『リベンジ・オブ・ザ・グリーンドラゴン』を観た!

緑の龍?と思ったら青龍だった。ってなワケで『リベンジ・オブ・ザ・グリーンドラゴン』ですが、コレがとても面白かったんで感想書く!とりあえずこーゆーハナシ。

一人の中国人少年がニューヨーク・クイーンズに流れ着いた。自由と豊かな暮らしを夢見て密入国した少年だったが、しかしソコで待ち受けていたのは相変わらず苦しい生活。
やがて、彼は親友とともにクイーンズの中華系ギャング・グリーンドラゴンに(半ば強引に)引き抜かれる。こうして欲望と暴力の渦巻く裏社会で生きるコトとなった少年だったが…。

それにしても冒頭からしてヒドイ!たかだか10歳程度のいたいけな少年が、ギャングからバイトする中華料理屋のオーナーから徹底的に痛めつけられ、挙句の果てに遊び半分でチンチンをちょん切られそうになる。
両手を縛られて氷の上を歩かされる、とゆー拷問がホラー映画とかでたまにあるが、この映画じゃそれを10歳の少年にやる!ギャングたちが遊び半分でやるのだが、さすが、中国人の遊びは徹底してる。

そっから始まる映画なんで、もう全編ヒドイ・イタイ描写のつるべ打ち!ハンマーで指を何度も何度も叩き潰して、指をちょん切って歯を引っこ抜いて…なんてシーンはイタ過ぎる!
どうせヤツら味なんて分かんねぇからと、中華料理屋のオーナーが料理にツバとタバコの灰を入れるシーンもヒドイ!ギャングもヒドイが、ギャング以外の登場人物も人種問わず全員クズってんだから容赦がない。潔い映画なのだ。

で、そのクズな登場人物が劇的に多い。主人公とその親友、ギャングのボスと若頭(って言うのか?)、ギャングを追う中国人刑事、ギャングの世話になる歌手とその娘、密入国ブローカー、それを追うFBI捜査官。そこに主人公らの属するグリーンドラゴンと対立する複数の中国人・韓国人ギャングまで加わる。
顔を覚えるだけでもタイヘンそうだが、でも個々のキャラクターはとてもシンプルで人間関係も整理されてるんで、ウルトラ観やすい。監督は『インファナル・アフェア』(2001)のアンドリュー・ラウなんで、そこらへんは練られてんのだ。

っていうかコレ、アレだな。『インファナル・アフェア』三部作系6時間をたった90分に凝縮したよーな映画である。
そんだけ書けばどんだけ濃密な映画かよく分かると思うが、とにかく面白そうなもんは全部映画に放り込む香港映画人魂爆発の一本なのだ。

ギャングどもの抗争と権力闘争に恋愛と友情が絡んで、そこに華僑社会と白人社会の軋轢が入ってくる。映画はそれでもややこしくならない。ヒドくてイタい描写の連続なのに、陰惨にもならない。
裏社会に生きる男たちの十年弱の軌跡を、圧倒的なハイテンションでスタイリッシュに、たった90分で描き切る。それもまた、映画は娯楽だ!の香港映画人魂か?

公式サイト見ても名前とか出てこなかったが、俳優陣だとグリーンドラゴンの若頭役の人がすげー良かった。いかにもなワルだったりするが、なにかアニキと呼びたくなる貫禄がある。
その一方、ジョノカに「アンタ!あいつムカつくから殺しちゃってよ!」とか言われて渋々従うあたり、可愛いヤツでもある。

デカデカとポスターとかに名前載ってるわりにはあんま出てこないが、FBI捜査官役のレイ・リオッタもさすがに渋くてイイ。主人公の恋人役のシューヤ・チャンの透明な可愛さにも、グリーンドラゴンのボス、ハリー・シャム・ジュニアのクールな悪人っぷりにもグっとくる。
グリーンドラゴンの世話になる歌手も実に情けない、香港的ダメ人間感アリアリで良かったが、意外と主人公はどうでもいい感じではあった。っていうか、ギャングにあんま見えないし。

ところでこの映画、製作総指揮マーティン・スコセッシってコトなんで、かなりスコセッシを意識したような感じはある。とゆーかハナシの基本はスコセッシの『グッドフェローズ』(1990)(レイ・リオッタも出てる)で、そこにやはりスコセッシの『ギャング・オブ・ニューヨーク』(2001)を足したような感じ。

もう一本似た感じの映画で思い出したのは『シティ・オブ・ゴッド』(2002)。これもやっぱりスコセッシの影響の顕著な少年ギャングたちの一代記なんで、かなり似たところがある。
『シティ・オブ・ゴッド』の泥の中を這いずり回る作風に対して、『リベンジ・オブ・ザ・グリーンドラゴン』は泥をジッと観察する。

その意味で近いって感じがしたのは北野監督のオフビート・ヤクザ映画『アウトレイジ』(2010)だった。ハイテンションかつスタイリッシュなのだが、『アウトレイジ』も『リベンジ・オブ・ザ・グリーンドラゴン』も根底には冷めた諦観があんである。
どっちも登場人物がやたら多いわりに、その心情とかあんま描かれないが、それも冷めた映画空間の醸成に一役買う。そういや『インファナル・アフェア』三部作も最終的には仏教的な無常観に辿り着いたのだった。

映画の最後の方、密入国ブローカーがこんなコトを言ってた。「アメリカの歴史は憎悪の歴史。私こそ、アメリカン・ドリームよ」それはまた中国の歴史でもあると思うが、この映画に出てくるクズの人たちは憎悪を歴史としてしか捉えられない。
自分のウチから憎悪が生じる、とは考えられないんで、白人社会と融和するコトが出来なかったし、悲劇的な末路を迎えた。憎悪が憎悪を生む世界の中で、誰一人として安らぐコトはない。華僑のハナシだが、白人だろうが何人だろうが同じである。

映画はそーゆー人たちに冷めた眼差しを向けるが、一人自分の中の弱さダメさと向き合った男にだけ、わずかに救いの可能性を与える。クズどもの騙し合い殺し合いの末に男がソコに辿り着くラストは、予想外に沁みる静かなモノなのだった。それがまた、意外なヤツだっただけに。

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『インファナル・アフェア』は傑作だと思うが、なにが凄いってヒットを受けて急遽製作が決まったと思われる二作目三作目もちゃんと面白い、とゆーのがスゴイ。
とりあえず一作目は警察に潜入した香港マフィアの犬、アンディ・ラウと、香港マフィアに潜入した警察の犬、トニー・レオンの色気がサイコー。トニーの上司アンソニー・ウォンも渋くて惚れ惚れしちゃうが、このキャラクターは『リベンジ・オブ・ザ・グリーンドラゴン』のレイ・リオッタに受け継がれる。

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