映画『黄金のアデーレ 名画の帰還』の鑑賞から帰還して感想書く

なんかリュック・ベッソン絡みで似たようなタイトルあった気がしたんでアクション映画かと思ったら違ったりした。
ナチスに奪われた絵画の返還を巡る実話ベースのドラマです。
『ミケランジェロ・プロジェクト』(2015)に続いてまたしても。俺にとっては『FOUJITA』(2015)『美術館を手玉にとった男』(2015)に続いての絵画映画ですよ。
なんか続くな、おい。

ってなワケで『黄金のアデーレ 名画の帰還』観てきたんで感想書いてく。

あらすじ

ナチスに迫害され、大戦を前にアメリカに亡命してきた金持ちユダヤ人の女。
いまや老境に達してヘレン・ミレンと化した彼女は、第二の故郷ロサンゼルスで穏やかで満ち足りた生活を送っていた。
姉は亡くなった。私ももうじきだろう。でももう思い残すコトは…いや、あった!
クリムトが描いた大好きだったおばの肖像画、にっくきナチに奪われたあの肖像画「黄金のアデーレ」を取り戻さなきゃ、死んでも死にきれない!
かくして 親戚だかのヘナチョコ若造弁護士を使い、彼女は「黄金のアデーレ」を取り戻そうと奔走するのであった。

最初の方は謎めいててワクワク

http://www.dogandwolf.com
http://www.dogandwolf.com 「黄金のアデーレ」が最初にドーンて出てくる。

当たり前のように途中寝てますが、それでストーリー分からなくなったりしなかったので親切な映画でした。
シンプルシンプル。まぁ実話ベースだし、題材を考えるとあんま複雑にしたりイヤな側面とか描けなかったと思うので、勧善懲悪な感じに安心して観れて安心して寝れる映画なんですな。

ほんでね、なんのハナシか知らんかったからってのもあるが、アヴァンタイトルなんか謎めいてて良かったよね。
壁に金粉を貼り付ける男。カメラが引くと、それがキャンバスだと分かる。
男が振り返るとモデルの女が座ってて、なにやら挑発的な笑みを浮かべてる。
その女がアデーレさん、演じてんのアンチュ・トラウェ。画家はクリムト、誰が演じてんのか知んない。
そしてその絵が「黄金のアデーレ」だ。
うーん、なんか知らんが面白そうだぞ。わくわく。

その後ところも時代も一気に飛んで1998年のロサンゼルスのシーンになり、一体なんだろうなんだろうと思っていると、ほどなくして冒頭に出てきた「黄金のアデーレ」の返還を求めるハナシだと分かる。そらまぁそういうタイトルなんだからそうか。

面白かったのこのあたりぐらいまでで、それからヘレン・ミレンは数々の困難と闘うコトになったりするが、啓蒙映画的な側面が強いためかあんま面白くない。
展開はヒネリが無いし、ヘナチョコ弁護士のライアン・レイノルズのキャラクターも凡庸だし…と書きながら「実話ベースだしなぁ」とは思ったりするが、実話をそのまま再現すんだったら映画にする必要ねーだろと思うんで、やっぱもうちょっと面白くしちゃえばいいのにと思う。

観てないが、そのあたりもしかしたら『ミケランジェロ・プロジェクト』と似てんのかもしんない。

30分ぐらい経ったあたりからつまんなくなる

https://www.youtube.com
https://www.youtube.com ヘレン・ミレンが頑張る。

それにしてもヘレン・ミレンゆーとエリザベス女王まで演じた人なので、どんな演技するんじゃろと思ったが、コレがかなり普通というか、「はいはいはい、こうすんのね、はい、わかりました」みたいな感じの作業感全開芝居なんであった。
自らの死を前に絵画の返還、そしてナチによる迫害のトラウマと対峙するコトを決意した老婦人…ちゅーともっと面白い感じになるかなと思ったが、そこらへんあんま掘り下げなかったりする。

芝居云々とゆーか、コレたぶん編集とか音楽に依るトコ大きいんじゃなかろか。
ハンス・ジマーの音楽なんてサスペンス・アクションみたいだし、よくある映画だったらジックリ撮るような部分もパッパと処理してく。
重い感じの題材に反して作りは軽い。
製作総指揮に名を連ねる人物がやたら多いこの映画、そん中に悪名高きワインスタイン兄弟の名もあった。
別に製作総指揮だから映画自体にほぼ関わってないとは思うが、そう聞くとこの軽さは何故か納得させられるもんがある。

いや軽いのは良いが、面白くなりそうなトコまで削っちゃダメだよなしかし。
脚本がそうなってんのかもしんないけど、コレ絵画の返還を求めてババァが超頑張ってオーストリア政府に訴訟起すハナシじゃないすか。
でも審理の過程とか水面下の駆け引きとか、そーゆーの全然やんないの。
はい裁判始まりました。どうなるでしょう。次のシーンで、はい勝訴。
…そんな感じなんだよ、なんか。

要するにこの絵を取り戻すために頑張ったババァ、マリア・アルトマンさんのドラマを中心に描こうとしたから裁判は省略されたのかもしれんが、だったらいっそのことヘナチョコ弁護士のドラマパート(カミさんの臨月が近づいてきた! とゆーベタなドラマ)だって省いちゃえば良かったのに。
そーゆーベタに泣けそうな場面入れないと、ババァが頑張るハナシなんて誰も観てくんないよ…みたいな配慮かもしれんけどさぁ。
結果、別に面白くない映画になっちゃ元も子もねぇよな。

なにか、しこりの残る映画であった…

http://www.theaceblackblog.com
http://www.theaceblackblog.com アデーレ役のトラウェさんが良かったなぁ。でも絵に描かれたアデーレと全然似てない!

そんなワケでつい昨日観た(寝た)ハズなのにもうほとんど覚えてないくらい印象薄い映画だったりするが、でもアデーレさんを演じたアンチュ・トラウェとかいう女優さん、この人の芯の強そうで放縦っぽい眼差しと佇まいは立派だったなぁ。
タイトルにもなってるぐらいなんだから、もっとこの人の魅力押し出せば良かったのに。勿体ねーの。

あとアレだ、さっき映画サイトでクレジット見て知ったんだけど、この映画なんか久々にジョナサン・プライスが出てる。テリー・ギリアムの『未来世紀ブラジル』(1985)の小役人の、あのジョナサン・プライス。
どこで出てたんだと思ったが、裁判長役らしい。ギリアムの映画だと他にも『バロン』(1989)に役人役で出てたが、久々に見たと思ったら今度は裁判長か。なんか、変わんないなお前!

まぁそーゆー面白いトコあったし、あとはまぁハンス・ジマーの(あんまやる気の無い感じの)スコアとかもカッチョイイし、なによりポンポンとテンポ良く進んで2時間以内にちゃんと終わんので、タイクツはしないと思うが、やっぱ別に面白くは無い。
もう一度言うが、別に面白くはない(ちゃんと観てないくせに偉そうに!)

そして蛇足ながら最後に付け加えておきたいのは、ちょっぴり複雑な気分になる映画でもあるってコトだ。
つーのはさ、見事彼女が「黄金のアデーレ」を取り戻せたのはナチスの悪行の数々は清算すべしとゆー関係諸国の共通認識があったからなワケで、コレがたとえばアメリカのユダヤ人とオーストリア政府じゃなくて韓国の人と日本政府の間の話だったらそりゃあもう大喧嘩だろな、とゆーあたりなんすよ。
仏像がなんやとゆーハナシは記憶に新しいが、そのあたりの複雑極まる問題を回避して簒奪された美術品の返還を美談の如しとしてまうのは、いくら実話ベースゆーてもちょっと都合が良すぎやせんかね。

そりゃ俺だって戦争やらなんやで奪われた美術品の類はすべからく元の所持者に返還したらいいじゃんと思ってますよ。
でもこの映画の理屈はさ、こんなですよ。法廷シーンでこんなやりとりがあんの。

「君の言う事は分かる。だがその絵画の返還という前例を作ってしまうと、アメリカの国際関係にヒビが入る。アメリカは同種の案件を無数に抱えてるからだ」
「こう考えて下さい。ビンの中に虫が入ってる。蓋を開けて虫を取り出し、すぐ蓋を閉める。これで外交問題にはなりません」

で、根拠不明のビンの虫理論をかざしたヘナチョコ弁護士の訴えが認められるワケ。
…コレ、傲慢すぎない? とも思うし、だいたいそんなアバウトな例え話で済ませられる問題じゃないだろコレは。

迫害のトラウマと闘った老婦人の実話にケチをつけるのはどうかと思うが(もう充分つけてるが)、でもそれとは別に、映画の作りとしてやっぱ不誠実だなーと思ったりもしつつ、そして言い方は相当悪いが「悪いのはナチだ!」と言ってればそれでいい映画を作れる国っつーのは羨ましいなと、なんかそんな風に思うのでした。
バビョ~ン。

【ママー!これ買ってー!】


アドルフの画集 [DVD]

ユダヤ人の人たちを強制収容所にポイポイしてたゲスナチ野郎アイヒマンを評して、哲学者のハンナ・アーレントが「悪の凡庸さ」とかなんとか言ったところ大バッシング、なんて有名なハナシもあるが、やはりアーレントの時代から遠く離れた現代でもナチを悪の軍団でなく生きた普通の人間の集まりだったとゆー風に描くのは意外と難しいコトなんだなぁと、『黄金のアデーレ』みたいな映画を観ると思ったりする(この映画は英米合作なんで尚更だ)

そう考えるとこの『アドルフの画集』(2002)とかいう製作がハンガリー、カナダ、イギリスとやたら多国籍な映画、なかなか勇気あるコトやってる感じだったりした。
画家になりたかった若き日のアドルフくんがいかに挫折してヒトラーとなってくかの映画で、おそらくヒトラーの友人クビツェクの回想録『アドルフ・ヒトラーの青春』を元ネタにしていて、レニ・リーフェンシュタールの有名なナチ・プロパガンダ映画『意志の勝利』(1935)を模した演説シーンもあったりする本気っぷり。

半泣きのアドルフが夜道で孤独を噛み締めながらヒトラーに変貌してくもちろん映画オリジナルのラスト、滅茶苦茶やるせない。あぁ、誰かアドルフの絵を「すげー! 天才!」とかウソ言って買ってあげてれば色んな人が死ななくて良かったかもしんないのに…。
言語がオール英語だったり、ワリと大味だったりするが、コレ見応えある。
(それにしても、また絵画映画だ!)

↓その他のヤツ
奪われた古代の宝をめぐる争い
ナチの絵画略奪作戦

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