『ラブ&ピース』の感想をラブレスな俺がピースフルに書く!

園子温監督の『地獄でなぜ悪い』(2013)はこの人が売れなかった頃に書いた脚本をそのまんま使って撮ったらしいが、コチラ『ラブ&ピース』の脚本も25年前に書いた脚本を基にしてるとかしてないとか。
一応設定は2015年に書き直されてて、なんや東京オリンピックがどうとか出てくるが、元脚本が古いんでとても今の映画とは思えない。
長谷川博己がロックスターになるが、なんだ、「こち亀」に出てくる「イエーイ!」って言ってるロッカーみたいなの想像してもらえばいいです。
いや、それ25年前だとしても古いよ!

ってことでこーゆーハナシ。
長谷川博己はうだつの上がらないサラリーマン。以前はミュージシャンを目指していたが挫折、今は会社でいじめられては妄想世界に逃避するというダメな毎日を送っているのだった。
そんなある日、彼は一匹のミドリガメに出会う。
自分の惨めな境遇をその亀“ピカドン”に重ね合わせる彼だったが、すると不思議なコトに、なんだかミュージシャンとして成功できそうな気がしてきた。
こうして、彼はピカドンとともに再びミュージシャンを目指すのだったが、衝動的にピカドンをトイレに捨てたコトから事態は思わぬ方向へ…。

http://natalie.mu
http://natalie.mu 『ラブ&ピース』というが、ラブもピースもあんま関係無い、若かりし頃の園子温の内面を覗き見る映画なのだった。

怪獣映画と聞いてたんで、ははぁ、トイレに流されて下水道に流れ着いた亀ちゃんが突然変異してガメラになるんだなと思ったが、違った。
亀ちゃんが流れ着いたのは捨てられたオモチャや動物たちの住むマジカル・ワールドで、その主・西田敏行の魔法の力でおっきくなっちゃうのだった。
だいぶ、斜め上から来る。

そんなワケでロックスターとして成功してく長谷川博己とマジカル・ワールドの愉快な日々が交互に描かれるんですが、このマジカル・ワールド、およそ園子温らしからぬ可愛らしい可愛らしい無邪気な世界。
レトロなロボットとかヌイグルミが「おじーちゃーん! おじーちゃーん!」とか言いながら西田敏行と一緒クリスマス祝ったりする。
鬼畜映画ばっか撮ってた園子温になにがあったのだと思うが、若い頃にパンクスだったヤツは歳食うとポエマーになるとゆーのは世の常なのか。
っていうか園子温は元々詩人なのだった。

『地獄でなぜ悪い』同様に園子温の内面がすげーこびりついた作家性の濃い映画で、ロックスターになった長谷川博己はかつてのダメな自分を忘れたいあまり、自分を出世させてくれた亀ちゃんと麻生久美子を捨てるが、このあたりたぶん園子温自身のハナシだと思われる。
売れなかった頃に支えてくれてたオンナを売れるやいなや捨てたとか、そんな感じの、よくあるエピソードが反映されてそうだよなぁ。
マァ、実際どうかは知らんが!

http://news.ameba.jp
http://news.ameba.jp 長谷川博己のダメ人間っぷりが笑えます。

園子温はどうでもいいが、映画はメルヘンでポップで可愛くて面白かったっすよ。
正しい意味で漫画みたいな映画でさぁ、毒とかそーゆーの皆無。
悪いヤツは悪い! 良いヤツは良い! 単純明快でいいじゃないか!
マァ、結構散漫だったり間延びした感あって、あんま起伏とか盛り上がりとか無いんだけど。

長谷川博己のダメ人間→高慢なロックスターへの変貌っぷり、コレ面白かった。漫画的というかベタにベタを重ねたような感じでさ。
ちなみにデカデカと名前の出てる麻生久美子は、ほとんど出てこないしセリフすら400字詰め原稿用紙1枚分ぐらいしかない。
見た感じ『ロッキー』(1976)のエイドリアンみたいな感じだが、そんな麻生さんもっと見たかったよ!

ラストは巨大化した亀ちゃんが街を破壊する。
わーい! って感じで見物だが、しかしギャグとしてやっちゃうんで、怪獣映画を期待すると肩透かし感ハンパ無いぞコレは。
ワリと、園子温って大事な場面でふざける癖があるよな。

あとアレ、一番面白かったのはさ、長谷川博己が街を歩きながら、目に入ったポスターとか看板とかの文句拾って歌の歌詞を作ってくトコ。
なんか劇中歌の作詞・作曲は園子温らしいが、そうか、こうやって曲作ってんのかって感じ。

その曲っての、コレ意外と良い歌。「ピカドンを忘れるな!」って歌がたまたまその場に居合わせた渋川清彦の目に留まって、んで長谷川博己歌手デビューすんだけど、あぁこの曲なら売れてもおかしくないなって説得力あるんだよ。
クリスマスの東京にはRCサクセションの『スローバラード』流れるが、コレが泣けるんだよなぁ。

あぁ、園子温とかどうでもいいと言いつつ、結局園子温のハナシばっかになっちゃったよ…。
そんぐらい園子温成分、濃い。

http://izumi-official.com
http://izumi-official.com この方ほんの端役なんですが、すげー好き。IZUMIさんという方で、『リアル鬼ごっこ』(2015)とかにも出てる園子温のお気に入りらしい。

東京オリンピックとか原発とか、なんやセンセーショナルな話題が半ば無理やり出てくる。
映画が始まるやいなや田原総一朗のアップがドン! 何事かと思えば、「朝まで生テレビ」がやってんのだった。
パネリストは園子温と親交のある水道橋博士・宮台真司・津田大介・茂木健一郎で、その並びに笑う。

で、この方々が東京オリンピックの是非を論じてんだけれども、次第にテレビでそれを見てる長谷川博己を名指しで批判しだす(と彼は妄想する)
社会風刺やなんやとゆーのはお飾りで、ダメ人間長谷川博己は自分のコトで精一杯なんだよ! とゆーハナシなのだった。
「ピカドンを忘れるな!」で歌手デビューする長谷川博己は、しかし反戦とか反体制ソングを歌ってるつもりは皆目無かったのだ。

導入がそんな感じなんで、現実と妄想が境なく入り混じる映画だったりする。
そう考えると亀ちゃんはたくさん出んのに麻生久美子はほんの少ししか出ないってのも納得できる気がするよなぁ。
実際のところ長谷川博己をずっと支えてたのは麻生久美子で、でもそれが長谷川博己の妄想ん中で亀ちゃんに置き換わってる、みたいなさ。
なんか、そーゆー風にも見れる。

だから散々ハチャメチャやった末のうら寂しいラストとゆーのも、園子温=長谷川博己の夢とゆーか妄想の終わりって風にも捉えられる。
売れなかった頃の園子温がさ、狭くて汚ねぇアパートの一室でスターの自分(そしてメルヘンの国)を妄想して、ほんで相反するミジメな現実に妄想が打ち砕かれて絶望してたみたいな、そう想像すっとワリと切ない映画でもあるんだよ。

あの園子温も売れない頃はこんな感じだっただよ! とゆーあたり、なんだか映画監督とかロックスターとか(このご時世いるのだろうか?)目指すような人はとても勇気付けられると思われる映画だったなぁ、コレは。
(そうそう、同時期公開の三池崇史監督『極道大戦争』もある意味同じような、自身の原点回帰の映画だった。『ラブ&ピース』が亀に対して、コチラは蛙です)

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姉妹編みたいな映画。
漫画的で、あんま起伏なかったりヤマ場でふざけるあたりも同じ。
映画監督になりたい人が勇気付けられんのも同じ。

コッチに出てくる劇中歌(たぶん園子温作曲)は『ラブ&ピース』にも出てくる。

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