『GONIN サーガ』と言いつつ一人で観てきて一人で感想書く

これはアレなのか、石井隆といえば“宿命”の作家であるからして、サーガと性を掛けた『刃牙特別編 SAGA』的なネーミングなんだろか。
『人が人を愛することのどうしようもなさ』(2007)とか『愛は惜しみなく奪う』(2010)とか、文学的でこっ恥ずかしい、その忘れられゆく時代にいつまでも寄り添い続ける感が泣けてしまう(今どき誰が有島武郎なんぞ引用するだろうか!)数々の名タイトルが石井隆映画にはあるが、その拘りっぷりを考えればやっぱ狙ってんのか。
それダジャレじゃないか…ちょっとダサくないか…と思ったが、そういえばまさかのラッパー映画『TOKYO G.P.』(2001)なるタイトルも撮ってたのだった…。

『GONIN』(1995)の直接の続編『GONIN サーガ』観てきたんで感想書く。
以下あらすじ。

前作『GONIN』でヤクザの襲撃事件を起こした男たちと、その事件で犠牲になった男たちの息子たち。東出昌大、桐谷健太、柄本佑。
揃いも揃って負け犬生活を送っていた彼らはやがて運命の出会いを果たし、すっかり落ちぶれた元アイドルの土屋アンナ、そして襲撃事件以後植物状態となっていた根津甚八と共に組に復讐を誓うのだった。

http://natalie.mu
http://natalie.mu 雨降らしまくり。石井隆っぽい記号でいっぱいです(でもネオンは無かった気がする)

石井隆監督の映画は大好きも、代表作みたいに言われるような言われないような『GONIN』は意外とそんな好きじゃなかったりする。
なんつーかさ、もう劇画的サービス精神の塊みたいなすげー面白い映画だと思うんですが、コレ忙し過ぎるよなぁと。
間がイイんすよ、石井監督の映画って。会話の中の無言の間とか、ソコだけ時間に取り残されたような弛緩した空間とか、そーゆーのが。
だからどっちかっつーと、色んな意味でもっとユルユルな『GONIN 2』(1996)のが俺は好きだったりするが、いやまぁそれはさておいて…。

『GONIN サーガ』、面白かったなぁ。
いつもの石井隆映画…とか書くとちゃんとしたファンの人に怒られそうだが(でもそんな人はそもそもこんなの読んでないだろう)、石井隆っぽいのいっぱい。
土砂降りの雨、堕ち行く女(その成分ちょっと弱め)、ちあきなおみ、鮮血の美学、負け犬の悪あがき。
なんというか、ジョン・ウーが鳩飛ばして銃撃戦やるような映画だなコレは。
植物状態に陥ってなお復讐に執念を燃やす根津甚八の姿は、『男たちの挽歌Ⅱ』(1987)のディーン・セキに重なるのだった。
(ついでに言えば、ジョニー・トー『ヒーロー・ネバー・ダイ』(1998)でもあり、そして『GONIN 2』の、妻の死体を抱いて復讐に向かう緒形拳の再演でもあるのだ)

間が云々とか言ったが、そういう意味じゃ前作にも増して間を作らない映画だったりした。
129分の長尺で展開自体はマッタリしてるが、アクの強い登場人物が矢継ぎ早に出てきてなんかオモロイ芝居してくれんので、体感的には90分ぐらい。
蓮っ葉な土屋アンナ。井上晴美の姐御っぷり。福島リラの異形のエロさ(一番気になったのはこの人だった)。相変わらず女の人を魅力的に撮る。
桐谷健太の堂に入ったヤクザ(というかチンピラ)芝居。『フィギュアなあなた』に続いての柄本佑。安藤政信が容赦なくブチ殺したくなるサイコーに嫌味ったらしいクソ野郎を熱演すれば、根津甚八も植物状態で頑張る(その変貌っぷりに最初誰だか分かんなかった)

ちなみに主人公格の東出昌大は、意外と印象が薄かったりする。
竹中直人の殺し屋もワリにキャラ弱いが、前作の殺し屋が眼帯付けたビートたけし(ゲイ)という濃すぎるキャラだったので、比べるのは野暮。
そういえばビートだけしに続いてのタレント枠なのか、テリー伊藤がヤクザ役で出てた(これも、思ったよりハマってなかったりする)

http://natalie.mu
http://natalie.mu 安藤政信の金持ちのボンボン感にグっとくる。土屋アンナのチープさの中の悲哀にもグっとくる

時代の違いといえばそれまでだったりするが、本木雅弘、椎名桔平、ビートたけしに木村一八に室田日出男とゆーギラつきまくった面々が暴れる前作からすると、総じて『GONIN サーガ』は薄味というか、しみったれ感あんのだった。
つってもオヤジ(とその時代)の負の遺産を抱えて喘ぐ若者たち、とゆー狙いだと思うんで、このギラつこうにもギラつききれない感じ、運命の重さに押しつぶされてどうもならない抑圧感が石井隆っぽくてイイなぁと思ったりもする。

ヤクザ襲撃を企む東出昌大らがディスコの地下で語らうシーンとか、根津甚八の病室でちあきなおみ「紅い花」を聴くシーン、泣けるんだよ。
いかに時代が変わろうが負け犬は依然として負け犬じゃないか。このうらぶれ感、この情感、やっぱ堪んねぇよ。
でもって、ラストの銃撃戦もケレンたっぷりでサイコーだ。スプリンクラーの豪雨の中、霧状に噴き出した血がライトに当たって輝く。わーい。
つかこの場面、舞台装置がホント素晴しいのだ。ネタバレになりそうだから書かないが、こんだけ様式美溢れる銃撃戦、邦画で久々に見た気がしたぞ。

ちなみに、いつもアバンタイトルとかタイトルバックの超カッチョイイ石井隆映画だったが、今回控えめというか、そこらへんあんま拘んない感じではあった。
例の読みにくいがクールな斜体フォントに続いて、土砂降りの雨の中に一人佇む東出昌大。
「俺の親父は…」的な感じで彼の説明モノローグが入り、バシバシと乱暴に前作の映像が回想的に入ってくる。
なんせ前作は20年前の映画なんで観客の大部分ストーリー忘れてると思われ、新規のお客さんにも配慮しての措置だと思うが、無理やり付け足したような感があって多少興ざめといえば興ざめな気もしないでもない。
劇画的なジャンル映画なんて多数やりつつ、本質的には象徴性が高くて説明を極力排した作風が石井隆だと思うので、これ本意じゃなかったんじゃないかなぁと思う。

『GONIN』で出てきたディスコが再び登場するのは前作観てるとちょっと嬉しい。
ココ、まだあったんだ!
『黒の天使 VOL2』(1999)でも使われてたから、石井組のお気に入りなんかな。

前作観てると嬉しいといえば、佐藤浩市、出ます。
(アレ? 死んだハズでは…とゆーのが石井隆的なトリックなのだ)

http://eiga.com
http://eiga.com キャストと並んだらちょっと可愛くなってしまった石井隆監督(←)

そんなワケでスゲー面白いも、でもやっぱり好きか嫌いかで言えばそこまで好きな感じでもないと言うか、コレやっぱりサービス映画だなぁと思ったりする。
北野武にとっての『ソナチネ』(1993)が石井隆の『死んでもいい』(1992)なら、『アウトレイジ ビヨンド』(2012)が『GONIN サーガ』っていう、そーゆー感じ。
最近の石井隆映画で言えば、この映画の10分の1も予算かかってないような『フィギュアなあなた』(2013)とか『人が人を愛することのどうしようもなさ』(2007)(って最近でもないか)の方がやりたい放題やってる感じで全然好きだし、『甘い鞭』(2013)は壇蜜ありきのセクスプロイテーション映画と思わせといて、実際観てみると非常に象徴性の高いベルイマン風の心理ドラマ。作家の野心が詰まった石井的女性映画の大ケッ作だと思ったりした。

そもそもエロ劇画家という出自なので、石井隆監督は作家じゃなくて職人を自認していらっしゃる(カッコイイなぁ)
『GONIN サーガ』はとにかく面白い映画見せてやろう魅せてやろうみたいな職人の矜持を感じる映画だったりしたが、石井隆監督はもっと強烈な映画撮れる人なのに! と思ったりもして、若干歯痒いというか切ない感じもあったのだった。
いやまぁ、俺が一番好きな石井隆映画は『死んでもいい』なんで、そのあたり好みの問題もあるんだけど。
『死んでもいい』、アレはホントに素晴しい、ビデオ屋の隅に放っとくのは勿体無さ過ぎる、アカデミー受賞作百本集めても及ばない深遠極まる映画だったと思うぞ。
不倫とか女性心理とかそんなハナシじゃないんだ。人間存在とは何かみたいな実存的で神話的な巨大な物語で…って『死んでもいい』の話はどうでもいい。

まぁなんだかんだゆーて、イイ映画でしたよ、『GONIN サーガ』。
アレだ、えーと、佐藤浩市。
あーゆーカタチでの登壇はファンサービスもあろうが、単にオモロイだけの映画で終わらせねーぜっていう、ソコは職人じゃなくて作家の意志を感じたなぁ。
マンネリ? いつもの手法? まぁそうだけど…でも、そっから夜の東京の空撮の、『GONIN』のあのタイトルバックに回帰するにあたって、映画はサーガの名の通り神話的な円環構造へと飛躍する。
映画としてのそのケリのつけ方、やっぱ石井隆すげーな、マジかっけーなと思うのでした。

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ラストで一気に違うレベルに飛躍する、とゆーのは石井隆映画のお約束みたいなトコありますが、『死んでもいい』のあのラスト、何度観てもビビる。
不倫がどうとか、愛がどうとか、なんなら善悪がどうとか死がどうとか、そんなの全部飛び越えちゃう感じ、アレやっぱスゴイよ。

ラストが云々言ってるが、なんのコトない風に見える冒頭からして電車内で寝てる主人公・永瀬正敏とその夢を一つの画面の中に同居させるというテクニカルな作り。
その後、ブルージーなアコギの調べとドキュメンタリー風の手持ちカメラが駅をたゆたう永瀬を追って、彼が大竹しのぶと偶然(いや必然か)肩をぶつけた瞬間、音は止まり、カメラは様々な角度からのスローでその出会いを反復する。
例の斜体でタイトル。「死んでも」やや間があって、「いい」。
技巧を凝らした撮影が素晴しい映画だったりするが、こっからして既にカッチョ良すぎると思う。

永瀬正敏も室田日出男も大竹しのぶもサイコーにイイ芝居してんので、観たコトない人いんなら絶対観て欲しいよなぁ。
ホント、素晴しいんだ。永瀬正敏がさ、喘息に喘いで半泣きになりながら大竹しのぶを犯そうとするトコとか、大竹しのぶの不倫を知った室田日出男が必死に感情を抑えようとする場面とか、そこでかかる、ちあきなおみの「黄昏のビギン」とか、それから…(以下略)

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いつも楽しみに拝読しております。
もしお時間と余裕がございましたら、さわだきんたま様による石井隆監督の全作品紹介を拝見したく思います…!
そのときにぜひ、『死んでもいい』の詳細なレビューとご感想を…
>一気に違うレベルに飛躍する
と記されたラストをぜひ詳細にお願いします…!
私にはあの飛躍するとされたラストがうまく理解できませんでした…

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