マンション住んだら呪われた!『残穢 住んではいけない部屋』コワかったぞ感想!

好奇心は猫をも殺す。カワイコちゃん風ではあるがあんま友達いなさそう(ミステリー研究部所属)な女子大生の橋本愛がマンションで一人暮らしを始めたところ、ススー…ススー…っとなにやら和室から畳を擦るような音が聞こえる。
振り返ると音は消える。なにもない、誰もいない。だが和室に背を向けるとススー…ススー…なんか気味悪いんで一旦ふすまを閉じてみる。ススー…ススー…っと音は続く。怖い。が、気になる。よせばいいのにガラっとふすまを開けてみると、一瞬着物みたいのが見えた! ほげー!

たぶんリア充っぽい友達に相談すれば「えー! 引越しなよー! てかウチ来る? 怖いなら泊めてあげるよ?」的な展開になって円満に解決しそうではあるが、友達のいなさそう(ミステリー研究部所属)な橋本愛は根暗の実話怪談作家(気持ち宮部みゆき風)の竹内結子に手紙で相談してみる。
ふんふん、それは面白い話ですね…分かりました橋本さん、調査をしてみて下さい。きっと前の住民が自殺したとかなにか原因があるハズです。
かくして、竹内結子のあんま参考にならなそうな助言を真に受けてしまった橋本愛はミステリー研究部としての無駄な矜持とそれはなにか別の方向に役立てた方がいいんじゃないかな的なリサーチ力を発揮して幽霊マンションの謎に迫る。で、もっと恐ろしいコトに巻き込まれてまうんである。好奇心は猫をも殺すのだっ!

http://zang-e.jp/
http://zang-e.jp/ しかし、件の音のする和室の電気を橋本愛はいつも消してるんであるが、いや消すなよと思う。電気つけっぱにして大音量でエグザイル流してネット動画でも見てろっての。

はて、『残穢 住んではいけない部屋』とゆー映画は、コワい。劇伴なんてほとんど無く、静かに進む。コワい。展開に抑揚が無く、淡々と進む。コワい。オバケを中々見せず、実際現れんのは最後の最後ぐらいでやっと。コレも、コワい。
タイクツと言えば結構タイクツで、実際かなり中だるみするんで途中で寝たりしたんであるが(懲りない)、さしたる見せ場もドラマもないまま幽霊マンションの負の歴史、負の連鎖だけが蓄積・拡大していく作りは、タイクツだがとっても不気味だったりすんである。

むしろ、タイクツだからこそコワい。ワーとかギャーとか誰も叫ばない。橋本愛も竹内結子も終始無表情で、会話らしい会話すらロクにしない。彼女らを含め、やたらと多い登場人物が無表情に語るのはただただ幽霊マンション+αの歴史だけ。
モノの分かった評論家風情なら「人間が描けてない!」と怒るトコだろが…けれども人間がいないからコワいのだ。存在を剥奪された空っぽの生き人形の如し人々は、主体的に動いているようでいて呪いの関係、その規則に突き動かされている。自分の意思などどこにもなかった。自律した能動的な生きた人間などハナっから一人もいなかった。

そのようなコワさとゆーのはたぶん、『リング』(1998)の、あのビデオテープに刻印されて繰り返し再生される怨念であり、『回路』(2000)のデジタルに変換された人間だったもの(生霊? 怨霊? きっと単なる0と1の集合体じゃなかろか)であるところのコワさじゃなかろか。
公衆電話、固定電話、郊外のマンション、田舎の親戚の古びた家…と道具立てはまったく、コレ本当に現代のハナシかいなと思うぐらい古臭かったりするが、橋本愛の手紙(この時代に!)から始まるこの映画、ラスト近くで怨念がPCディスプレイ越しに伝達されるに至って、遠い過去から現代までを局所的に支配してきた一つの呪いの規則が情報伝達の高速化と広範化によって際限なく拡散し、誰もが空っぽの生き人形であるコトを容赦なく暴露してしまう、その現代的といえばとても現代的なオバケ論・恐怖論に辿り着く。

その地平から眺めたときに見えるのは、『回路』で描かれたような意志と本質を兼ね備えた存在としての人間の終焉とあって、コレは確かにコワい、とってもコワい映画なんであった(しかし『残穢』は救いの道を一つ用意するんではあるが!)

http://zang-e.jp/
http://zang-e.jp/ 佐々木蔵之介がちょっとエキセントリックな作家役で出て、一人だけ演技で気を吐く。ちなみに役名は平岡芳明というが、これたぶん平山夢明のことだろな。

監督の中村義洋とゆーと井坂幸太郎原作の映画ばっかやってる人みたいなイメージあり、去年観た監督作『予告犯』(2015)が相当ヒデェ映画だったので(※故人…いや個人の感想です)こいつマジ使えねぇなロクでもねぇなと無礼にも思ってたが、この人はそーゆー原作モノ映画よりOV『ほんとにあった! 呪いのビデオ』シリーズを始めとしてホラー映画監督としてのキャリアのが長かったんである。
オバケの造形、たとえば影みたいになったオバケが身をくねらせてゆっくり地を這ってくるとか、スーパー使い古された手。悪く言えば全く面白味がないが、良く言えばこなれていて、ソツが無いって感じ。
全体としてそんな具合で、定石から外れるようなトコが全く無い分だけ、それなりにツボも外さないのだった。中村義洋とはどうも本来そーゆー人らしい。

安っぽくて手垢のついたオバケ自体もホラー演出もそんなコワくない、そして作りもオーソドックス極まりないのに、やたらとコワい感じあったのは、逆に考えてみればその職人的というか、完全にパッケージされた100均商品的インスタントな作りゆえなんじゃなかろか、と思う。
つまりココにはなにか逸脱するような、突出したようなもんは何もなく、出てくる俳優さんはおろか作り手のいかなるメッセージもコダワリもあるいは何らかの嗜好や思考や感情も、何一つ汲み取ることができない。全てが鋳型の中に収まった大量生産可能な映画であり、それ以外のなにものでもない。
少なくとも、俺にはそう見えたのだ。そしてその匿名的な作劇が、実話怪談作家の竹内結子が投稿者の恐怖体験をAさんBさんと匿名で雑誌に書き綴るとゆーのはなにやら象徴的なんではあるが、あの空っぽの生き人形の如き登場人物たちに、それが語る表層しかない呪いの歴史に、この『残穢』とゆー物語になにか意図せぬ迫力と説得力を与えてまってるよーに思えるんである。

これは逆に、面白い映画衝撃的な映画メッセージのつまった映画なんかを作ろうと腐心する映画作家には絶対に出せないコワさなんじゃなかろか。
とどのつまりは、悲劇の天才画家の描いた執念の幽霊画を骨董屋で買ったら呪われた、なんてコワさじゃなく、コンビニで売ってる安いボールペンを何気なく買ったら理由もなく呪われた、とゆー類のコワさであり、それは確かに現代のリアリティだとも思うのだ。
現代の呪いのビデオは禍々しい体裁すらとっておらず、だからこそ全然恐ろしくないのに、とっても恐ろしいってなワケなんであった。

(文・さわだきんたま)

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感覚的には『リング』と地続きの映画なのだ、『残穢』は。
作りもこう、なんとなく似てるな。

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