『7’s セブンス』と『乱死怒町より愛を吐いて』を観て自主映画を考える感想

別に関係はないが、同日公開の二本の日本の低予算映画はどっちもインディーズ映画とはなにかを考えさせられるよーな映画だったのだ。
ゆーてもどっちもレッキとしたプロの監督が撮ってるし、どっちもほぼ自己資本の商業映画って言った方が良いのでインディーズとゆーかインディペンデント。
まぁ、ひたすら安い映画には違いないけど。

それにしてもこの二本、方向性真逆である。
こーゆー映画は二本立てでアレコレ比べながら観るとオモロイんで、テキトーに比較しながら感想も二本立てで書いてみよう!

『7’s セブンス』

http://www.cinra.net
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極限に私的な前置き

俺的スーパータイムリーな映画なんである。

デカいコンクールで大賞取った自主監督が、偶然にも新進気鋭の芸人やら俳優やらのプチ・ギョーカイ人どもに出会う。
「君、あの賞取った澤田くんだよね! スゴイじゃん! 一緒に映画撮ろうよ! 夢を追おうよ!」
そんなワケで澤田くんと名も無き夢追い人どもは賞金100万を元手にビッグドリームを求めて『7’s』なる自主映画を撮り始めるのだったが…。

ってなハナシだが、奇しくもワタクシさわだきんたまも先だってエラそうな名前(でも実態はエラくもなんともない、ほとんど詐欺みたいな映画賞だったのだ! 払った審査料返せ!)の映画賞のシナリオ部門に入選、一応仲間内ではそれなりの快挙だったので、やったぜ! 夢が広がるなー! と呑気に喜んでおった。
(受賞式の後で「さっき面白かったよ!」と知らない自主界隈の人に声かけられたのも同じだが、コチラは映画と違ってドリーミンな展開はないのだった)

で、そんときの貧乏な打ち上げの場でこんなハナシしてたんである。
「『まんが道』マジ傑作だよな! あーゆー映画もっとありゃいいのにな!」
『まんが道』ゆーのはもちろんアレだが、知らん人のために触れとくと奇才・藤子不二雄A先生の半自伝的漫画である。

戦時下での苦しい生活、天才・藤子F不二雄先生との出会い、あの伝説的なトキワ荘での青春の日々…ってとにかくヤベェから黙って読むか死ぬかどっちかにしろって感じであるが、よーするにココで言わんとしてんのは『まんが道』で描かれたトキワ荘の青春模様みたいな、売れない自主監督どもの群像劇みたいの自主監督はもっと撮ればいいじゃない、ってなコトであった。

そのタイミングでこの内容。しかも主役の自主監督の名が澤田。
…俺が観なきゃ誰が観るんだ! 完全に俺のための映画だろ!
妙な運命と使命感に駆られて映画館に足を運んだが、場内ほぼ満席。
なんか知らんが、観る前から既にして物凄い負けた感なのだった。

映像がモノスゴイのだ!
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http://natalie.mu うーん、カネの無さを感じさせない画だなぁ。

それはいいが、この映画それこそ市川準の『トキワ荘の青春』(1996)みたいな映画だったりした。
なんかね、市川準みたいにフィックス(固定カメラ)とトラッキング(カメラの下にレール敷いての移動ショット)でガチガチに固めた静物画みたいな画作りってワケじゃないんですが、デジタル撮影ながらフィルムライクな質感で、ちょっとくすんだ古い写真って感じ。
それがなんか、市川準っぽい。

そーゆー質感もイイ感じなんだけど、コレちょっとしたトコでも丁寧にカット割ってカメラを動かしたりする。
何が凄いって、ソコで手ブレしない。みなさん、この映画は手持ちの移動ショットで手ブレしません!
…なに言ってんのと思われっかもしんないが、こーゆー底予算(低予算ではない)映画は機材が無いのか良いオペレーターがいないのか、ちょっとカメラ動くと基本揺れまくんのだ。

なので、ソコ疎かにしないあたり凡百の底予算映画を遥かに凌いでおり、んでまた何気ない会話シーンでも単調で安易な切り返し使ったりとかしないで変化を付けてて、質感の違うザ・DV撮影の画をドラマの演出として取り入れたりもしてて、すげー洗練された映像って感じでとにかくビックリなんである。

だがビックリはそれだけじゃないぞ! 編集も芝居もセリフもすげー。
とにかく間を作らない映画なワケで、再び一般的な底予算映画を引き合いに出せば、そーゆーのがなんでツマランかって理由の一つは極度のダラダラ感なのだ。
なんでダラダラすんだろか。基本、編集で切った方が良さそうに見えるトコでも切らないんである。

特に自主映画なんて顕著だけれど、撮ったシーンは全部使おうとするし、そのシーンごとに起承転結作って完結させよーとする。
AとBの会話がありゃ、そのシーンで一つの会話と展開を始めて終わらせようとする。
だいたいにおいてその結果として全体の流れが悪くなって超ダラ感出てる気がするが、『7’s』は容赦なく編集で切りまくんので、たとえばカット尻なんてメチャクチャにタイト、役者さんのセリフが終わると同時に、ってゆーかセリフの途中でもシーンが変わり、結果ハイテンポで飽きる余地ないのだ。

そんなワケで常にセリフと芝居の応酬で映画が埋め尽くされる。
このセリフ、超リアル。芝居もリアルで、若手・ベテラン問わず出てくるギョーカイ人どもの全員があるあるの連続である。
あるあるゆーてますが、笑いながらの「あるある! 」じゃなくて泣き叫びながらの「あるある! あるよちくしょう!」である。

とにかく出てくるギョーカイ人のキャラ(※主人公含む)がすべからくムカつくが、ホントにこーゆーヤツらよくいるので、なんや現実と映画のあわいが消える。
そもそもこの映画自体がテメェらの実体験に基づいてるとのコト。
結局、念願の自主映画を撮れなかった人たち(ネタバレではなく、冒頭でそうナレーションが入る)のハナシなので、こうリアルにヤラれると夢も希望もない。

アレだな、俳優さんたちも知ってるイヤ~なギョーカイ人とか自分らの日常をイメージしたトコ多々あんじゃなかろか。
いやホント、マジ全員素晴しかったよ。

ハナシは物足りないのだ?
https://www.youtube.com
https://www.youtube.com うーん、俳優さんってスゴイんだなぁ。

んなワケで『7’s』とゆー映画はサイテーの底予算、撮影日数が数年がかりで計8日とゆー悪条件にも関わらず、いやまったく恐ろしいレベルでよー出来ており、全国の才能の無い自主映画作家のドリームを燃えるゴミに捨てさせるに充分の、自主映画作家にとっての黒船、いやむしろアトミック・ボムである。
作り手は自覚が無いかもしんないが、お前ら数千人単位で自主映画作家殺してるからな。精神的に。

…だがしかし! しかしである!
コレ映像面(付け加えるなら音響面も)は予算規模から考えると全く凄まじい完成度だが、ハナシはちょっとアレなんである!
安心しろ全国のクソ自主映画作家ども! こんな映画でもダメなトコはある!

いやなんつーかさ、例えば主人公の澤田さんが撮影上手くいかなくてプリプリと発狂、どんどん現場が崩壊してくって展開辿るワケさ、この映画。
あぁ主人公ゆーてますけど、実際はちょっと違うっつーか、主人公置かない群像劇なんだけど、ゆーたらまずそのあたりっすよ。
主人公不在なのに登場人物やたら多くて、それでかつテンポばっか重視すっから個々の人物の背景とか関係性とか全部パパっとやって済ませちゃうのね。

だから、どんどん撮影現場が崩壊してく展開になるんだけど、なんで崩壊に至ったかも、そもそもどんな映画を作ろうとしてたのかも、どんだけこの人たちがその映画に夢を託してたかもロクに分かんなくて全然盛り上がんねぇんだ、コレが。

映画の後半は撮影に関わった人たちが夢に挫折したり成功の道を歩んだりするサマが描かれて、実は自主映画撮影云々はあんま関係なく青春の光と影がうんちゃらみたいなコトが本筋だってコトが明らかになるが、んなワケでその大事なトコもノレなかったりする。
ココに来るとテンポが遅くなってジックリとドラマをやるよーになるが、それまでの積み重ねがあんま感じられないんで単に間延びした印象を受けるばかりなのだった。

ゆーたら、遊びを作らない映画。作りがタイトすぎて感情移入の余地とかハナシの緩急が無くなって、そこらのユルユルの自主映画とは逆の意味でとてもダラついた面白味の無いドラマになってる気がすんのだ。

そこらへん役者さんの演技とかカメラワークも含めてであり、なにか明確なビジョンでもって完全に監督が芝居と画を固めてまう。
映画に出てくる自主監督の澤田さんはとにかく融通の効かないコントロール・フリークだったりするが、たぶん監督自身そのよーにこの映画を作ってんである。
「若者たちの夢」をハナシの中心に置きつつもなんの広がりも盛り上がりも感じられないのは、かように緊密で精密な映画作りにドラマとキャラクターが押しつぶされて見えなくなってしまったんだろうとゆー、なんかそんな気がすんのだ。

「夢」と言えば、たぶんドラマの上での最大の問題は、その「夢」がセリフでさえほぼ描かれないトコじゃなかろか。
夢だ夢だゆーてるが、こうなるとどいつもこいつも曖昧な承認欲求とカネ(そしてギョーカイ)に目が眩んでるだけの軽薄なバカに思えてくる。
なんせ主人公の澤田さんが語る夢は「ギョーカイで成功してハリウッドに住む!」とゆークソみたいなシロモノだったりすんだから。

爪の垢じゃ足りない。お前はテリー・ギリアムを丸焼きにして食え!

結果として、なんかイヤな気分になる映画なのだった
http://shinjuku.musashino-k.jp/
http://shinjuku.musashino-k.jp/ 自主映画撮ってる設定ですが、監督は日芸出身のマトモな人なので劇中の自主映画現場もやたら意識が高い。

この監督さんはたぶんアメリカ映画みたいの作りたかったよーに思え、件の緊密な作りだとか、あるいは冒頭にかかる音楽なんかハリウッド映画で何百回聴いたか分からない既視感(既聴感?)アリアリのアメリカ映画的サウンドなんかモロにそうだが、それはともかく、この映画は『ブギーナイツ』(1997)を思わせる部分あった。
70年代~90年代のアメリカンポルノ業界で「映画撮って金持ちになるぜ!」とゆー身も蓋もないビッグドリームを追った人たちの映画だったけど、『7’s』みたいにイヤ~な感じしないのは大いに余白と余裕持たせた作りだったからじゃねーのと思う。

軽薄バカどものドラマにたっぷり時間割いて、その栄枯盛衰を慈しむようにジックリ映してく。
対象を俯瞰する透徹した眼差しは軽薄バカの一挙一動に笑いの余地を忍ばせるが、同時にそいつらの別の一面を感じさせてドラマに陰影と緩急をつけたり、あるいはバカどものクロニクルに現代アメリカ史を隠し味に含ませたりもして、こんなしょーもないヤツらのハナシでも盛り上がりに盛り上がって超感動的にさえしてたのだ。

他方『7’s』の軽薄バカどもは、俺に言わせりゃ不快なだけだ。
陰の無い書割人間のドラマを青春の光と影ゆーてシリアスっぽく撮りやがって…観てるこっちゃ「お前らいいからさっさとクタバレ」である(※個人の感想)

厳しい撮影現場の空気を映画に焼き付けると、その映画は面白くなる!
…と信仰に近い思い込みをしてたり、いや別に思ってなくてもどーしてもフィルムに焼き付けてしまう、とゆーのは自主映画作家の特徴なんじゃないかと思う。
不思議と商業を狙う自主映画作家の映画は概して息苦しく、シリアス一辺倒で逆に深みを欠いてオモロないが、その意味じゃ画的にはあまりに完成されている『7’s』とゆー映画も、いくら撮ってる人がプロゆーても自主映画のダメなトコがよく出てるよーに思う。

アレだな、みんなプリプリしてないで余裕持とうよ、とゆーハナシなんであった。

『乱死怒町より愛を吐いて』

http://natalie.mu
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なにがパンクだバカ野郎!

そんな緊密で苦しい苦しいシリアスな映画の後でなんですが、ユル過ぎてついついウンコ漏らしちゃいそうなバカ映画です。
ストーリーとかあんま無い。あんのはバカだけ。しかもホットなバカじゃなくてコールドなバカ。寒すぎて下痢便になっちまう。
どーゆー映画か? ジジィが「○○ちゃんのマンマン見たーい!」って言って○○ちゃんがマンマン見せると、ジジィの目がキュピーンて漫画みたいに光って激ユルのカンフーし始めるよーな映画である。
あぁ、もう冬なんだナァ…寒い寒い。

それにしても何度何度映画館を出ようと思ったか分からない。『7’s』と比べるとコッチの俳優陣は豪華だが、画も脚本も芝居も完成度は段違い次元違いに低い。
それで笑えるなら全然おっけーに決まってるが、完全に勘違いした素人芸人(バイト先じゃ大ウケなんですよー!)のゴミみたいなネタの数々を2時間近く見せられるだけの映画なので、関係者は笑えるが部外者には拷問である。

なんだろな、感じドイツの大バカ監督クリストフ・シュリゲンズィーフがラノベ原作で撮ったよーな映画だ。
シュリンゲンズィーフも基本サムい映画撮るが、寒さを跳ね除ける得体の知れん悪趣味なパワーはなんとなくあった。
なもん、コッチには皆無だ。

そのくせ監督の島田角栄とかゆー人はやたら「パンクだぜ!」とか「全てのハミダシ者に捧げる!」とかイキってやがる。
こないだ『孤高の遠吠え』(2015)とゆー、ギョーカイにコネもアテも無いのに映画やるために会社辞めちゃった人が地元の不良どもみんな集めて撮ったヤベェ自主映画があったが、パンクゆーなら、ハミダシ者ゆーならそんぐらいやってみろっつの。

知り合いのミュージシャンと芸人集めてパンク? ハミダシ者?
「ウンコ」と「セックス」をセリフに沢山入れたらパンク? ハミダシ者?
アソコ丸出しのセックスもモノホンのウンコも映画に出さないで?
『ピンクフラミンゴ』(1972)のディバインみたいにウンコ食ったりもしないで?

…別にイイけどさぁ、パンクだなんだ大見得切んならこんなヌルいコトしてんじゃねーよバカ野郎。肥溜め落ちろクソが。

だからと言ってキライになれない

…とはいえ映画とは不思議なモノで、こんな氷河期到来映画でも思い返せばほのぼのと愛おしく感じる気もしてくんのだ(勘違いであって欲しい)
全くどうしようもねぇクソ映画だが、高校生の自主映画みたいに楽しんで撮ってそーなので和み感は無いとは言い切れない。

いや考えてみれば、100%悪い映画じゃない気もしてきたぞ。
なにがイイって、声がイイ。
元ミドリの後藤まりこが主演だったが、この人の甘ったれた舌足らずな声、艶っぽくてサイコーじゃねぇか。
でもってその声で無機質(棒読みとも言う)な演技するが、そのあたりなんや退廃も感じさせるよーな絶妙なキュート。

メインゲストの一人は声優の大塚明夫で、この人が広島弁のヤクザやる。
ちょっと作り過ぎじゃねーとも思うが、流石にカッチョ良いぞ、スネークの声は!
他にも鳥肌実なんかもちょっと出てたりするが、そんな風にイイ声の人ばっか集めた映画になってて耳に楽しいのだ。

こーゆーところのセンスはパンクっちゅーよりメタルであり、アニメ的である。
劇中で鳥居みゆきが歌うトコの演出なんか完全にメタルの世界だし(マイクが火を噴く)、ロボットが出てきてヤクザと漫才するトコなんかアニメかラノベだっつの。
「パンクだぜ!」じゃなくて「アニメだぜ! メタルだぜ!」って言えば良かったのに、この監督の人は。

とにかくクソでしょーもない映画だとは思うが、ヘタウマ的な面白さが微粒子レベルで存在するやもしれず、いや仮に存在しなくても寝ながらテキトーにダラダラまったり観ればなんとなくゆるーい幸福感が得られないとも限らない。
俺自身はあまりにつまんな過ぎて寝れなかったが、これから観ようとする勇気のある人は頑張って寝よう。
あとお菓子とコーラ持ってこう。食べて寝ればたぶん面白い。

それ映画の内容とかもう関係ないが、そんぐらい余裕のある映画とも言え、出来は比較にならないが観客が自由に遊ぶ余地は『7’s』より遥かにデカイ。
このあたりなかなか普通の商業映画には出来ないインディーズ系映画の強みであり、映画の楽しいトコの一つでもあんだから、『乱死怒町より愛を吐いて』ゆーのはクソ寒いバカ映画とはいえ中々どーして侮れないトコあったりすんのだった。

…でも、こんなお遊戯映画垂れといてパンクだハミダシ者だのたまうのはやっぱダメだろうと思うけどな! ソコ揺るがねぇから!
(※散々クソクソゆーでるが、でもなんだかんだロボット漫才と脱藩ヤクザのツッコミっぷりとかには笑ってもーたのだった)
(11/18追記:今読み返してみて色んな人たちを傷つけることを書いたと反省。戒めの意味を込めて本文はそのまま残しておきます)

(文・さわだきんたま)

【ママー!これ買ってー!】


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方向性真逆の二本のインディーズ映画の間を取るとアラ不思議! ちょうどジョン・ウォーターズの『セシルB/ザ・シネマウォーズ』(2000)になるではありませんか。
ニュートラルがウォーターズってどーゆーコトなんだ。

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