『コングレス未来学会議』の原作を読んだヨン!感想書くヨン!

レムですよ、レム。スタニスワム・レム。
爆睡ケッ作『惑星ソラリス』(1972)の原作書いた人ってのは知ってたが、なんせあの映画のイメージがあるもんで、なかなか手が出せなかった、あのレム。
そのレムが書いた『コングレス未来学会議』(2013)の原作『泰平ヨンの未来学会議』を、ついに読んだ。
表紙からしてマジメそうなんで、いったいどんな、いったいどんなナンカイな?…と思ったら、ユカイツーカイキキカイカイな楽しい小説なのだった。
とりあえずあらすじ。

世界の様々な問題に対処すべく開催される世界未来学会議に出席しようと、宇宙探検家・泰平ヨンがコスタリカにやってきた。
とりあえず会場で宿泊地のウルトラ巨大ホテルでくつろいでいたが、そのとき運悪く政変が勃発。
反体制派が水道に混入した慈愛覚醒剤を飲み、政府軍が鎮圧のために投入した誘愛弾をモロに浴びたヨンは、不快に幸せな世界にトリップするのだった…。

あっはっはー、ユカイな幕開けだナー。
ウルトラ巨大ホテルには超いろんな人が集まってんですが、もうそっからして面白いよね。
どいつもこいつも大真面目にバカ。なにか世の中を良くしようといろんなコト考えてたりすんですが、それがまったくアホらしい。
ヨンの一人称でハナシは進むが、この人とても常識人のオジサンなんで、大真面目バカやシュールな状況に対するクールな反応っぷりが面白い。
慈愛覚醒剤飲んだヨンが必死に悪の感情を呼び覚まして自分を保とうとするあたり、大爆笑だ。

なんかちょっと昭和のいる・こいるの漫才みたいなトコあんな。
まったくハナシを聞かないアホのこいるさんも面白いが、その横で延々と常識的なコトを話し続けるのいるさんのが段々と面白く見えてくる、みたいな。
次第にヨンの常識人っぷりが笑えてしょうがなくなってくる。

http://filmpulse.net
http://filmpulse.net 『コングレス未来学会議』より、アニメになったロビン・ライト。

基本オフビートなんですが、ドラッグ小説でもあるんで展開は物凄い波乱万丈。
トリップしたヨンが空を飛び、人間ネズミに遭遇し、別人のカラダに入れ替わったりした末、冷凍保存されて未来に行く。
変なガジェットもキャラクターも矢継ぎ早に出てきて、いやまったく目まぐるしい。
読んでるコッチも思わずトリップだが、それはなんだかファンシーなトリップなのだった。
楽しいナァ。

楽しいっつーと、ふざけた謎造語の数々もサイコーだった。
怒足、足理学、叔母散(おばさん)みたいな言葉遊びがページを埋め尽くすが、こんなの訳した翻訳の人は凄い。
「魂胆色遊駆落二人絡操」なんて震えるね。
これは芝居の題で、「こんたんいろあそびかけおちににんロボット」と読む。
原文どうなってるか知らんが、凄いアクロバティックな名訳。

レムのコトバに対する拘りはひとかたならぬモノがあるらしく、言語未来学なんて概念も出てくる。
言語の語形変化の可能性を通じて未来を研究する学問らしいが、なんなんだそのアイディアは。
面白いが、なんだかチョットありそうである。
その感覚はスバラシイなぁ。

http://www.criterionforum.org
http://www.criterionforum.org 『不思議惑星キン・ザ・ザ』

楽しいトリップと未来旅行は、最後には音を立てて一気に崩れ去る。
その疾走感とスラップスティックすれすれの怖さ!
こーゆー現実崩壊感覚はフィリップ・K・ディックに近いもんがあるが、それもそのはず、レムはアメリカSFなんてゴミしかねーよとか言いながら、ことディックに関してはとても評価してたのだった。
実際アイディアとかモチーフが被るトコもかなりあり、そのあたりディック好きな俺は嬉しくなっちゃったナァ。
『ザップ・ガン』とか『最後から二番目の真実』とか、結構近い。

そして思い出したのは、『惑星ソラリス』よりも『不思議惑星キン・ザ・ザ』(1986)なのだった。
すっとぼけたユーモアとオフビートな感覚が、なんか似てんのだ。
ユーモアの殻で包んだ体制批判ってのも共通するところ。

あるいは世界中の人間が残らずバカになった世界で一人の常識人が奮闘する恐怖のバカSF『26世紀青年』(2006)とかこんな感じだったナ。
インテリは子供産まないがバカはポンポン産むんで、未来はバカばっかりになってる!という身も蓋も無いハナシ。
これはこれで未来学だろう。

http://www.filmequals.com
http://www.filmequals.com そして再び『コングレス未来学会議』。生身のロビン・ライト。

楽しい楽しいハナシで、ふざけまくってるが、しかし最後に至って隅から隅まで考えられてたハナシだってコトが判明するのだった。
風刺とか比喩の的確さもさることながら、なるほど単なるギャグかと思ったらちゃんと後の展開の伏線になってたりする。
シャープで毒の効いた考察も多岐に渡って展開される、バカには書けない、インテリジェント・バカ小説なのだ。

重層的で、多面的な。ポップなクセモノ。
煌びやかなバカ・イメージの洪水。
いやホント、面白かったなコレは。

映画の方は泰平ヨンは出てこないで、主人公はロビン・ライト(自分役)らしい。
ヨンのキャラクターがすげー面白いんで残念っちゃ残念な気もするが、俳優をCG化して世の中の映画が全部フルCGになっちまうっつー映画独自の設定が付け加えられてて、コレ風刺が効いててイイ。
でもアレだな、予告編観るとわりとマジメな映画になってるような…マァ、面白けりゃなんでもいいか。

【ママー!これ買ってー!】


泰平ヨンの未来学会議〔改訳版〕 (ハヤカワ文庫SF)

しかし、この表紙じゃ売れないだろと思わなくもない。
絶対にこっから予想されるようなハナシじゃないんで、とりあえず立ち読みしてみるコトをオススメ。
すげー笑えて、脳みそ刺激される。

短いのもイイ。

↓「泰平ヨン」シリーズ
泰平ヨンの航星日記〔改訳版〕 (ハヤカワ文庫 SF レ 1-11)
泰平ヨンの現場検証 (1983年) (ハヤカワ文庫―SF)

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