ダメ人間映画『メニルモンタン 2つの秋と3つの冬』の感想をふわっと書く

ダメな人のフランス映画です。
フランスはパリ、メニルモンタンゆー街に33歳・無職・若ハゲのダメ男がおった。男にはいつもボーっとしたダメな感じの友達(男)がおって、まぁとにかく二人ともとても甲斐性が無い、モテない、人生にやる気がない。
それじゃダメだってんで若ハゲの方のダメ男、とりあえずランニングを始めてみた。するとわりかしキレイな大学院生の女性と出会った。
こんなダメ男にキレイかつインテリな大学院生が振り向くワケもないが、偶然彼女を強盗から救ったコトから付き合うコトになったり、ついでにもう一人のダメ男の方にも彼女ができちゃったりなんかして、あぁ人生楽しくなってきたなぁと、なんかそんなハナシなのだった。

えーと、『メニルモンタン 2つの秋と3つの冬』、そーゆー感じのフランス映画で、結構面白かったよ、コレ。
以下ダラダラと感想垂れる。

https://www.youtube.com
https://www.youtube.com 主役のヴァンサン・マケーニュのハゲっぷりは素晴しいです。

ほんでね、なんちゅーか、コレ感じヌーヴェルバーグ風の青春映画っぽいトコもあんですが、むしろアレだな、観てて思ったのはアメリカのインディーズ映画の流れ。
なんですか、ジャームッシュの『パーマネント・バケーション』(1980)とか、ケヴィン・スミス『クラークス』(1994)とか、スパイク・リー『シーズ・ガッタ・ハヴ・イット』(1985)とか、あんな感じ。
ホラ、あるじゃん、ダメ人間のどうでもいい日常をオフビート・コメディでやる、みたいなの。そーゆージャンルだよな、『メニルモンタン 2つの秋と3つの冬』。

コトにこう、そーゆー感じ強く出てんのが他の映画なんかの引用で、「『ブレイキング・バッド』は観た。今は『ウォーキング・デッド』を観てる」みたいなセリフと一緒に『ナイト・オブ・ザ・リビングデッド』(1986)のフッテージが入ってくる。
ジャド・アパトー『素敵な人生の終り方』(2009)、ブレッソン『白夜』(1971)に言及したりもして(「ホラ、その…『白夜』観てたら君のコト思い出して…」とかいうダメ男のセリフに笑う)、こういうサブカル感覚ってすげーアメリカ的だなぁと思ったりする次第。

その流れでいくと、ウディ・アレンの『アニー・ホール』(1977)なんかにも近い。あの映画、最初に主演でもあるウディ・アレンが出てきてなんで恋人と別れたかカメラに語りかけるってメタなギャグありましたけど、コッチも登場人物のインタビュー形式で、回想ってカタチで進む。
視野をもっと広げればノア・バームバックの『イカとクジラ』(2005)とか、『ウェインズ・ワールド』(1992)なんて映画も思わず連想させられたりするが、そうやって頭に浮かぶのはやっぱりアメリカ映画。それも、インディーズとかインディペンデントの作家性の濃いヤツ(ゴダール『はなればなれに』(1964)とかもちょっとある)

このグローバルなご時世、映画を国ごとに分けてもしょうがないとは思うが、あまりに既視感アリアリ、しかもフランス映画にして懐かし80’sアメリカン・インディーズからジャド・アパトー映画にまで続くあのアメリカ的な若者(あるいはダメ人間)感覚だったんで、なーんか「へぇ」な感じでしたよ、「へぇ」な感じ。
(ヌーヴェルヴァーグ的なもののアメリカを経由した先祖がえり、とも言えるかもしんない)

http://www.filmlinc.org
http://www.filmlinc.org 主人公の唯一の友達バスティアン・ブイヨン、なんだろなぁ、この人のダメ~な感じっつーか童貞っぽさっつーか、素晴しいな。ちょっとマイケル・セラっぽい。

その感じの映画なんで、なんや飄々として掴みどころが無い。
ストーリーなんてあるような無いようなで、しょうもない日常をダラダラ垂れ流す。全編通して最大の笑いどころは強盗に対峙した主人公が思わず変な声を出してしまうトコ、ぐらいのテンションの映画。
ちょっとシュールな感じもあった。臨死体験した主人公が三途の雪原で親父と会ってどうでもいい会話したり、とか。
そーゆー空気感、いいっすね。楽に観れて。

従って別に最後の最後までなんもない。なんとなく恋愛、なんとなく楽しい、なんとなく破局、の予感。
なんでもない日常の中で、微妙にズレた変なキャラクター交えつつそーゆーのダラダラやる。
全部で40章ぐらいに分けられてて、ダラダラだけれども意外と飽きない。各章、意味があるんだか無いんだか分からない題が付く。掴みどころが無い(このあたり、ジャームッシュなんかの影響なのかもしんない)。

掴みどころが無いっつーと、コレ全シーン通して労働ってのが出てこない。なにも主人公のダメ男が無職だからってんじゃなく、全ての登場人物に一つも働く場面が用意されてない。描かれんのは暇を持て余して戯れてる場面だけ。
だからか妙に浮遊感ある。この浮遊感、それこそ『パーマネント・バケーション』とか『クラークス』でもあるような、初期のゴダールっぽいような。

や、しかし懐かしい映画だよ、やっぱ。スクリーン・サイズはスタンダード、フィルム(16ミリ?)も使ってるような。
あぁ、ホントに『パーマネント・バケーション』だ。『クラークス』だ。
この監督、その手の映画がホントに好きなんだろな。
変なダメ人間がダラダラするだけの映画。なーんもない映画。

たまにゃそーゆーのもイイ。なんのコトないけど面白かったすよ、コレ。

※今日の豆知識:この映画の配給会社の「東風」は、「とんぷー」でも「こち」でもなく「とうふう」と読むのだ!(コレ観て初めて知った)

(文・さわだきんたま)

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ジム・ジャームッシュの映画なんて何観ても面白かった記憶が無いが、面白くないのが面白いってんだからセコイ。
でもって特に初期作は観ても片っ端から内容忘れて何度も観てまうんで、よりセコイ(そして観る度に「ツマンナイなぁ」と思うのだ!)

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