映画『杉原千畝 スギハラチウネ』の感想書くっちゅうねん(悪口)

いやはや、いやはや、いやはや…もちろん面白くない映画だろなと理解した上でセルフマゾ的に観に行ったが、むしろ思ったより全然面白かったのだ。
想定外だったのは強烈は安さと素人感の方で、とてもチープなんでわははと大笑いできるかもしんないが、よりによってこの題材でソレやんないでくれよ、素直に笑えねぇじゃねぇか、っていうかもうちょっと真面目に撮らないと題材が題材だけに怒る真面目な人がいるんじゃないか…と無駄に心配になるくらいの映画ではあった。
別に、実在の人物をネタにしてるからって必ずしも真面目に撮る必要も無いと思うが…逆に不真面目で面白いが…しかし…。

とにかく、そんなこんなで『杉原千畝 スギハラチウネ』観て来たんで感想書く。
色んな感想あろうが、オレはすげーダメな映画だと思ったんで、悪口注意。

あらすじ

杉原千畝(唐沢寿明)はスゴ腕の外交官。
そのスゴ腕を駆使して、危ない橋を幾度も渡りつつも満州での北満鉄道買収交渉を成功させた彼は、次の赴任地リトアニアへ。そこで諜報網を構築し、ヨーロッパ情勢を分析、報告せよとゆーのが外務省の命令だった。
駐リトアニア大使生活は順風満帆。接触してきたポーランドの諜報員も上手いコト味方に取り込み、カミさん(小雪)とも仲睦まじく…とそんな矢先にドイツがポーランドに侵攻、大戦が勃発し、ナチスに迫害されたユダヤ難民が亡命のために大使館に大挙してやってくるようになる。
外務省は彼らへのビザ発給を許可しない…だが、放っておいていいのだろうか? 杉原千畝は決断を迫られるのだった…。

驚異のズボラ演出がスゲェ!

http://www.screendaily.com
http://www.screendaily.com 小雪の存在意義があまりない。

たとえば、映画は杉原さんが満州で諜報活動に勤しんでるとっから始まる。
巧みな交渉術でソ連と関東軍の間を渡り歩き…みたいな感じで、そこに関東軍の将校・南川(塚本高史)が出てくる。
この人、良く言えば勇猛果敢、悪く言えば残虐な人で、杉原さんの制止も聞かずソ連兵、それも杉原さんが利用してたヤツまで含めてぶっ殺す。
コワい人だなぁ、杉原さんはこんなのと口と頭脳だけでやり合ってんだなぁ…であるが、塚本高史は塚本高史なので、感じ軍人じゃなくて渋谷のあんちゃんなのだった。
つまり、全然コワくない…ってゆーかむしろちょっと人の良さそうな感じだぞ…。

そもそも、唐沢寿明が百戦錬磨の外交官に見えない。なんか正義漢っぽいのは見てて分かるが(だって「オレは世界を変えたい!」みたいなセリフばっか言う)、杉原さんの外交官としての手腕にスポットを当てたこの映画にしてソレってのは致命的じゃなかろか。
杉原さんが南川の協力を取り付けようとバーで話してる場面、緊迫の場面なのかもしんないが…正義漢の唐沢寿明と渋谷の人の良いあんちゃん塚本高史のコンビに、緊張感もクソもないだろう。

ワリと全編その調子なんであった。なんだろな、ポーランドの諜報員・ペシュが杉原さんに近づいてくる場面があるワケだ。
この人演じたボリス・シッツさん、写真見てもらえればわかるが(トップ画像の右の人)、どう見てもカタギに見えない。軍人上がりの諜報員、とゆー設定なので超合ってるが、杉原さん改め唐沢寿明はこの人に会うなりこう言う。

「君は、一般人じゃないな。軍にいただろう」

ペシュさんドキッ! 「さすが、スギハラだな…」とか苦笑しながら言うが、いやさすがじゃねぇだろ、誰が見ても分かるだろ。
そんな風に、おそらくは脚本の意図するところ(ココであれば杉原さんすげーって観てる人に思わせる意図)を配役と演出で裏切りまくるとゆー、杉原さんが置かれた権謀術数渦巻く世界以上に血も涙も無い作劇が為される映画がコレなのだった。

脚本家の存在すら疑うフリーダム脚本がスゲェ!

http://movie.jorudan.co.jp
http://movie.jorudan.co.jp 板尾創路はイイ味なんですが、でもこの人も出てくる意義ないんじゃないか…。

配慮してます。だいぶ配慮して書いてます。「バッカじゃねーの! ぎゃははー! ひでークソ映画!」とか書いたりしません。私はオトナです。
オトナであるからして、ストーリーの上での見せ場と思われる終盤のある場面、小日向文世演じる駐ドイツ大使の大島閣下と唐沢寿明が大日本帝国の行く末に関しての舌戦を繰り広げる場面ですが、いかにこの場面が酷い出来でもそんな口汚く罵ったりしません。

大使館の中で小日向文世と唐沢寿明がやりあう中、外では空襲開始。その表現としてドーンドーンとゆー音と共に照明が明暗するだけ(画面が揺れたり、ガレキが落ちてきたりとか全く無い)、という今時の映画として考えられない安すぎる手法を採用してるにしても…してるにしても…いや、やっぱ安すぎるだろソレ!
どう考えてもおかしいだろ! 60年前の映画でももっと凝った表現してるよ! コレじゃ再現ドラマっていうか、下手したら再現ドラマ以下じゃねぇか! 学芸会かよ!

杉原さんの外交官としての姿にスポットを当てたこの映画、もちろん杉原さんが亡命ユダヤ人にビザを発給するトコも大きな山場になってるワケだが…な、なんでこんなに盛り上がらない…!
なぜ外務省に背いてまでビザの発給を決意した杉原さんの様々な葛藤の渦巻いていたであろう心情を凡庸なセリフ一つで済ませ、そしてもしかしたらドイツとの同盟を深めたい日本政府の虎の尾を踏むかもしれないとゆースリルとサスペンスを盛り込まないッ…!
これじゃ、ただ単に思いつきでビザにスタンプ押しただけの人じゃないか…むしろ杉原さんを貶めてるよ!

つかさぁ、確かにコレ脚本の意図を裏切りまくる映画だけどさぁ、それ以前にマジ脚本とかヒデェからな!
あーもう、どっから書いたらいいんだよ! 分かんねぇくらいヒデェよ! 杉原さんの外交手腕はどんなもんかいなってのを全然描けてねーしよぉ(そこキモだろう!)、そんな具合でキャラクターの描き分けすら出来てねぇしよぉ(そのくせ登場人物多すぎるよ!)、どいつもこいつもバカみてぇな説明セリフばっか言ってるしよぉ(セリフはナレーションじゃねぇよ!)、だいたいなんだコレ、エピソードの取捨選択全然してねぇからやたら上映時間長ぇじゃねぇかよ!

マジ意味分かんねぇよ! 満州からハナシ始める必要あったのかよ! その後日本に戻って来て杉原さんの友人(板尾創路)出す必要あったのかよ! 板尾も満州編の塚本高史も二三シーン出ただけで後の展開に一切絡まねぇじゃねぇか! そんな超脇役キャラクターにいちいちテロップで名前出すなよ!
濱田岳演じるJTB社員に至ってはだな、この人もテロップで名前ちゃんと出るが、恐らく出演が2シーン計2分! しかも杉原さんと全く関わりが無い!
その短いシーンの中で、杉原さんのビザを持ったユダヤ人を自船に乗せるのを拒んでいたこの人が変節、「やっぱり…ユダヤ人乗せたいです!」とか言うまでを描く!
音楽が高鳴り、感動的なシーンだ! …いや感動じゃねぇよ! 登場シーンが短すぎて葛藤もドラマありゃしねぇのに音楽と感動的な雰囲気だけで感動できるか! たった2分で感動させられると思うんじゃねぇよ!

いや分かるよ!? なんかアレだろ? 杉原さんのご遺族とか杉原記念館の協力受けてるような映画だから、可能な限り関係者全員出そうとしたんだろたぶん!
違ぇんだよ! オレが言いてぇのはその捌き方があり得ないほど下手だってコトなんだよ! ホントにただエピソード並べてるだけなんだよ! テンポとか展開の面白さとか、そんなの微塵たりとも考慮されてねーんだよ!
それ考えんのが脚本家じゃねぇのかよ! っていうかただエピソードの羅列にするにしたって、ドキュメンタリータッチで書くとか色々あんだろ! 映画を面白くする手法なんて色々あんだろ!

脚本家なんだから少しは知恵捻れよ少しはぁぁぁ! がおー! ギャース!
バカヤロー!

とても正しい杉原千畝の伝記映画かもしんないが、正しすぎて逆に全く正しくないんじゃないかと思う…

http://www.japantimes.co.jp
http://www.japantimes.co.jp 杉原さんは立派な人だと思うんだけど…。

か、書き足りねぇ! ヒデェ、こいつぁヒデェ…! クソ…もうオレの手には負えねぇよ! ツッコミどころ多すぎるよこの映画!

だが確かに! 確かにお勉強にはなる! 杉原さんの業績はよく分かった!
しかし…業績をただ伝えるだけなら、杉原記念館で流す資料ビデオでいいだろ! そんでyoutubeにアップすればいいじゃん! いったいなんのタメの映画化だったんだッ…!
っていうか結局最後まで杉原さんの人物としての面白さみたいの出てこないし…!

編集はパッパとしてる! どんどんシーンが変わるから、飽きなかった!(盛り上がりは無いが!)
編集のジム・ムンロさんか監督のチェリン・グラックさんのセンスだろう!
…ってお前ら誰だよ! コレ日本映画じゃなかったのかよ! つか、日本映画? 冒頭のテロップは簡単な英文であったが…。
知らんが、想像するにグローバルなキャスト・スタッフのグローバル映画ですよと言って、海外に売り込むつもりじゃなかろか!
…売れるワケねぇだろこんなの!

人物が重要なセリフを言うときにはバカ正直に顔の真正面からのクロースアップ!
まったく為されないエクストラの演出!
ユダヤ難民の着てる服はピッカピカの新品…フィルムスクールの学生に予算10分の1で撮らせてももっと映像に気ぃ使ったの出来るよ!
チェリン・ブラックさん、この謎の監督、日米ハーフの人でハリウッドで『ブラック・レイン』(1989)とか『トランスフォーマー』(2007)の助監督やってたらしいが…お前はそこで何を見てきたんだ…!

いや、個人攻撃はよそう! たぶん、発注通りに作っただけなんだろう! とにかく万人に分かりやすく、杉原さんの業績を伝えるコトだけに専念してくれ…みたいなしょーもない発注に!
そうだ! その観点から観れば間違ってはいない! 正しい! 極めて正しい! 日本人すげー的なナショナリズム高揚させて右に売り、人権は人類平等なヒューマニズム称揚して左に売りで、その販売戦略も死ぬほど正しい!
正しすぎて、その正しさゆえにウンコ漏らしそうなくらい正しいのだ…。

だから、もしこの正しい映画に異議があるとすれば、次の一点かもしんない。
三国同盟が日本の明日だと語る駐ドイツ大使の小日向文世に、唐沢寿明はこう説く。いえ、ドイツは信用できません。このまま突き進めば日本はアメリカと開戦に踏み切り、そして敗北するでしょう…。

当時の錯綜した情勢において、果たして杉原さんの明晰な分析が正しいかどうかは分からなかったと思うが、この映画は小日向文世をバカで頭の固い悪人に、杉原さんをいつも正しい正義の人として描く。
そりゃ事後的に見ればそうだろうが、かように杉原さんの業績を伝えるとゆー意図があればこそ、そこに現在の視点を入れてはいけなかったんじゃないかと思う。
右も左も分からない、しかしそのような状況であえて単身ユダヤ人を救うとゆー危険な道を選んだコトに、杉原さんの偉大さがあるんじゃないかと思うもんな…。

(文・さわだきんたま)

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ぼかぁ思うのですな、実話だろうがなかろうが、政治的に正しかろうがなかろうが、コレみたいに映画として面白くなきゃ話にならんだろうと、ぼかぁ思うのです…。
しかしこうして実録もの映画『アルゴ』(2012)と『杉原千畝 スギハラチウネ』を比べると、志から時代考証から、なにからなにまでスライムとエスタークぐらい差があって愕然とする。
オレ、『アルゴ』そんな好きじゃないのに…。

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↓映画の参考資料とされてた本
杉原千畝: 情報に賭けた外交官 (新潮文庫)

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