飯テロ映画『ステーキ・レボリューション』のレボリューションな感想書く!

お肉の映画です。監督のフランク・リビエールはある時こう思いました。
「フランスの肉はマッズイなぁ! なんでマズイんだ!」
とゆーコトでお肉の専門家にハナシを聞きに行き、ついでに世界のお肉はどんな味なのか、どんな風に作られてんのかを探るべく旅に出るのでした。

しかし派手派手しい邦題と予告編でアゲアゲの飯テロ映画と思わせといて、実際観ると『ステーキ・レボリューション』は静かなドキュメンタリー映画なのだった。
お肉がジュージューいってる場面ばっか撮るんじゃなく、畜産家の証言や牛の飼育状況にも結構な比重を置く。
どちらかといえばアカデミックな雰囲気の映画なんである。

http://program.hiff.org
http://program.hiff.org く、食いてー! 食わせろー! がおー!

つってもお肉ジュージューはいっぱいあり、飯テロ映画には違いないのだった
いやホント腹減るね。アメリカのステーキハウスの二度焼きステーキ、どこだか忘れたが南米のお店のケバブみたいな焼き方するステーキ、イタリアの荒々しい豪快ステーキ、松坂牛使った日本の繊細ステーキ…ってな素敵なステーキのオンパレード。
こんなん、セコイ。

ほんでアカデミックな映画なんで各国のお肉事情もちゃんと押さえており、明日職場で使えるお肉トリビアもいっぱいあった。
アメリカにおける年間の肉消費量は一人当たり12キロ、アルゼンチンは60キロ(肉しか食ってねーじゃねーか!)
フランスのお肉は赤身が中心で、脂の乗ったヤツは海外市場に輸出される。
世界の肉牛の品種はイギリスのアンガス種が基礎になっていて、和牛もアンガス種を交配したもの。
その和牛の胚を使ったアイ・ワギュウとかいう品種がスウェーデンで生まれたが、胚は非合法に持ち込まれたとゆー噂。

なんやそんなん、色々出てきます。これで美味しんぼごっこができるな。

ほんでね、お肉も良いが出てくるキャラクターもイイんだよな、コレ。
最初フランスの畜産家とかステーキハウスのオーナーとかお肉博士とかにハナシ聞きにいくんすけど、コイツらやたらエラそうでマジメ腐ってやがる。
ところ変わってアメリカ。カメラがブロンクスの精肉屋に向かうと、ソコにいるのは「Hey yo men!」的な兄ちゃんなのだった(絶対大学出てない)

コイツも大好きだが、お肉業界は広い。
「私はMBAを持ってるが、あえて畜産の道を選んだのだ」とかゆー傲慢感アリアリ(ソファーの上で足組んでインタビューに応じてやがる)のエリート畜産家が出てきたかと思えば、次に出てくんのはお肉を振り上げて「To beef, or not to be!」(「食うべきか食わざるべきか」?)と叫ぶ激情のイタリア人お肉シェフ。
無駄なハイテンションに笑ってまう名キャラクターだが、こんなお肉業界の個性派がたくさん出てくんのだった。

そうそう、和牛の畜産家も出てくる。
神戸牛の畜産家はなんや根本敬的な意味でイイ顔したオッサンで、曰く「牛にゃあよう、24時間モーツァルト聞かせてんだよ。なに、牛のケア? いやぁ、手が回らないね。なに、牛にビール飲ませる? いや、牛じゃなくて俺が呑んじゃうよ、ゲヘヘ」だそうである。
他に出てくるアメリカやヨーロッパの畜産家はみんな進歩的かつ貴族的な金持ちなんであるが、この落差はなんなんだ。

http://trailers.apple.com
http://trailers.apple.com そのテンションで食うか食わないか聞かれたら、そんなもん食うしかないじゃないですか。

日本のシーンは結構長い。
和牛はとにかく超美味い。マジやべぇ美味い。とゆーコトが撮影に同行したフランスのお肉博士の試食(と、セリで目にした最高級松坂牛を思わず写真に撮ってしまう博士のカット)で描かれた後、クルーは今度は松坂牛の飼育場へ。
ソコにいんのはこれまた素朴で確実にMBAとか持ってないであろう畜産家夫婦で、狭い狭い囲いに閉じ込められた松坂牛を見ながらこんなん語るのカメラは捉える。
「全部処女牛なんですよー、柔らかいですからねー。エサは穀物飼料ですよー」

一方で他の貴族的畜産家さんたちとゆーのはもっと面白いコトをやっている。
飼料の生成と肉牛の飼育を自牧場で完結させる閉鎖系の環境を構築しようとしてる人、スコットランドの高地に城を構え、その外でハンランド種を自由に放牧して育ててる人、肉牛を寿命近くまで育て上げてから出荷する(牧場の肉牛の最長年齢は15歳!)とゆー常識破りの人なんかが出てくる。

お肉と並んでこのあたり映画の見せ場で、とくにスコットランドの飼育風景なんかちょっと感動してしまった。
だってさ、年中霧のかかる僻地にポツンと大きなお城があって、その外の雄大な原野を肉牛が自由に闊歩してんだよ? その主人である畜産家はお城ん中で暖炉の火に当たりながらインタビューに答えちゃったりして、なにそれ、貴族じゃん。

その肉牛、ハイランド種とゆーのも立派な毛に覆われた気品すら漂う風貌で、自然の中で暮らしてるだけあって物怖じするコトがない。
クルーの乗った車を前にしても一向にその場を譲る気配がなく、飼い主も貴族なら牛も貴族である。
なんだコレは。ファンタジーか。なんか知らんが、すげー憧れるよ、こーゆーの! 俺もスコットランドで畜産したーい!

他方、肉牛を寿命近くまで育てる畜産家さんはもっと庶民的な飼育をしてるんであるが、コレはコレでほのぼのと感動なのだ。
別になにか特別なコトしてるワケではない。古い牧場で普通に牛と暮らしてるだけだが、例の15歳の牛と戯れてるシーンは幸せそのもの。
なんせ15歳なので物凄いデカく体高2メートル近くあるが、ソイツがちょっと走り出して母屋を壊さんばかりになっても、この畜産家さんは「なぁに、遊んでるだけさ」なんであった。

ところで、この人は高齢の肉牛に今流行の熟成を施して見事に超美味いお肉にしてるんであるが、よーするに技術の進歩や新たな研究の成果を踏まえれば牛を狭い囲いに閉じ込めないでも、環境に悪い穀物飼料を使わないでも、生後一年足らずで幼くして屠殺せんでも、美味しいお肉は出来る(らしい)んである。
それがお肉のレボリューションだと、そーゆー映画なんであった。

https://tribecafilm.com
https://tribecafilm.com 見よ! このハイランド種の勇姿を! くそー、食う前にモフモフしたいぞ! モフモフ!

はてさて、映画は世界中のステーキハウスを一応ランク付けしてくんであるが、リビエール監督的10位のお店のシーンの次は3位のお店のシーンになったりする。
ご丁寧に「ウチのカミさんが編集しましたよ! もうすぐ子供産まれんすよ!」とどうでもいい事実がエンドクレジットで明かされるが、とにかくカミさんの編集によってせっかくの俺的ランキングは意味を無くしてしまったのだった。

『STEAK (R)EVOLUTION』とゆー原題も示すように、そのあたりから伺えんのは進歩的だったり弁証法的だったりする成長のイメージ、あるいはヒエラルキーの否定の映画だとゆーコトなのだった。
エボリューションじゃなくてレボリューション。改良に改良を重ねてもっと美味しいお肉を作るコトに腐心するより、今こそその陰に隠れて可哀想な立場に置かれてきた肉牛さんたちの牛権を取り戻せ! それが肉牛革命だ!
…とまで激しい映画じゃないが、主張はそんなトコである。
とにかく、肉牛を飼育小屋から出して放牧させたい映画である。

なんつーか、意識高いなお前ら。
いやまぁマジメにゆーと結構セコイ作りにはなっていて、たとえば「和牛超うめー!」なシーンの後に和牛の畜産家のいかにもアホそうな発言だけ挿入し、その次にMBA持ってる先進的金持ち畜産家のインタビューを入れんのは、画的に面白いがあまりフェアな作りではない。
ブロンクスの精肉屋のバカそうな兄ちゃんに取材するあたりなんかもかなり狙ってるように思え、そうやってお肉業界の意識低い系(と監督は考えているであろう)の方々と進歩派の方々を、畜産過程と消費の現場を明確に対比させるに、なにやらベタにイデオロギッシュな意図があんである(エコ的な)

別に映画にフェアとか求めないし、どころか俺的には思想的に偏ってる映画ほど面白いと思うんだよ。
そもそも「ドキュメンタリーは嘘をつく」で、透明なドキュメンタリーなんてものは絶対に存在しないに決まってる。
なので、別にそれで何も問題ないと思うが、映画として面白いのとその思想の是非は別のハナシだろうと。

この映画面白いんですが、思想に関しては必ずしも賛同できるワケではない。
そりゃ肉牛だって放牧で育てた方がいいよなぁと個人的には思うが、それで生活成り立つんならどこの畜産家だってそうしてるだろう、そりゃ。

そのあたりの社会的な問題に切り込まず、そして先進的畜産家の手法を一切検証するコトなくひたすら称揚するこの映画は、やっぱりちょっとセコイんである。
(しかし観てる間は美味そうなお肉に気を取られてそんなコト考えないのだ! セコイ! でも美味そう! 俺にも食わせろ!)

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それにしてもこの手の告発&啓蒙系のドキュメンタリー映画は近年結構な数が日本でも公開されており、そのトレンドはどうやら原発と食らしい。
こーゆーのは要するに不安に訴えかける商売で、ニュースじゃやらないけど実はこんなにヒドイ事やキケンな事が…とゆーのが自然の賛美と一緒に描かれんである。
そして基本ナレーションはあまり入れず、淡々と観察だけするような構造をとるワケですが、そうした手法に客観性と中立性を装う効果もあるコトはこーゆーの観るときにアタマに入れといた方がいいんじゃなかろか。
俺は原発のドキュメンタリー映画なんかは推進も反対も問わずジャンジャンやるべきだと思ってますが、あんまり素直に受け入れるとバカを見ると思うワケです。

…とゆーコトとは100%一切間違いなく確実に関係ない『二郎は鮨の夢を見る』は、浮遊感のある映像とフィリップ・グラスの優美な音楽も素晴しい食系ドキュメンタリーのケッ作。
コッチは思想もクソもあったもんじゃないので、肩肘張らずにただ「キレイだなぁ、スゴイなぁ、食べたいなぁ」とバカみたいに観れます。
面白いよ! そして腹減るよ!

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牛を飼う男

和牛の飼育農家が見ると、「あー国が変われば肉も変わるなぁ」
「思ったよりグラム単価が高ぇ」「枝肉見せてんじゃねぇ!(外国じゃ普通?」
「和牛が『ブロイラーかよ!』って貶されることは無いのか」
などなど
後、「あ、この人(知人)が出てるんだ」ってのが一番の衝撃w

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