映画『クリード チャンプを継ぐ男』の感想を誰かに伝える(ネタバレなし)

こないだ『スターウォーズ フォースの覚醒』観に行ったばかりだが、またもや続編ものの『クリード チャンプを継ぐ男』。『ロッキー』(1976)シリーズ最新作。
えーと、観てきたんで感想書きます。ネタバレとか無いんでご安心。

あらすじ

ロッキーの宿敵にして最愛の友、アポロが逝って早数十年。
ボクシングを引退、静かな余生を送っていたロッキーの下に一人の若造が現れた。
彼の名はアドニス・ジョンソン。聞けば、ボクサーを目指しており、ロッキーにトレーナーになってもらいたいという。
すげなく断るロッキーに、アドニスはこう語る。オレは、アポロの隠し子なんだ…。

シリーズを振り返る

http://ftw.usatoday.com
http://ftw.usatoday.com アポロとはしゃいでいたのも遠い昔のコトです。

だがそもそも、『ロッキー』ってなんだ。熱くなれよ! な映画か。まぁそれもあるかもしんないが、コレ観てオレはなんで『ロッキー』が好きなのか良く分かった。
ロッキーは敗北者だった。フィラデルフィアのうらぶれたスラムで、ヤクザの手先となって糊口を凌いでるチンケなチンピラ。
その男が己の人生を懸けてリングに上がる。相手は無敵のチャンピオン・アポロなんかじゃない。オレ自身だ。ミジメで、チンケで、オレなんかにゃ所詮なにも出来やしねぇと魂まで負け犬になっちまったオレ自身だ。
アポロとの対戦、ロッキーは確かに敗れたが、12ラウンドを闘い抜いた。己との闘いを勝ち抜いた。敗北者ロッキーは、もう負け犬ではない。

シリーズを重ねるにつれてロッキーはどんどん強くなっていった。
『ロッキー2』(1979)ではついにアポロを打ち破り、『ロッキー3』(1982)では王者の慢心ゆえかつてのオレのようにハングリー精神に満ち満ちた名も無きチャレンジャー・クラバーに敗れるが、アポロの助力を得て勝利を勝ち取る。
『ロッキー4 炎の友情』(1985)ではお手伝いロボット付きの豪邸に住み、アメリカ国旗を背負ってソ連が生んだ赤いボクシング・サイボーグことドラコと闘うまでになる。リングの上でアポロを殴り殺した人類最強の男。生きて帰れる見込みは無い…だが、オレはもう逃げやしない。なぜなら、負け犬じゃないからだ!
そしてロッキーは見事ドラコに勝利するんである。

『ロッキー5 最後のドラマ』(1990)でロッキーは引退を決意する。ドラコとの死闘の代償はあまりに大きかったし、それに考えてみれば、ボクシング一筋の人生。エイドリアンと息子のセイジ(スタローンの実子)には迷惑をかけた。これからは家庭に生きよう。
前作の豪邸はいつの間にか姿を消していた。古巣フィラデルフィアの下町に戻って静かにひっそりと暮らすロッキー。だがボクシングを捨てたワケじゃない。これからはトレーナーとなって、若手の育成に専念しよう…。

ロッキーが手塩をかけて育てた新人、トミーはボクシング・センスに溢れた男だった。だが彼は金と名声に目がくらみ、ロッキーを裏切る。
話題性を求めてロッキーとのエキシビジョン・マッチを希望するトミー。だがロッキーは拒絶。そんなにオレと闘いたいなら、今ココで闘えばいい。
ボクシングの商業主義にはもううんざりしていた。アポロ、クラバー、そしてドラコ…幾多の戦友の姿がロッキーの脳裏によぎる。みんな、使い捨てにされた。
ボクシングは、見知らぬ他人を殴って金に換えるスポーツじゃない。自分自身と闘うスポーツだ。
トミーとのストリート・ファイトに勝利したロッキーは、こうしてボクシングに背を向けるんであった。

『ロッキー・ザ・ファイナル』(2006)。前作から十数年、既にエイドリアンはこの世にいない。息子は父とは違う道を進み、不器用な父を少し疎ましくも思っている。
小さなイタリア料理屋を経営し、その店にはかつてのロッキーの勇姿を知る人々が集う。悪くない老後だ。もうすぐオレも逝くからな、エイドリアン…だが、ロッキーは再び立ち上がるのだ。
ナゼか? 不甲斐ない息子のため、実力はあるが自信の無い現チャンピオンにハッパをかけるため、それになによりオレのためだ。
ボクシングは、見知らぬ他人を殴って金に換えるスポーツじゃない。甘ったれた自分自身と闘うスポーツなのだ…!

振り返ってみれば、ロッキーが闘うのはいつも自分自身であった。チャンピオンになろうがアメリカ国旗を背負おうが、ロッキーは常に敗北者であった。敗北者たる己と、ロッキーは闘い続けてきたのだ。
そこには敗者の美学がある。『ロッキー』シリーズは負け犬の映画だ。負け犬が、しかしその殻を打ち破ろうと立ち上がる姿に、オレはずっとヤラれてきたんである。

アドニスがとにかくいけ好かない

http://www.worldstarhiphop.com
http://www.worldstarhiphop.com 殴り合いよりバラード歌ってる方が似合いそうなマイケル・B・ジョーダンです。

んで『クリード チャンプを継ぐ男』なんですが、なんだこの野郎、アドニス、マジいけすかねぇ!
なのアポロの隠し子? 幼少期を施設で喧嘩に明け暮れて過ごした? 知らねぇけどよ、お前アポロの未亡人に拾われて、超超特大豪邸に住んでるじゃねぇか。
一流の会社に勤めてよ、しかも入社そこそこで昇進だと? まぁアレだな、アポロの元カミさん、ってこたぁアドニスの義母だが、この人は相当手塩とカネかけてコイツを育て上げたんだろう。
このあたり映画では描かれないが、もしかすると一流企業の就職、そしてスピード昇進てぇのもこの義母が根回ししたのかもしれん。

『クロニクル』(2012)、『フルートベール駅で』(2013)のマイケル・B・ジョーダンが演じるアドニスは、まるでアイドルみたいなハンサムでスマートな男だ。
そうだな、イケメンR&Bグループのブルーのメンバーだとしてもおかしくはない。アメリカにジャニーズがありゃ、この人の枠が確実にあるだろう。
モテたハズだ。アタマもイイし仕事も出来るしカネもある。現に、ロッキーを頼ってフィラデルフィアにやって来てすぐにハイパーセクシーな恋人が出来る。
二人とも自分に自信があり、そして多くの人が二人を認めるだけのモノを持ってる。ロッキーとエイドリアンの、あの負け犬カップルとは大違いだ。

アドニスとゆー男には、全てがある。だが彼は満たされない。拳には自信があるからと、誰もが羨む生活を捨ててまでボクシングの道へ入る。
『クリード チャンプを継ぐ男』は『ロッキー』シリーズの新章という。監督は『フルートベール駅で』の新人ライアン・クーグラー、脚本はクーグラーとアーロン・コヴィントンの共作。製作には顔を出し、そしてもちろん出演もしてるが、スタローンがそれ以上関わった形跡はない。
だから、なにも『ロッキー』を引きずるコトはない。ココにはフィラデルフィアの廃墟も、冷凍倉庫での牛肉サンドバックもない。新しい『ロッキー』、いや『クリード』に、そんな貧乏臭い、敗北の味は必要なかったんだろう。

それがきっと、今の映画なのだ。今の映画なら今らしくやったらいい。懐古趣味なんかクソ食らえ。新しい物語の誕生に、祝杯でもあげてやれだ。
けれども、オレの『ロッキー』はもう無いと、その切ない思いは拭えない。
エイドリアンは死んだ、ポーリーも死んだ。『クリード』は『クリード』、もう『ロッキー』じゃなかったんである。

結論

http://www.morbidlyamusing.com
http://www.morbidlyamusing.com 闘う相手は自分自身だ!

オレはそんな風にこの映画を観ていた。つまるところそんな映画なんだと、半ば傷心、半ば苛立ち、半ば嘆きながら。
確かにそんな映画なんじゃないかと思う。こないだの『スターウォーズ フォースの覚醒』はオリジナル『スターウォーズ』(1977)のメンバー勢揃いで、ハリソン・フォード演じるハン・ソロが現れる場面は大いに盛り上がったし、ハナシの上でもハン・ソロが大活躍してた。
翻って『クリード』はどうだ。スタローン演じるロッキーは確かに出てくる。それもアドニスのトレーナー、とくりゃ映画の中の最重要人物だが、まったく恐ろしいまでにオーラが無い。どう見ても普通の下町のジジィで、この老ロッキーの登場シーンときたら素っ気無いコトこの上ないじゃないか。

今一度思い出される。この映画は『ロッキー』じゃない。『クリード』だ。そしてクリードの物語において、ロッキー/スタローンは単なる添え物であって然るべきだ。
老兵は死なず、ただ消え行くのみ。そんな言葉が、上映中何度となくアタマをよぎる映画だった。まぁ、オレん中では。

そろそろ結論を言ってやるが、『ロッキー』シリーズ新章、『クリード チャンプを継ぐ男』、この映画、オレ的2015年最大の大ケッ作である。
もう一度言うから耳をかっぽじってよく聞け。『クリード チャンプを継ぐ男』…大・大・大ケッ作である!

いやもうサイコーだよね! こんなにいけすかねぇお坊ちゃんのアドニスによぉ、こんな泣かされるとは思わないだろコノヤロー!
ボロ泣きだよ! そら泣けりゃイイ映画ってワケじゃねぇかもしんねぇけどよぉ、この映画の泣きはイイ映画の泣きなんだよ!
でもって、オレもやってやるぜってなるんだよ! 『ロッキー』じゃない! 『クリード』だ! だが! 『ロッキー』の魂は受け継いでるんだよぉぉぉ!

アドニスは確かにロッキーのよーな負け犬じゃない! むしろ正反対の男だ! 彼は今までの人生で一度も負けたコトがない!
そのアドニスが老いたロッキー、そして恋人のビアンカとの出会いで知る! 今までの人生、本当の意味で闘ったコトなど一度として無かったとゆーコトを!
そう、負けなくて、負け犬じゃなくて当たり前だ! ロッキーみたいに自分自身と闘ったコトなんて無かったんだから!

その事実に気付いてからアドニスの目が変わる! あどけなさの残るマイケル・B・ジョーダンのハンサム・フェイスにアポロ、そしてロッキーの目が宿る!
目の変化ッ! 『ロッキー』シリーズは目の変化の映画だ! アポロとの闘い、いや己との戦いを決意して変化する『ロッキー』でのロッキーの目! チャンプとしての誇りを凝り戻して変化する『ロッキー2』でのアポロの目! ロッキーとの闘いを通して人間としての意志に目覚めた『ロッキー4』でのドラコの目の変化…そんなモノが、『クリード』にはシッカリと刻み込まれてる!

『クリード』がどうスバラシイかといやぁ、少なくともオレにはその点だけで充分に思える。
1カット長回しのファイトシーンとかスゴイとは思うが、サントラもサイコーに感動的な出来映えだと思うが、それ以上言うのは野暮ってヤツで、だいたいこの類の映画はどう言葉を弄そうが良さの伝わるもんでもない。
ただサイコー、それだけ言えば済む映画もある! あるいはそれが、イイ映画の条件なんだろう!

魂の引継ぎと世代交代がテーマのこの映画、製作は『ロッキー』のチャートフ・ウィンクラー・プロダクションで、シリーズ通してのプロデューサー、アーウィン・ウィンクラーとロバート・チャートフの名が、コチラもプロデューサーであるそれぞれの息子チャールズ・ウィンクラー、デヴィッド・ウィンクラー、ウィリアム・チャートフと共にクレジットされてる。
スタッフロールで知ったが、ロバート・チャートフ、この映画の製作中に亡くなってたんである。そしてスタローンの息子セイジもまた、製作に入る直前に亡くなっていたという。

もうなにも言うまい。とにかく、少なくともオレにとっては一生の宝物の一つになった映画が『クリード チャンプを継ぐ男』なのだ!

追記(翌朝):いややっぱそれは言いすぎだろと思うが、観た直後は冷静にモノを考えられなくなる映画なのだ。

(文・さわだきんたま)

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駄作駄作とかねてより言われている。
だが、人生山あれば谷もある。仮に駄作だとしても、いや駄作だからこそ、ロッキーとゆー男を知るに欠かせない必見作なのだ。
『ロッキー5 最後のドラマ』なくしてロッキー/スタローンは語れない!

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