婚活地獄映画『ロブスター』は『大日本人』だった的な説を唱える感想

なんや架空の世界があり、そこでは適齢期過ぎても独身の男女は強制婚活収容所に送られる。期間内に晴れてカップル成立すりゃ釈放、ダメだったら改造手術で動物にされます。それが『ロブスター』って映画。仮面ライダーみたい。
んでその収容所に送られた主人公の独身中年コリン・ファレル、結婚できなかったら何になりたいすかって所長から希望聞かれる。はい、ロブスターになりたいです。…ロブスター? はい、ロブスターです、やたら寿命長いし、平和に暮らせそうだし。こうして『ロブスター』なる謎タイトルの意味が判明。なるほど。

しかしアレだな、この所長が言うには婚活に失敗したモテない人はみんな犬になりたがるんで世界中が犬で溢れかえってるらしいが、なんで犬かね。
リードに繋がれて自由に外歩けないし、やたら変な芸仕込まれるし、犬ぞり用にでもスカウトされたら超重労働の日々だぞ。
猫になりゃいいじゃん、猫。猫とかすげー自由じゃん。むしろ飼い主が猫の奴隷じゃん。それ、超楽しそうなのに。

『ロブスター』がなんの話かとゆーと、要するに不自由な犬か自由な猫かと、そんな話なのだった。
この世界じゃみんな転生動物に犬を選んでるんで、孤独な自由より絆の不自由がいいよねとみんな思ってる(らしい)。ほんじゃロブスターに転生したい猫派的なコリン・ファレルはどうなりますか、地獄の婚活と色んな男性女性との出会いを通してまだロブスターになりたいと願いますか、それとも犬になりたいと願いますか、とゆーことになる。

うーむ、愛の寓話ですなぁ。

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ところでこの映画、ラジオで町山智浩さんが紹介してたが、ぶっちゃけそこで語られる以上のコトは無いとゆーか、町山ナビゲートによくある「お前の語りの方が映画本編より面白いよ!」的な映画なんであった。
たぶんyoutubeに上がってるだろうが、面白く観たいならあんま事前に聴くのオススメしない。いや別に聴かないで観てもあんま面白くないかもしれんけど。

んで、町山さんこの映画のこと「松本人志みたいですね!」とかなんとか言ってたが(この時点で観る気失せる人いるに違いない)、なんか色んな意味でさすがの的確っぷりだと思ったなぁ。
コレ、松本人志の映画だ。居心地の悪い間と唐突なブラックユーモア、ドライな哀愁のスカした笑い、あと「この発想お前ら凡人にないだろwww」的な気取った奇想。コレ完全に松本人志の映画だ!
処女作のOV『頭頭』(1993)から『R100』(2013)までの監督作は全て、しかも劇場公開作品はちゃんと封切り時に映画館で観てる俺の言葉なんで信用して頂きたい。なおかつ松本人志のファンでもなければどの映画もさして面白いと思わなかった俺が言ってんだからな!

とにかく、松本人志映画成分が強すぎる。強制婚活収容所の舞台設定は捕えられた浪人が強制的にギャグをさせられ続ける『さや侍』(2011)を彷彿とさせ、非モテ男がロブスターになるというアイディアは『頭頭』における海で捕獲される親父のハゲ頭が珍味として流通するというアイディアと酷似している。収容にあたってコリン・ファレルが個人面談を受ける場面の気まずい空気に、松本人志プロデュースのテレビ番組『働くおっさん人形』及び続編の『働くおっさん劇場』、更にはその前身にあたる『モーニングビッグ対談』を想起する人間もいるかもしれない。
だがそれだけではない。『ロブスター』の冒頭は山間の道に車を走らせる女の車内からのロングカットで、なにやら思わせぶりなムードを漂わせてるが、松本人志の『しんぼる』(2009)でも車で荒野を爆走する女のやたら長くて思わせぶりなシーンが最序盤に挿入されるのだ!

もはや、疑う余地はないだろう…『ロブスター』、この映画、完全に松本人志をパクっている…!
いや、パクってないにしても芸風が丸被りしてるのは間違いない。
『ロブスター』はカンヌで審査員賞を受賞したという。俺は別に松本人志のファンではないが、ならば大して面白くはなかったが松本人志の映画の中では最高傑作だろうと個人的に考えている『R100』はパルムドールだろう。『大日本人』(2007)ならヴェネチアもいける!

…いや、つまりさ、そういう映画だってことだよ。松本人志映画スゲェって言いたいんじゃなくて、『ロブスター』ってそんぐらいの映画だってコトだよ。
俺は別に、松本人志のファンじゃないんだよ!

んで、なんかあんま面白くなかったのがさぁ、すげー単調なトコなんだよ。途中までは次々出てくるヘンテコ設定見てるだけで面白いんだけど、最後まで同じトーンでやられるとさすがに飽きてくるよなぁと。
基本はカメラ固定で若干長回し気味。つーと、シュールでオフビートな悲喜劇ってトコも含めてロイ・アンダーソンの映画とかに似てる感じもあるが、画の一つ一つが作り込まれてて超単調なのに飽きない(いや俺は)アッチと違って『ロブスター』はそこまで画に凝ってたりしないんで、それで最後までローテンションだとダラダラした印象ばっか残ったりってワケで。

つかストーリーもそんな面白くなかったな。なんつーんだろな、ヘンテコ設定出してはポイして出してはポイしてみたいな感じで、そんなに展開に絡めてくんないの。単にそういうのが当たり前の世界の話なんでっつって、妙な設定で普通のストーリーを展開するシュールさみたいの楽しんでくれってコトなのかもしんないけど、俺はなんかノレなかった。

いやノレなかったっていうか、そこもっと見せてよ! って感じか。
婚活収容所でコリン・ファレルはいかにもなモテない人たちと仲良くなる。一人はベン・ウィショーで、この人は結構イケメンだったりするが自己アピールのためのスピーチで「足が悪いのが僕の特徴です」とか言ったりする。いや別に足が悪くてもなんも問題ないと思うが、自己アピールなんだから他にも言うべき長所いっぱいあるだろとモテなさをアピール。んでもう一人はジョン・C・ライリー。この人はとくに説明しなくても絶対にモテない。
こんなモテない人たちと今回は小太りヒゲ面のコリン・ファレルがどうしたらモテるか会議したりする。これは笑う。そして泣く。今までモテた試しもこれからモテる兆しも皆無の俺としては実にグっとくるトコだった。
…のだが、コイツらどうなるんだろうと思ったら話は全然違う方向に飛んでって、ほとんど振り返りもしない。ワリと、そんなコトが続く映画なのだ。

アレだな、だから場面場面は面白いんだけど、通して観るとなんとなく退屈。こらまた松本人志の映画もだいたいそうだと思うんで、ホントよー似てる。松本人志の映画とかクソだろって思ってる人はたぶんつまんないんじゃないすか、コレ。
あ、でもコリン・ファレルとかやっぱ良かったよ。チョイ役のジョン・C・ライリーも最高。そんでなんつってもリア充社会に抗う非リア充レジスタンスのリーダー、レア・セドゥ! 超カッチョイイ! 俺も「赤の性交の刑」に処してくださいッ!

なんかそんな映画だったな、『ロブスター』。で、俺は松本人志の映画もそれなりに楽しめる人なんで、さんざん文句言ってるワリに嫌いじゃないのだ…。

(文・さわだきんたま)

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待てよ、愛の寓話といえば…『R100』ではないか! 面白いんだぞ『R100』! いや、やっぱそんな面白くないが…その微妙さ、やっぱ好き。

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