映画『クーキー』観てきたから感想書くーきー!


へなへなテディベアのクーキーくん大活躍のパペット・アニメ映画『クーキー』を観てきた。
こーゆーハナシ。

クーキーは病弱少年オンドラくんの大事な大事なお友達。
アチコチ綻びが出て、ママにはもう捨てなさいと言われるけれど、オンドラくんは決して手放そうとしないのだった。
そんなある日、突如としてクーキーが失踪してしまう。
きっとママが捨てたんだ、あんちくしょうめ…と思いつつ顔には出さない大人なオンドラくん。
顔には出さないけれど、でも内心は悲しみでいっぱいだ。

「戻ってきてよ…クーキー!」

そんなオンドラくんの願いを感じ取ったのか、ゴミ集積場で処理を待つばかりだったクーキーが立ち上がった!
帰るんだ! オンドラくんの下へ!
かくしてクーキーの波乱万丈(でもない)の大冒険が始まるのだった。

http://www.ceskatelevize.cz
http://www.ceskatelevize.cz ピクミンっぽいが、森に住むドングリの神様です。キャラクターデザインはゲーム畑の人らしい

クーキーの声をアテてんのはオンドラくん役のオンジェイ・スヴェラークなのだ。
なんでしょう、どうでしょう。これは良かったのか?
ネタバレに思えるかもしんないがさにあらずで、クーキーの大冒険の節々にオンドラくんのクーキー無きクーキョな日々が入ってくるが、そのあたり明確な対比が為されてるワケでなく、両パートが空想の上で地続きになって呼応するとゆー構成。

よーするにクーキーの大冒険はオンドラくんの空想ですよと執拗に、もうハナっから明示すんですが、なんだかそのオカゲでノレない感じもあったりした。
むしろ映画の後半はオンドラくんの危機にハナシの力点が置かれるんで、ボロいテディベアのファンタジックな冒険映画とゆーより、オンドラくんの精神的な成長を親目線から解釈したキッズムービーっつった方が正しく映画の内容を伝えられるんじゃなかろか。

結構前に『子供は何でも知っている』(1985)とゆーイタリア映画があったが、孤独な子供が空想のお友達の王様・ロボット・ドラゴンと戯れてるウチになんやエラいコトになってしまうとゆー、コメディのようなファンタジーのようなサスペンスのような心理ドラマのような妙な映画だった。
そして子供なりに不条理な現実(性とか死とか)を空想のお友達に託して解釈しようとする過程が描かれたりしたが、『クーキー』にもそんな側面はあり、あらすじだけ聞けば『トイ・ストーリー』(1995)と見えて、実際はそっち系統の映画なのだ。

果たしてファンタジーを子供の空想として精神分析的に解き明かそうとする意図だったのか、それともファンタジーをファンタジーとしてそのまま提示しつつ、徐々にオンドラくんの心象風景に結び付けてくコトでハナシにヒネリを加えようとして失敗しちゃってんのか分からんけど(そのようにも見える)、どうあれ童心に返って無邪気に楽しめるような感じはあんま無い。
愉快なオバケいっぱいのファンタジー映画だと思って『パンズ・ラビリンス』(2006)観たら、とても凄惨なハナシでハートを抉られたとゆー事件が(俺ん中で)あったが、今回もまた同じような映画体験となったのであった。

ちなみにオンドラくん役のオンジェイ・スヴェラーク、監督ヤン・スヴェラークの実の息子だそうである。
ハナシ的にも演出的にも親の視線を随所に感じる映画ですが、それ聞くとなんか納得すんな。

http://kultura.zpravy.idnes.cz
http://kultura.zpravy.idnes.cz 超キュートだし文明社会で育ったから携帯の使い方も知ってるハイスペックなクーキーですが、森に住んでる粗野で貧乏な神様たちは「ケッ! 気に食わねぇ! 都会人気取りかよ!」なのであった。

それにしてもクーキー、この熊サイコーサイコー。
いやもうピョコピョコ跳ねながらぎこちなく歩く姿なんて可愛すぎてニヤニヤが止まらないが、水に濡れてぐしょぐしょになったり、はらわたを出したり、冠雪した森で決死のカーチェイスに挑んだりと体当たりの芝居の連続にすっかり心を奪われたぞ。

クーキーの中の人はマリオネットの操作師なのだ。今時そんなアナログな…と思うが、そのアナログさをむしろ全面に押し出したアプローチ。
さすがに糸は消してるが、CGアニメが日夜リアルな動きや多彩な表現を追及する中でのあえてのクラシカルな人形劇スタイルである。
モデルの動きは大層ぎこちなく、非常に限られてたりするが(そもそも可動部すら無いモデルもたくさん出てくる)、だからこそ動作の一つ一つにウルトラキュートと感動があんのだった。

んで、その可愛いクーキーが集積場に隣接する森に迷い込むワケですが、そこには八百万の…とはチェコでは言わないと思いますが(チェコ映画)、とにかく森羅万象のミニサイズ神様がたくさんおる。
シメジの神様とかドングリの神様とか、まぁそーゆーのがいっぱいいるワケです。

この神様たち、それにしても汚い。そしてロクでもない。
どんぐらいロクでもないかとゆーと、見慣れぬ森をさまよう我らがクーキーを神様村の村長が見かねて家に招くワケですが、それに対して「村長、アイツとデキてやがるぜ!」と陰口叩いて木の実投げつけるくらいである。
アミニズムとゆーと『もののけ姫』(1997)みたいの頭に浮かぶが、あんなのしょせんは宮崎駿とゆーインテリの思い描く理想化されたアミニズムである。
そもそも国が違うが、それ差っ引いてもコッチのクズくてゲスくてナメクジ食べてハエのたかるキッタネェ神様のが古の人々のイメージした神様に近いだろう、たぶん。
(いや『もののけ姫』は大好きだけどさ)

クーキーがとにかく可愛いんでハナシも可愛いかと思ったらそうでもなく、そっから展開すんのはワリとドロついたドラマなのだった。
クーキーを集積場に連れ戻そうとするペットボトル兵士、そいつらと結託して村長の座を奪おうとする神様のナンバー2、クーキーをペットボトルに売ろうとする事なかれ主義の平神様たち…ってもう全然可愛くないし、全然冒険じゃない!

エゲつない拷問(ペットボトルを被せて火で炙る!)とか、神様たちと共生してたハズの森の動物の裏切りとか出てきて、結構荒んだハナシである。
そっから明確には描かれないオンドラくんのささくれ立った心象も感じ取れるが、どうせチェコ映画だし(いやどうせってコトも無いが)、ナチスが台頭して以降の受難と混乱の記憶もたぶんに重ね合わせられてるんじゃなかろか。
民間伝承を下地にしたと思しき世界観といい伝統的なマリオネットの採用といい、意外や歴史の息吹を感じる重層的な映画になってんのだ。

http://www.chvalskyzamek.cz
http://www.chvalskyzamek.cz シメジの神様。後ろに乗ってふんぞり返ってるヤツの手の角度がいい感じ。芸が細かいですね

…なんか書いてるウチに全然楽しくなさそうな映画に思えてきたが、そーゆー作りになってんだからしょうがない。
どこにも強調点を置かない淡白な映画で、派手な見せ場とかも基本ないもんな。
神様の村長がそれとなく自身の孤独と死を語ったりして、じゃあそのドラマでグイグイ盛り上げてくのかなと思ったらそうでもない。
あるいは何か登場人物(神様か?)が危機的な状況に置かれたときであっても、ずっと遠くから眺めてるような、そんな作りなワケ。

なんとなく見た目キャッチーだけど、ゆーてもチェコのアート・アニメだよね。
ヨーロッパ的陰影に富んだとゆーか、重厚とゆーか、渋いとゆーか。
公式サイト見ると「本国チェコで興収1位!」らしいが、ホントかよ。
どーゆー教育したらガキどもがこんな映画観るようになるんだ…。

いやそれはともかくとして、オモロイ映画ではあった。
この書きっぷりだと全くそう感じられないかもしんないが、内容思い出して考えてるウチにどんどん陰にこもってくるのは俺の脳みそのクセなので、別に映画自体が悪いワケじゃない。

いっぱいありますよ、オモロイところ。
いつも輪タクに乗って悪態吐いてるシメジの神様、コイツ大して出番無いけどすげー良いキャラ(うまみ成分出てんだろう)
ペットボトル兵士の凸凹コンビも面白かったなぁ。コイツら見た目は幼稚園児が工作の時間に作ったような感じで実にヘボいんですが、埋め立て待ちのゴミのくせしてレーザーサイトとチャッカマンで武装してるとゆー恐ろしいヤツらなのだ。
(チャッカマンはともかく、レーザーサイトはゴミ集積場に落ちてるのか?)

それからアレだ、木っ端やら廃材やら集めて作ったプリミティブな車がエキゾーストから火を吹かせ宙を舞う壮絶なカーチェイス、人形アニメでゆーたら『ピンチクリフ・グランプリ』(1975)みたいにスピード感あるワケじゃないんですが、コレがとても楽しい。
とゆーか普通に走ってるんの見てるだけでも楽しいぞ。ものっそいデコボコ・ノロノロ運転でさ、んでカーナビが蜂の巣の切れ端だったりするワケですよ。愉快愉快。

http://mantan-web.jp
http://mantan-web.jp カーチェイスは(も)本気である。ちなみにクーキーの隣に乗ってるんのが神様村の村長ですが、アレ何の神様なんでしょうね。大根? いやジャガイモかな…

なんですか、スラップスティックなギャグがあったかと思えばブラックユーモアもあり…と考え始めると今度は一転して楽しい無邪気な映画に思えてくる。
そして再三「クーキーの冒険は空想に過ぎないいんだ!」とか書いてきたが、こうなってくると「いや、でも、もしかすると本当に…」と思えてきたりもする。
明示的なようでいて暗喩と象徴に満ちていて、キャッチーなようでいてとっつき難い。可愛く見えてグロテスクだ。
最後はハッピーなような、バッドなような?
このあたり、親の視点から観るか子供の視点から観るかでガラリと印象変わるんじゃなかろか。

重層的な映画ちゅーたけれども、んな風に色んなトコを色んな角度から観て楽しめて、噛めば噛むほど違う味が出る。
いやまぁ悪く言やぁヌケの悪い映画なんだろうけど、でも豊かでイイ映画だと思いましたよ、俺は。
つかシメジの神様のストラップとか売ってないかな。

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若干『パンズ・ラビリンス』感のある『クーキー』ですが、それ言ったら『パンズ・ラビリンス』の元ネタの『ミツバチのささやき』のが感覚的には近いのだった。
なんつーか、その自然の捉え方とか、諦観が。
それにしてもヨーロッパの子供映画って概して子供に厳しいな。

↓その他のヤツ
パンズ・ラビリンス [Blu-ray]
ピンチクリフ・グランプリ [レンタル落ち]
子供は何でも知っている [VHS]

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