『龍三と七人の子分たち』やってるから、北野映画の感想全部書く!(その2)

その1に続いてその2。
バイク事故から復帰後の北野監督の映画の感想。
この頃になるとバイオレンスは退いて、代わりに詩情と笑いが全面に出てくる。
なので穏やかな映画多し。

『キッズ・リターン』(1996)

落ちこぼれ高校生二人組。
高校卒業後、一人はボクサーの道へ、一人はヤクザの道へ進む。
順風満帆に思えたそれぞれの道だったが、それもやがて翳りが見えてくる…。

果たしてバイク事故が北野監督にどんな心境の変化をもたらしたか知らんが、たぶん初めてストーリーの面白さで引っ張る映画になった気がする。セリフも普通にある。
一応ボクサーとヤクザが主人公も、お笑い芸人を目指すいじめられっ子二人組やダメなヤンキーたち、喫茶店でバイトしてる同級生にずっと片思いしてる無口な少年らを平行して描いた群像劇になってて、そいつらの高校三年から十年弱(くらい?)の軌跡を追う。

マァ同窓会とか行くとさぁ、いろんなヤツいるよね。なんも変わんないヤツもいりゃ落ちぶれたヤツもいて、んでみんなからバカにされてたよーなヤツが案外勝者になってたりする。人生分かんないもんですネ。
『キッズ・リターン』はそんな映画で、あぁアイツがあんなコトになってたのか!へぇこんなコトになってたのか!ってゆー驚きがある。
でソレを観てると、なんかこう自分の悩みとかっつーのも相対的なもんで、マァ案外大したもんでもない、とか思えてくんである。

http://bullesdejapon.fr
http://bullesdejapon.fr モロ師岡がボクシングジムのダメな先輩を演じてますが、コレ名演。いるんだよなー、こーゆー人。

お笑いコンビを目指すイジメられっ子二人組のエピソード、正直泣いた。
別に大したコト描かれるワケじゃないし、全部で10分も出てこないのに、コレがすげー感動的。
なんとなく芸人に対する北野監督の愛情が感じられる気がする。

その他、オトナに変装してエロ映画を観ようとするシーンとか、地元ヤクザの入り浸るラーメン屋のシーンとか、ノスタルジックな名シーン多数。
でもなんつっても、ママチャリに乗ってボクサーとヤクザが高校の校庭をグルグル回るシーンがイイ。
いくらカッコつけてもオトナぶっても、この人たち結局ママチャリに乗るのだ。いつまでも悪ガキなんである。
二人がママチャリに乗ると久石譲の音楽がグッと盛り上がって、コレもサイコー。

http://blogs.yahoo.co.jp
http://blogs.yahoo.co.jp 安藤政信はこの映画がデビュー作。屈折した眼差し、イイ。

映画の最後、青春=夏休みが終わって、もうみんな昔みたいに無邪気には遊べなくなってしまう。
でも今までの北野映画と違って、しょうがねぇやっつってみんな苦笑いするだけ。
だからココでは誰も死なない。
マァ死ななかったら、なんとかなっかもしんないしね。
楽しい夏休みが終わっても、でも何も、まだ始まっちゃいねーんである。

マジ素晴らしいケッ作だと思う。

『HANA-BI』(1998)

http://diaryofascreenwriter.blogspot.jp
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無口で不器用な刑事・たけし。
彼には不治の病に侵された妻がおり、それが彼の人生に暗い影を投げかけていた。
そんな折、たけしの同僚・大杉漣が職務中に撃たれ、半身不随になってしまう。
責任を感じ、人生に絶望したたけしは妻を連れて旅に出るが…。

傷心のたけしと妻・岸本加世子の、最後の夏休みのハナシ。
泣けるんだよナァ、二人の絡み。
マァいつもの無言のプラトニックな関係だったりするが、岸本加世子がホント、死病に侵されてんのにずっとコドモみたいに笑ってて、神様みたい。
車ん中でマジックかなんかやって遊ぶシーンなんて、マジでいーんだコレ。

たけしと岸本加世子の旅と平行して、職を辞して妻子を失った大杉漣の失意の日々が描かれる。
でこの人、最初は死んじゃおっかなーぐらいに考えてるが、絵を描くコトに目覚め、毎日毎日ソレに没頭する。
映画に出てくる絵は実際にたけしが描いたヤツで、素朴で遊び心いっぱいで楽しい。
大杉漣の部屋はどんどんその絵で埋まってく。映画もどんどん現実を離れて、美しいイメージで埋め尽くされてく。
現実よりも美しいもんはある。だからもう、死は怖くない…。

http://www.spietati.it
http://www.spietati.it 映像はとても美しい。

北野監督自身が奇跡のカット、と呼んでたシーンがある。
たしか浅草寺かどっかだったと思うが、画面右からトコトコーって犬が歩いてきて、ちょうど真ん中に来たトコで鐘がゴーンて鳴る。
で、犬はソコで立ち止まって、音のした方を眺める。
その間!その詩情!たしかにスゲーわ。

ところで、この映画の岸本加世子のキャラクターって、フェリーニ『道』(1954)のジュリエット・マシーナがモデルじゃないかなぁ。
アレもまた夫婦の旅の映画で、んでジュリエット・マシーナが天使みたいだった。
(感想コッチ

『菊次郎の夏』(1999)

http://blog.livedoor.jp
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夏休みなのに、主人公の少年には行くトコがない。
そんな少年を不憫に思った近所のスナックのオバサンは、ダンナのたけしにどっか連れてってやるように言う。
ガキの相手なんて、と思いつつもしぶしぶ少年を連れて旅立つたけし。
こうして、二人のちょっと切ないノンビリ珍道中が始まった…。

タイトルがいつも凝ってる北野映画ですが、コレもシンプルなタイトルに見えて実は仕掛けがあった。
で、映画観終わってタイトル考えっと、ちょっとジーンときちゃうんである。

バカンス映画で、無口なガキとヤクザくずれのたけしの夏休みのハナシ。
たけしは不器用で粗暴な人なんで、行く先々で色んな人に迷惑かける。
で、周りの人はしょーがねーな、あのオヤジ!って感じで、迷惑しながらもたけしのワガママに付き合ってくれて、一緒に遊んでくれる。
なんか天国みたいな映画である。

http://driftingwiththeclouds.tumblr.com/
http://driftingwiththeclouds.tumblr.com/ お馴染みの釣りシーン。

久々に夏休み的ダラダラ感が戻ってきたんで、あんまストーリーとかも無い。
ボーっと撮ってボーっとギャグをやる。ボーっと海とか撮る。
『3-4X10月』(1990)みたいな、ダラダラの中の唐突な暴力とかあるワケでもなく、ホントにただダラダラするだけ。
どっちかっつーと『あの夏、いちばん静かな海』(1991)に近いが、でもコッチはもっとポップで笑える。
競輪ギャグ、面白かった。あーゆーの好き。

それにしても、どーしてたけしはあんなに遊びたがるのか?っちゅーのがこの映画でストレートに出てくる。
とにかくこの人寂しがり屋で、寂しさを忘れたいから遊んで笑おうとすんのだ。
そーゆー寂しさはバイク事故以前の北野映画じゃワリと隠そうとしてた感じあるが、前作あたりからストレートに出てきた気がする。
一人でいたくないし、一人で死にたくないんで、おちゃらけて遊ぶ。
すげー真面目な人だなーって思う。

ちなみにコレ、ジャック・タチ監督の『ぼくの伯父さんの休暇』(1952)と『ぼくの伯父さん』(1958)を合わせたよーな映画になってる。
コレ好きな人はソッチも面白いと思う。

『BROTHER』(2001)

http://toutlecine.challenges.fr
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抗争で日本を追われ、LAにやってきたヤクザのたけし。
ソコにはヤクの売人の弟がいて、たけしは彼に誘われ再びヤクザ稼業に乗り出す。
こうして勢力を拡大していくたけしたちだったが、ソレをマフィアが黙って見ているワケもなく…。

お馴染み「ファッキンジャップくらい分かるよバカヤロー」映画。
外国資本なんで大分普通のヤクザ映画(とゆーか仁侠映画か)っぽくなった。
なので正直、印象薄し。ケッコー内容忘れた。

覚えてんのはアレ、ヤクザの寺島進と地元ギャングがバスケするシーン。
あと、窓から投げた紙飛行機がヒラヒラと落ちてくシーン。
ちょっと恥ずかしいくらい詩的かつ私的なシーンだな、コレ。

http://cassavafilms.com
http://cassavafilms.com この黒人の人、なんかひょうきんでイイ人だった気がする。

そーいや、なんかとてもこそばゆい思いをしたの思い出した。
なんつーか「俺たちゃ日本人だ!」って主張しまくる感じがあって。
久石譲の音楽もさぁ、カッコつけまくって恥ずかしいっちゅーか。
その極地が例の「ファッキンジャップくらい分かるよバカヤロー」のくだりで、いやもう、顔がニヤァって歪む。
黒人ギャングがさぁ?たけしを「アニキ!」って…うー、ニヤァ!

まぁそーゆー映画で、俺ちょっと苦手なんだよなぁ。
相変わらず、美しいとは思う。
楽しいとも思う。
でもニヤァってなっちゃうのだ。

『Dolls』(2002)

http://www.cinefatti.it
http://www.cinefatti.it

政略結婚のため、愛する彼女を捨てた男。
彼女は狂い、男は罪滅ぼしのために彼女と自分を赤い糸で繋ぎ、二人で旅に出る。
かつてヤクザになるため、これまた愛する彼女を捨てた老ヤクザ。
彼女もまた狂って、来る日も来る日も老ヤクザの訪れを待っていた。老ヤクザは罪滅ぼしのため、彼女の下を訪れる。
アイドルとその追っかけ男。
アイドルに夢中になるあまり、彼女を傷つけてしまった追っかけ男は、やはり罪滅ぼしのために自分を捨てて彼女に捧げる。
果たして、男たちの罪は赦されるのだろーか。

ドールズとゆーくらいなんで、文楽とか出てくる。
俳優さんの演技は徹底的に押さえ込まれて、眉一つ動かすコトなくただただ機械的に動くだけ。
お人形さんの映画なのだ。

オムニバス形式で、赤い糸で繋がれたカップルを軸に三つのプラトニックな恋愛が描かれる。
出てくる男はみんな無口で不器用な人で、愛する人に対して罪の意識を抱いてる。
なワケで男たちはプラトニックな恋愛を通して罪滅ぼしをしようとするワケですが、なにか、北野監督自身嫁さんに対して思うトコがあったりすんだろか。

http://movieandfashion.blogspot.jp
http://movieandfashion.blogspot.jp そういえばフカキョンも出てくる。歌うシーンもちゃんとあります。

マァそれはいいとして、赤い糸のカップルの片割れ・菅野美穂がスゲーイイ。
この人いつもちょっと化け物じみた、人間っぽくない人を演じてる気がするが、この映画だと完全に人形と化すんで人間ですらない。
そのお人形さんが、映画の最後に男の献身とゆーか自己犠牲に対して見せる表情。泣けるんだ、コレ。

いつもの北野映画的ボンクラ二人組もサイコーだナ。
二人組の片割れはホーキング青山。その電動車イスのノンビリした動きがとても幸せな感じなのだが、いつも横にくっついてるジャージ男に鋭いツッコミや毒舌を浴びせかけ、笑わせられる。
二人の魚釣り(コレもよー北野映画出てくんな)のシーンはこの映画の隠れたハイライト。

「全然釣れねーじゃん。それ、エサなに付けてんの?」
「みかんです」
「バカ!みかんで釣れっかよ!」

ホーキング青山とジャージ男もそうだが、この映画の三組の男女の関係は非対称的だったりする。
で、その関係においては強者の立場にあるヤツが、どの場合でも弱者の立場にあるヤツに黙って頭を垂れる。
強者の矜持ってヤツか。
こーゆーの、カッコイイと思うわ。

その3に続く…。

【ママー!これ買ってー!】


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そういえば『みんな~やってるか!』(1994)の段階で、淀長さんがたけしは若者を描くの上手いネェって言ってた。
あの映画を観て若者の描き方に言及する淀長さんのセンスはマジでタダならぬもんがある。
『キッズ・リターン』の若者たちのリアルで繊細な感じってすげーイイんだけど、そーゆーの既に読み取ってたんである。

マァそれはともかく『キッズ・リターン』、コレ本当にイイ映画だ。
若者たちの希望とか焦りとか挫折とか、そーゆーのサラっと描くんだけど、でもマジ胸に迫ってくる。
群像劇スタイルで色んな若者を交互に見せるんで、ドラマも一直線じゃなくて静かな中にもうねりまくる。
好きだなぁ、大好きだな、コレ。

たぶん北野映画でいちばん観やすいし、いちばん普遍的だと思う。
とにかく観て!

↓その他のヤツ
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