台湾映画『共犯』の感想を一人ぼっちで書く

薄く濁った湖中から始まって、そこにポコポコとクレジットが出てくる。Facebook、死体袋、溺れる男みたいな、なんや分からん不吉な映像の断片が次々と入ってくる。フラッシュ・フォワード。で、一冊のノートブックが水の中を揺らめいてんである。なにやら秘密ありげな…。

コレとてもかっけータイトルバックで、ちょっと『セブン』(1995)みたいな、カイル・クーパー的なデザインなのだ。
ほんで、全編通してやたら雨が降るあたりにも「あぁ、『セブン』もよー雨降ってたなぁ」と思ったが、雨といえば『殺人の追憶』(2003)の変態殺人鬼が人を殺したくなっちゃうのも雨の日なのだった。
いや別にそーゆーのは無意味な連想でなく、なんか「青春映画の新たなる傑作!」みたいな惹句の『共犯』だが、観てみたらむしろ『セブン』とか『殺人の追憶』なんかのウルトラやるせない系サスペンスだったのだ。
あんな風にダークな感じじゃない、透明感あるサスペンスだが、誰もが透明だからこそ逆にやるせないんじゃなかろか、とゆーハナシである。
以下あらすじ。

孤独な高校生・ホアンは、ある日の通学途中に飛び降り自殺を遂げた同じ高校の女生徒の死体を発見する。
死体発見現場には二人の男子生徒も偶然居合わせていた。いずれもホアンの面識の無い生徒だったが、ちょっとした好奇心と同情心から彼らは自殺の真相究明に乗り出し、そして親交を深めていく。
だが、自殺に関わる一人の女生徒が浮上したことから彼らの運命は狂っていって…。

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件の湖中タイトルバックが終わるとホアンが同級生にいじめられてるシーンになるが、湖中を引きずって音がくぐもってる。
なのでいじめっ子が何を言ってんのかよく聞き取れないが、そーゆーのはたぶんホアンの心象としての音なんだろなぁ。
ワリと乾いた感じの映画で、あんま登場人物に心情吐露させたり、その背景を説明したりとかほとんどしないが、こーゆー音の演出一つでバビョーンとその人物が何考えてんのか分かるような作りになってんので、むしろ説明多すぎて色々覚えるのが面倒くさい映画より遥かに脳にやさしい。
やさしいが、このシーンでゆーと不吉なタイトルバックとホアンの心象が音を介して繋がったりすんので、そのあたりなんだかとてもテクニカルなのだ。

そんな風に音のデザインと演出が面白い映画で、↑のシーンの次は早くもホアンら高校生三人が女子高生の死体を発見と相成るが(とにかく隙間ダレ場を作らない映画である)、そのときの静寂に、女子高生の身に付けていたオーディオプレイヤーからシャカシャカいうポップスが入ってくる。
グネグネと折れ曲がった死体と制服とポップスの異常な並び。やがて雨が降ってきて、死体の血にポチャンポチャン、それからザーザーいってくる。
イイ。コレすげーイイ。
スマホの着信やらゲーセンの騒音やらカタカタいうタイプ音なんかの都市の環境音がやたら使われて、その反対側に雨とか風とか虫みたいな自然の音が置かれたりするが、そのあたりとても計算された感のある音のポエムなのだ。

ほんでさ、血が雨でポチャンポチャンとなるあたり接写で撮って、本降りになるとカメラがグワーンと上がってく。
死体と男子高校生三人を俯瞰して、そこで『共犯』とタイトルがドン。
これデ・パルマみたいな感じでマジ決まってると思うが、そもそも通学路を歩いてたホアンがフッと路地に顔を向けると無造作に死体が転がってるあたりからしてタイヘン強烈な画になってんのだった。

いやもうなんだか、徹底した画(と音)のコントロールっぷりなのだ。
多用するスローではためく髪とか、夜のシーンでのダーク・ブルーをキーにした対比の鮮明な照明とか、やり過ぎ感すらある。
断片的な短いカットを次々繋いでく編集なんざ何が起こってんのか分からない一歩手前だが、コレもカッチョイイんだよなぁ。

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んな具合に、なんや華麗なスタイルで一気に見せきる映画だったりする。
静かな映画と見せかけてすげードライブ感あって、隙間を作んない映画とか書いたが、音鳴りっぱなし画作り込みまくりな上、一つの展開がすぐさま次の展開引っ張ってくる。ゆっくり安らげるトコが全然ない。

ほんで、そのテンション最後までずっと続くんだけど、途中から女子高生殺したの誰じゃないなサスペンスから俺たちどうしたらいいんだろうヒューマンドラマになったりする。
画と音がマジ素晴しいんでボーっと観てるだけでとにかく楽しいが、でもそうなるとこの人たちの心情とかもっとジックリ見たかったなぁと思ったりもする。
ちょっと不思議な(理路整然としたこの映画ん中で唯一合理的で無い)中盤のあるシーンを挟んで、後半は前半で描かれたことの全てを一気にひっくり返してく。
そのサマはすげースリリングでパズル解いてくみたいな快感あんだけど、なんとなく駆け足で、ハナシの重さがあんま感じられなかった気がすんのだ。

この映画なんやアレコレ要素詰め込んでるが(普通の映画三本分くらいはある)、そのくせ上映時間たったの89分である。
…いや短いだろ! これどう考えても短いだろ!
そりゃまぁ確かに、映画は基本90分がイイとはいつも思ってるけどさぁ、コレに関しちゃ120分以上は観たかったなぁ。
つか三時間でもいいよ。休憩ありなら四時間でもいいし。
ワリと、それぐらい面白い映画だったんで、なんか尚更後半チャッチャと終わっちゃってアレな感じあったなぁ。

なんつーか、コレとてもやるせないハナシなんで、どうせならもっともっとやるせない気分になって一人トボトボと家路に着きたかったよな。
「あぁ、良い映画観たなぁ」って喜んで家帰っちゃったもん、俺。ダメじゃん、そんなの(なにが?)

でもマァあれか、ワリとそーゆー映画なのかもしんない。
ハナシ的にはとっても都市の映画なんだけれども、むしろ雨とか風みたいな自然、とゆーかエレメント的なものがエライ印象に残ったりする。
登場人物をなにか良からぬ行動に駆り立てるのは雨とか風なんだけれども、なにか自然の中に人間の業を置いてるようなトコがあり、絶望やなんやゆーても人生なるようにしかなりませんわ、どうしようもないですわ的な感じある。
だからハナシだけ見るとやるせないことこの上ない、救われないことこの上ないんだけど、なんか観た後で爽やかな無常観あるんすよ。

だからマァ、結局アレだな。
『共犯』、コレすげー面白かった!
(ところでこの映画、効果音だけじゃなくてスコアも『28日後…』(2002)のジョン・マーフィみたいでカッコ良かったんでサントラ欲しいが、出てないんだよなぁ…)

【ママー!これ買ってー!】


BRICK‐ブリック‐ [DVD]

そういえば『共犯』の湖中タイトルバックに女の死体のたなびく髪が見えた気がする(気のせいだったけど)のは『狩人の夜』(1955)とかチャンドラー『湖中の女』に出てきた沈められた女の死体のせいだったりするが、そのチャンドラーのハードボイルドな世界観をまるっと高校に移したのが『ブリック』(2005)なのだった。
コチラもコチラで女生徒の死体からハナシが始まる学園ミステリーで、ハードボイルドだが、なんせ出てくんの高校生ばっかなんでパロディになってて笑える。
主人公が学園内の麻薬の元締めの家を訪れる緊張のシーンで「○○ちゃん、お友達きてるの? オヤツ食べる?」なんてカーチャンが言ったりして。
いや別に笑ってるだけの映画じゃない、ハナシはマジメな映画なんだけど。

なんかもう全然『共犯』と関係ないが(なんとなく全体のトーンは似てなくもない)、とにかくオモロイはオモロイ。
あと新人だった頃のジョセフ・ゴードン=レヴィットが出てる。

↓その他のヤツ

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