クラシック・ドキュメント『ロイヤル・コンセルトヘボウ』をヘボっと観た!

ヘボゥ! ってゆーと漫画の擬音みたいであるが、ロイヤル・コンセルトヘボウはオランダのオーケストラです。語感が気に入ったので観に行きました。どんなオーケストラかは知らん。
この映画、『ロイヤル・コンセルトヘボウ オーケストラがやって来る』、創立125周年を記念してワールドツアーに出たコンセルトヘボウ楽団のドキュメンタリー。ツアーにカメラが同行して、公演の様子とか楽団員の素顔とか来てるお客さんにスポットライト当てたりする。

平日昼の回に観たが、結構お客さんいる。暇を持て余した高級趣味のご婦人方か。ハイソか。しかしそのワリにはガサゴソガサゴソとビニール袋鳴らしてなんか食ってたり、開始5分でイビキを立てて爆睡に入ったオッサンもいた。クラシックのドキュメンタリー映画にあんま教養の無さそうなオッサンが来るコトに、逆に日本人の無駄な文化水準の高さを感じた次第なんであった。

http://www.nziff.co.nz
http://www.nziff.co.nz シンバルの人。

映画は打楽器奏者のヘルマンさんから始まる。無人のコンサートホールに佇むヘルマンさん。「シンバルは最後の最後までじっと座って耐える。やがて時が来る。立ち上がる。そして…」シーンは公演の場面に切り替わって、バーン!なるほど、シンバル大事。あんま使わないけど超大事。
そんなコト改めて思うほどにはクラシック素人です。

はて打楽器奏者から始まるくらいなので、あんま大仰な作りでない。リハ中の楽団員の何気ない表情を捉えたり、普通のお客さんの普通のハナシ聞いたりする。コンセルトヘボウ楽団、どっかの雑誌でNO1オーケストラの栄誉を頂いたらしいが、だからといってコンセルトヘボウ激アゲ映画では全くないのだ。
画面に映るコトが淡白なら構成も淡白で、楽団のとても大したコトない舞台裏、大したコトないインタビュー、公演風景、公演の開催された都市の風景を一定のリズムで刻むだけ。劇伴もない。音楽が鳴り響くのは公演のシーンだけだ。あのシンバルみたいに、耐えて耐えて一点で一気に爆発する映画なんである。

それだけに楽団の演奏ときたらまったくもって素晴しく…と言いたいが、クラシック耳が出来てないんでどこがどうスゴイ演奏なのか皆目不明なのだった。
この正直な告白はむしろ素直さの表れとして評価して頂きたい。だって、わかんないもんはわかんないもん! 気取って知ったかぶった薀蓄垂れるよりゃマシだろ!
正直ついでに言うが、とにかく寝まくったので全体の半分も観ていない。このブログでは何度も繰り返し申し上げているが、断じてつまらないから寝るのではない。寝るから寝るのであって、理由などない。俺はバイト先で接客中に立ちながら寝てクビになりかけた人間なんである。

いやそんなコトはどうでもいい。映画のハナシ。いやまぁ寝てた人間が言っても説得力は全く無いんであるが、あんま面白い映画じゃないのだった。
あんま面白くはないが、ただとっても心地よい映画ではある。寝てた寝てたゆーてるが、映画館における俺の睡眠とゆーのは常に半覚醒状態で為されるので、画面になにか映ってるのは分かるし音も聴こえるし、でもその意味は一切理解できないとゆー、そんな感じである。

言ってみれば、言語化される以前の感覚。ラカン風のインテリ用語でいえば象徴界に参入する以前の幼児の目である。想像的映画体験? いや、コンセルトヘボウ楽団を現代NO1と評したのはグラモフォン誌である。フリードリヒ・キットラーのあの晦渋な『グラモフォン・フィルム・タイプライター』では、グラモフォン(蓄音機)が発する音はラカンの言うリアル、つまり意味に回収されえないありのままの現実、我々が触れるコトのできないナマの現実であるとされていた。従って『ロイヤル・コンセルトヘボウ オーケストラがやってくる』、この映画は確かに人を象徴界のくびきから解放する原・映画と言えるだろう!

…要するに、気持ちイイ映画だった。

http://www.thewholenote.com
http://www.thewholenote.com
http://www.filmvandaag.nl
http://www.filmvandaag.nl いろんな人がコンサートに来ます。

他愛の無いスケッチが延々続くこの映画ですが、ラスト、ジジィのお客さんにインタビューする。クラシックとの出会い、好きな曲とか語るジジィ。ふーんて感じであるが、唐突に衝撃の事実発覚。「私は収容所から出てきた後にね…」
その時点でもなお半覚醒半睡眠だったんでジジィの過去に一体なにがあったのかは知らんが、とにかくこのジジィ、激動の人生を歩んできたらしいんである。
しかしだからといって、映画はジジィの人生に深くは立ち入らない。場面変わって、コンセルトヘボウのロシア公演。マーラーの曲。静かに演奏に聴き入るジジィの表情をカメラが捉える。色々あったに違いない。色んな思いが去来したに違いない。まぁ、知らないけど、なにかこうグっとくる。

ものすごく大した映画じゃないんである。大した人は一人も出てこないんである。大したことないが、しかし各人各々の抱えるもんがあるんである。
そんなワケで、ロクに観てもいないくせになんとなく感動させられてまった。雄弁に語るよりも、深層に触れようとするよりも多くを物語る画ってのはある。コンセルトヘボウ楽団がただ淡々と演奏してるコトに、パンピーのお客さんが静かに聴いてるコトに、なにか感動が宿るんである。
これがアウラってヤツか? 知らんが、感動的なドキュメントには違いないのだ。感動的に作られてない分だけ、感動的なのだ。

俺にとっては久々の映画館で観る映画だった。一ヶ月くらい映画館行ってなかったが、まぁその間に色々あった。結構タイヘンだったのだ。
隣に座ってるヤツはそんな事情知らない。俺も隣のヤツの事情は知らない。けれどもソイツだってなんか色々思うトコあったりすんだろな。
最後の最後までイビキを立てて寝てたオッサンの客(ついでに言っとくが、俺も寝るがイビキは立てません!)、果たしてコイツにどんな人生があるか知らんが、それさえ映画の一部、コンセルトヘボウ楽団の演奏の一部となって面白く感じたもんだ。
「うるせぇな…」みたいな他のお客さんの声が聞こえてきたが、そのピリピリ感すら映画の一部だ。そう考えれば、まことマジカルな映画といえよう。

演奏が終わって、映画が終わって、同じ場所で同じ時間を(イビキのオッサン以外)静かに共有してきた映画の観客たちは、そのまま無言で席を立って渋谷の街に散り散りになっていく。
そんな当たり前の光景がなにやら詩情を纏って見えたんだから、あんま面白くはなかったが、少なくとも俺にとってはイイ映画ではあったのだ。

(文・さわだきんたま)

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こんな映画もあったよな、と思って貼ったが観てない。でもあんま面白くなさそうだな。

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さるこ

こんにちは、はじめまして。音楽ドキュメンタリーは、音楽聴いて、時々半眠りするのが心地よいです。このテの映画、何でか見に行ってしまいます。

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