、この後の北野映画にも共通して言えるが、コレなにかっつーとジャック・タチ監督の映画である(詳しくはコッチ見てね!)
タチはサイレント・コメディを現代に蘇らせた巨匠だったりするが、その代表作の一つ『ぼくの伯父さんの休暇』(1952)が、どうもこの映画にとても影響を与えてそう。
沖縄のバカンスは初期の北野映画の定番だが、『ぼくの伯父さんの休暇』は無口なおじさん(タチ自身が演じる)が南仏にバカンスに出かけるハナシなのだった。

『あの夏、いちばん静かな海』(1991)

夏のある日、ゴミ収集人の主人公が捨てられたサーフボードを拾った。
その日から、彼は恋人と共に毎日海に通ってサーフィンに明け暮れた。
楽しい夏休み。
だが、やがて夏が終わると…。

http://shizukado.hatenablog.com
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主人公のカップルが二人とも耳の聞こえない人なんで、全編合わせてもセリフが数えるほどしか無い。
ハナシもあって無いよーなもんで、もうホント汚れた海でサーフィンしてるだけ。
なのに、なんでこんな美しくて、感動的なんだろか。

http://rateyourmusic.com
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マァ色々と好きなシーンもあるが、というか好きなシーンしか無いが、でも書くだけ野暮なんで、書かない。
予告編観てちょっとでもキた人は観てくれればいいし、コなかった人は観なけりゃいいと思う。
歩いて、海を眺めて、サーフィンして、また歩いて、家に帰る。
ただそれだけの映画。ポエム。
俺は北野映画でいちばん好き。

『ソナチネ』(1993)

http://hijackersandconverts.com
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沖縄でヤクザの抗争が勃発。東京のヤクザ・たけしたちが加勢を命じられる。
というコトで沖縄に向かったたけし御一行だったが、しかし沖縄ヤクザは手打ちに持ち込みたかったんで、やるコトがなくなってしまった。
しょうがないんで、とりあえずたけしたちは海辺の隠れ家に身を隠すコトに。
こうして、ヤクザたちの楽しい夏休みが始まった…。

『その男、凶暴につき』から『あの夏、いちばん静かな海』までの総集編みたいな映画。
前作から引き続いて久石譲が音楽を担当、その後しばらくコンビ作が続く。

前作の『あの夏、いちばん静かな海』は「分かるヤツだけ観ろ」と言わんばかりの映画だったが、一転してコッチはとても娯楽作って感じ。
いつもダラダラしてて、その夏休み的ダラダラ感がすげー気持ちイイ北野映画ですが、『ソナチネ』はエラくシャープでメリハリの効いたヤクザ映画なのだ。
久石譲の音楽もちょーカッコよくキマる。

http://www.cultprojections.com
http://www.cultprojections.com たけしの遊びにつき合わされる寺島進。イイ顔。

しかし映画の作りはダラダラしてないが、ハナシは相変わらず男の子の夏休み。
いつも死と隣り合わせの東京での生活から逃れて、沖縄にやってきたヤクザたちは夏休みを満喫。
アイス食べて、花火で遊んで、浜辺で相撲をとる。
楽しいナァ、いつまでも終わらなきゃいいナァ。
…でも、終わらない夏は無い。
そんなワケで、夏の終わりと共にヤクザたちは死地へと赴くのだった。

いつになくたけしが笑う。その目が恐い。
ギラギラ輝く沖縄のお日様の下、笑いながらロシアン・ルーレットやったりするたけしは『異邦人』のムルソーみたいでもある。
しかしどっちかっつーとムルソーは『3-4X10月』の柳ユーレイで、コッチのたけしはもっと明るい。
たけしはコドモみたいに遊びたいだけの人で、オトナ社会のツマンネェ現実とか、外で遊べなくなる冬の訪れがイヤなだけなのだ。

夏休み。
めいっぱい楽しく遊んで、遊べなくなったら死んじゃおう。

それがよーする『ソナチネ』で、この頃の北野映画なのだった。

『みんな〜やってるか!』(1995)

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ダンカンは、カーセックスがしたかった。
とゆーワケでカーセックスに必要なモノを探す。
まずオンナが必要だろ?それからオープンカーが必要で…あと、カネも必要だな!
こうして、ダッチワイフとエロ妄想を抱きながらダンカンは町を奔走する。
それが世界崩壊の序曲だとは知らずに…!

いやまぁ映画と現実は違うが、『ソナチネ』とか観るとどーしても北野監督は死にたいんじゃないか?と思ってしまう。
実際『ソナチネ』後の1994年にバイク事故起こして生死の境を彷徨うが、その後の『キッズ・リターン』(1996)は何か吹っ切れた感じがあんである。

『みんな~やってるか!』はバイク事故の直前に完成、復帰後に公開された。
監督のクレジットは北野武じゃなくてビートたけしなんで、それまでの自分の映画とは違うもんをやりたかったらしい。
こっちはもう自殺願望とかそんなん無く、ただただアホアホである。
あまりにアホアホしいんで、なんかもう神妙。

http://katsudo.exblog.jp
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まぁストーリーらしいストーリーとか別にない、スケッチ集みたいな映画なんで、コレも感想とか書くのやーめよ、だ。
ギャグのネタばらしほどサムイもんはない!

とりあえず、一言!
ラストは映画史上空前のアホ・スペクタクルである!
以上!

※余談ですが、予告編探してたら淀川長治さんの解説が見つかった。
淀長さんが北野映画を好きなのは知ってたが、聞いてビックリ。

「コレは『8 1/2』ですね」

とかゆーんである。
フツーの感覚で観たら「どこが『8 1/2』だよ!」となるが、ところが北野監督は後に『8 1/2』(1963)の焼き直しみたいな『TAKESHIS’』(2005)や『監督・ばんざい!』(2007)を撮るのだ。
やっぱ淀長さんの目は鋭い、とゆーか鋭すぎるぞコレは…。

【番外編】『たけしの挑戦状』(1986) ※ゲーム

http://calimero0655.hatenablog.jp
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なんせ『その男、凶暴につき』以前にたけしがプロデュースしたゲームなんで、批評家センセーとかには相手にされないが、ある意味北野監督の最重要作品である。
クソゲーの金字塔なんで名前だけは聞いたコトある人が多いかもしんないが、しかし実際やってみるとホントにヒドいゲームで、何年か前に買ったが未だにクリアできないし、する気もない。

一応書くと、こーゆーゲーム。
街を歩けばヤクザに殴られ、家に帰れば子供に殴られ、飛行機に乗れば爆発する。
やたら広いマップには色んな施設があるが、入っても大体は意味がないとゆーか、むしろペナルティが課せられたりする。
ファミコンのマイク機能を使った謎解き(スナックのカラオケで歌う)は斬新も、面白いとゆーか腹が立つ。
何のボタンも押さないで一時間コントローラーを放置する、とゆー謎解きに至ってはもう、それゲームじゃないだろ。

そんなヒドいゲームだが、それでも北野映画的エッセンスは満載。
会社をクビになった主人公が嫁と離婚、スナックのカラオケで歌ってたら老人に宝の地図を渡され、それを頼りに南の島へ旅立つとゆーハナシはまんま北野映画だ。
本筋とは関係ない無駄な部分への拘りもとても北野映画っぽく、映画館は三つぐらいあるし(入っても意味はない)、パチンコはできるし(やっても意味はない)、カルチャーセンターで色んな資格を取るコトもできる(ごく一部を除いて意味はない)
他のキャラクターと会話とかできないんで、プレイヤー=主人公はひたすら人々(嫁と子供含む)を殴り殺してカネを奪うコトになるが、この頃から北野映画のバイオレンス志向はあったのだ!

ハナシの希薄さと無駄な自由度の高さからどうしていいか分からず、序盤でクリアを諦める人々が続出したが(もちろん俺も)、もうなんかソレすら北野映画っぽい。

http://gamer-thread-vip.livedoor.biz
http://gamer-thread-vip.livedoor.biz ゲームオーバー画面は葬式。斬新です。

とくに初期の北野映画は映画でどこまで遊べるかっつートコがあるが、このゲームもゲームでどこまで遊べるかってトコがある。
小島秀夫と並んで映画狂のゲームデザイナー須田剛一は「オープンワールドの元祖」と評したりしてたが、やってるコトは基本的にオープンワールドの金字塔『グランド・セフト・オート(GTA)』シリーズと同じである。
『GTA』はゲーム業界への挑戦だったが、『たけしの挑戦状』もまたゲームの限界に挑んだゲームなのだった。
マァ、酔っ払ったたけしのヨタ話をスタッフが全部ゲームしてしまった、とゆーのが真相らしいですがネ。

…とまぁクドクド書いてきたが、しかしエンディングに流れるたけしからの有名なメッセージの前で全ては水泡に帰す。

「こんなげーむにまじになっちゃって、どうするの?」

ゲージツゲージツと北野監督を崇めるゲージツ的映画マニアどもは、よく肝に銘じておくよーに。

※ちなみに須田剛一は東映ヤクザ・仁侠映画や石井岳龍監督なんかのパンク映画、80年代のポストパンク・ニューウェーブのロック(とくにザ・スミス)あたりをルーツとする人ですが、北野映画からの影響も随所に見られる気がする。
唐突で過剰なバイオレンスの炸裂する『キラー7』(2005)(『セブン・サイコパス』と通ずるタイトルである)なんかとくにそうだが、南の島を舞台にしたオフビート不条理コメディ『花と太陽と雨と』(2001)なんかも『菊次郎の夏』(1999)みたい。
どっちもクエンティン・タランティーノが書いた脚本をデヴィッド・リンチが書き直して、それを基に北野武と三池崇史と今敏が自由に共同監督したようなゲームなんで、北野監督と言わず映画好きな人は面白いと思う。

その2に続く…。

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どっちもとにかく好き。そんだけ。

↓その他の北野監督作
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たけしの挑戦状

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kid

たけしの挑戦状、本人が照れ屋なので適当に作ったみたい話してますが、スタッフの話だとアイデアがいっぱい記された大学ノートを持ってきてかなり真剣に取り組んでいたそうですよ。

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