『龍三と七人の子分たち』やってるから、北野映画の感想全部書く!(その3)

その1その2に続いてその3。
なんか色々迷ってた感のある作品群から、吹っ切れた感のある作品群まで。
いやしかし、こうして並べてみるとバラエティに富んだ、とゆーかエラい混乱したラインナップだな。

『座頭市』(2003)

http://i.mtime.com
http://i.mtime.com

寂れた宿場町にやってきた座頭市。
同じ頃、浪人と芸者姉妹とその町に流れ着いた。
いずれも過去に曰くを抱えた彼らは、やがて町を牛耳るヤクザを前に、刃を抜くコトになり…。

金髪の座頭市をたけしが演じた映画。
道端でタップダンスの練習してる若者が出てきたと思ったら、最後はみんなでタップダンスのお祭りミュージカルになる。
大ヒットシリーズのリメイクにしちゃかなり遊んでるが、でもオリジナル座頭市の勝新さんがそもそも映画で遊びまくる人だったんで全く問題ナシ。

しかしコレ、あんま面白くなかったナ。
いやタップダンスの若者とかさ、槍持って走り回ってる村のバカ(たけし軍団の無法松)とかさ、面白い画いっぱいあってさ、でもハナシがあんまオモロない。
基本カメラもハナシも引いてるんで、なんか出てくる人の情念とか伝わってこなくてさぁ。それ大事じゃない?時代劇って。
なんつーか、勝新さんの顔がアップになるとドラマになるけど、(この頃の)たけしさんの顔はドラマになんねーっつーか。

たぶん最大のウリの殺陣は、なんだかとてもスタイリッシュ。
ハリウッド映画的なカッコ良さなんだけど、緊張感とか迫力ほぼ無い。
それもやっぱり、ナマの肉体とか情念が無いからだと思う。

なんか、そんな感じだったナ。

『TAKESHIS’』(2005)

http://kinofilms.tv
http://kinofilms.tv

俳優志望の万年フリーター・北野は、ある日エキストラの仕事で憧れの大物タレント・映画監督のたけしに出会う。
その日から二人の日常は少しずつ狂っていき、やがて夢とも現実ともつかない世界に迷い込んでしまう…。

「俺、もうなに撮ったらいいか分かんねぇよ」三部作その1。
この後の『監督・ばんざい!』もそうですが、セルフ・パロディ的なメタ映画になってて、要するにフェリーニの『8 1/2』(1963)
ハナシの錯綜具合とシュルレアリスティックなビジョンはデヴィッド・リンチの『ロスト・ハイウェイ』(1997)とか『マルホランド・ドライブ』(2003)にも近い。

『ロスト・ハイウェイ』のパトリシア・アークエット、『マルホランド・ドライブ』のナオミ・ワッツに対して、コッチの脱ぎ要員は京野ことみ。イイね!
そしてリンチ映画に毎回出てくる不思議な精霊は、コッチじゃゾマホンだ。エッ!
そのあたり意識してやったとゆーより、リンチもやっぱり『8 1/2』大好き人間(家にポスター貼ってる)なんで、根っこが同じだったってコトかもしんない。

http://torfilm.ru
http://torfilm.ru ションボリたけし。

『座頭市』の前までは甘いポエム映画が何作か続いたが、コレはなんだか暴力衝動アリアリ。
プラトニックな恋愛を是とする北野映画に珍しく、ナマの女体が出てくる。
編集とか脚本構成も含めて、そのあたり『3-4X10月』(1990)の感じ。
『3-4X10月』は主人公の無気力人間が、しかし脳内にゃ破壊衝動の権化みたいな男(たけし)を住まわせてるっつーハナシだったが、ココじゃ強面の監督・たけしの脳内に無気力なダメ役者・たけしが、無気力なダメ役者・たけしの脳内にゃ強面の監督・たけしがいる、ってワケである。

自由にイメージ羽ばたかせて遊んだ、とゆー映画なんで、楽しいシーンいっぱい。
暗闇に浮かび上がるゾマホン、スクラッチされるオッパイ、銃撃戦が星座になって、内山くんと松村邦洋が戯れる(幸せな画である)
でもその中にゃ、成功と引き換えに色んなモノを失った、あるいは失いつつある北野監督の罪悪感と苦悩があるのであった…と思われる。

北野監督のモノローグみたいな映画だが、モノローグとゆーモノは他者(現実とか死でもいーけど)を招き入れないと永遠に終わらないんで、ラスト10分くらいは監督たけしの夢かと思ったら俳優たけしの夢、かと思ったらやっぱり監督たけしの夢で…みたいの何回も繰り返して、投げやり気味に終わる。
他者不在の、孤独な映画なのだ。

『監督・ばんざい!』(2007)

http://matome.naver.jp
http://matome.naver.jp

次回作に悩む映画監督・たけし。
アレコレ映画の構想を練るが、どーも上手くいかない。
次第に彼のアタマは混乱していって…。

「俺、もうなに撮ったらいいか分かんねぇよ」三部作その2。
前作から一転、『みんな~やってるか!』(1994)路線のお気楽コメディ。というかネタ集。あるいは創作ノート。そして再び『8 1/2』。
ホラー、コメディ、ノスタルジー映画と、様々な映画のアイディアを練ってはみるが、映画監督・たけしは自らそれを壊してしまう。
デビューした頃は既成の映画をぶち壊してやる!をモットーに映画を作ってた北野監督だったが、いざ名を成してしまうと、今度は破壊の矛先が自らの映画に向かった。
そーゆー意味じゃコレも苦悩に満ちた映画である。

でもマァ前作みたいに変に生真面目な感じもなく、なんだかキュートな岸本加世子、唐突乱入の蝶野正洋なんかをアハハーって笑いながら観れる。
コテコテのギャグが続くんで、そーゆーのダメな人には多分面白くないとは思う。

『アキレスと亀』(2008)

http://eiga.com
http://eiga.com

幼い頃から絵だけをひたすら描き続けてきた売れない画家・たけし。
売れるために色々試行錯誤をするが、すべて裏目に出てしまう。
そんな彼を、妻だけはずっと傍らから見守っていた…。

「俺、もうなに撮ったらいいか分かんねぇよ」三部作最終章。
コレ単体でも面白いが、三部作続けて観るとすげー感慨深いもんがある。
モノローグ的な前二作と違って、コチラはダイアローグ(で、あろうとする)
画家・たけしのキャラクターってのは前二作に出てきた監督・たけしと同型だったりするが、前二作と違って、ソレに対する外部の視線がココにはある。
他者の導入が「俺、もうなに撮ったらいいか分かんねぇよ」状態を終わらせる。
コレもやっぱり『8 1/2』なんである。

ハナシは画家・たけしの幼少期から始まる。
この人自閉気味で、ひたすら絵を描くコトしかアタマにない。
少年になっても、青年になっても、中年になっても、ひたすら絵を描くだけの日々。
そんな彼のひたむきな姿に一人の少女が恋をして、やがて結婚。
でも、たけしは彼女を蔑ろにして、やっぱりひたすら絵を描くだけなのだった。

たけしは絵が結構上手かったが、画壇には一向に相手にされない。
それならばと流行のスタイルを取り入れて画廊に持ち込むが、その度にこんなコト言われる。

「もうそんなの、流行んないよ」

かくしてたけしは次第に、なにを描いたらいいのか分かんなくなってくるのだった。

http://matome.naver.jp
http://matome.naver.jp 芸術を求めて、次第に壊れてくたけし。そんなたけしを見限らない嫁さんはとても偉大。

基本そーゆーハナシなのだが、しかしどうも画家・たけしの苦悩はもっと根深いようである。
売れる売れないでなく、自分がなにを本当に描きたいのか、なにが本当の芸術なのか、ソレがすっかり分かんなくなっちゃったコトにたけしは苦悩してたのだ。

映画の終わりまで行っても、結局その答えは出ない。
けれどもその代わり、そんなの他者(妻)の目には滑稽に映るだけだってコトに、画家・たけしはようやく気付く。
たけしは芸術が分からない。アキレスは亀に追いつけない。
んなパラドックスは結局のところ内省のウチにしか存在しないワケで、ハタから見りゃアキレスはいとも簡単に亀を追い越してしまうんである。

誰かが芸術を必死に追い求めてる時、周りのヤツらにゃソイツがちゃんと芸術をやってるように見えるってワケか。
良いハナシだネェ。

前二作と違って、編集から脚本から照明から、全部一般映画っぽくなった。
とても素直で見やすいので、なんでしょう、なにかを追い求めてて、でもソレが手に入らないコトに悩んでる人は観たらいいんじゃないかなぁ。
芸術家の業がマザマザと描かれてるんで、映画だろーが絵画だろーが音楽だろーが、なにか芸術の道へ進みたい人も必見(ジャズ除く)
面白いし、泣けるよコレ。

『アウトレイジ』(2010)

巨大暴力団・山王会の会長・北村総一朗は、傘下の池元組と麻薬でシノいでいる村瀬組の接近を警戒していた。
ソレを聞かされた山王会若頭の三浦友和は池元組組長・國村隼に村瀬組を締めるよう命令する。
しかし村瀬組組長・石橋蓮司と兄弟盃を交わしていた國村隼は自ら手を出せず、命令を配下の大友組組長・たけしに丸投げ。
理不尽な命令に不満を覚えながらも村瀬組を締めにかかるたけしだったが、ソレが引き金となって山王会の内部抗争が勃発し…。

『アキレスと亀』でスッカリ吹っ切れたらしいんで、もう過度にカッコつけたり、構成こねくり回したり、奇を衒ったりしない。モノローグでもない。
義理も人情も無い現代ヤクザの抗争を淡々と描いた、ストレートな、でも激辛の娯楽ヤクザ・ノワール。血抜きされた『仁義なき戦い』(1973)みたいな感じ。

マァとにかくクズいヤクザたちが怒鳴りまくる。騙しまくる。殺しまくる。
仁義もへったくれもあったもんじゃないが、そのあたり徹底してんので逆に爽快だったりする。
画的にはフィックスとフェードアウトを多用した淡々としたモンで、誰が死のうがカメラはただボーッと眺めるだけ。
ハナシも大きなうねりとかあんま無く、というか映像のトーンのオカゲで、どんな展開になっても驚きとかない。
その無常観。無常すぎて、笑う。

http://eigazine.com
http://eigazine.com ズラーっと並んだヤクザたちをベルトコンベアーに次々と捉えてく冒頭の移動撮影、コレがすげーイイ。

北野映画に珍しく演技の面白さでハナシをドライブさせる感じがあり、なんかもうみんな本職(って別に知り合いいないから知らんが)に見えてくる。
一番ビックリしたのは金庫番の加瀬亮さんだナ。この人、いかにも北野映画的な大人しい風貌なんでそーゆー感じかと思ったら、クソ嫌味ったらしいインテリヤクザをバリバリ演じてて素晴らしかった。
キレると急に凶暴になるが、その暴力のヒステリックな感じがサングラスの奥に隠した弱さを感じさせ、いやなんとも味のある演技なんだコレが。

暴力団の構造を解剖学的に見せてくれて、なるほど現代ヤクザってこんな感じなのかなぁと勉強になるようなならないようなだが、でもコレ、人が死ぬシーンを除きゃどんな組織でもよくあるハナシだ。
政党だろうが軍隊だろうが会社だろうが学校だろうが、組織ってぇのは結局こーゆーもんなんだろナ。

ヒーローとかいないんでストレス解消にはならないと思うが、なにか、ビール片手に世知辛い世の中にグチ垂れたくなる映画なのだった。

『アウトレイジ ビヨンド』(2012)

http://www.filmofilia.com
http://www.filmofilia.com

前作の数年後。
刑に服し、スッカリ覇気を失ったたけしの下に、悪徳刑事・小日向文世が現れる。
山王界の犬となって甘い汁を吸っていた彼だったが、さすがにデカくなりすぎた山王会を警戒。ならばと山王会に恨みを抱くたけしに目をつけたのだった。
同時に関西ヤクザとも接触し、山王会を追い込もうと権謀術数をめぐらす小日向。
果たして、コトは彼の思うとおりに進むのだろうか…。

前作の脚本も映像同様に淡々としたもんだったが、コレの比じゃない。
もう冒頭から熱とか皆無。小日向文世に唆されたたけしが再び抗争の引き金を引くが、全くやる気ナシ。
後はもう小日向の計画通りバタバタと機械的に人が死んでくだけなんで、なんか工場の生産ライン見学してる気分になってくる。
北野映画的な詩情とか一片たりともないが、完全に統御された機械の持つ崇高、みたいのがあんである。
なんかクラフトワークの音世界みたい。

http://www.filmblerg.com
http://www.filmblerg.com ヤクザいっぱい。たけしは不在。

俳優陣は相変わらず名演も、んな機械の中で空回りするばかり。演技に熱が入れば入るほど、怒鳴れば怒鳴るほど笑えてくる。
バイオレンス・ギャグが結構あった前作と違って笑えるシーンなんてほとんど無いが、でも完全にコメディになってるあたり、恐ろしい映画である。

ハナシが進むにつれて画面からたけしは消えてって、最後の方は出てきても無言でボーっと立ってるだけ。
さながら幽霊の如しだが、『龍三と七人の子分たち』(2015)に脇に回って出演したときも、やっぱりなにか幽霊、とゆーか抜け殻なのだった。

狂犬・少年・座頭市・芸術家、と自らの映画の中でペルソナを変えてきた北野監督だったが、どうも今のトレンドは幽霊/抜け殻らしい。
オバケと化した北野監督のこれから、はてどーなるんでしょね。

【ママー!これ買ってー!】


アウトレイジ [Blu-ray]

とゆーワケで『アウトレイジ』ですよ、『アウトレイジ』。
北野監督の理系脳全開って感じの冷徹な映画ですが、それでちゃんと誰でも(多分)オッケーな感じの娯楽映画になってるあたりにグっとくる。
社会化見学のつもりで楽しめる、現代ヤクザ図鑑。

↓その他のヤツ
座頭市 <北野武監督作品> [DVD]
TAKESHIS’ [DVD]
監督・ばんざい! <同時収録> 素晴らしき休日 [DVD]
アキレスと亀 [DVD]
アウトレイジ ビヨンド [Blu-ray]

広告

コメントしてあげる

wpDiscuz