映画『レヴェナント 蘇りし者』、俺は嫌いだったって感想(ネタバレなし)

《推定睡眠時間:数回計6分程度》

アレハンドロ・ゴンザレス・イニュリトゥ(以下アレゴ)の映画は肌に合わないので当たり前のよーに今回もあんまノレない。そもそも上映時間2時間半の時点でだいぶノレない。
だったら観るんじゃねぇよ、と思う人は訓練が足らない。あらかじめノレないだろうと思っておくことで実際につまんなくてもダメージも怒りも一切なく、文句は言うが今は至って穏やかな心境である。
『レヴェナント 蘇りし者』とゆー映画は俺にとってはあんま面白くない映画だったが、そのような体験を通して解脱への階段をまた一歩上った気がするので、まぁ無駄な映画とゆーものは世に存在せんっちゅーことですな(映画を観るってなに? と思わずにはいられない)

そんなワケで熊に襲われてクマった人の映画の悪口感想です。

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まぁしかしアレゴの映画だなぁと思うよなこれは。一応『バードマン あるいは(無知がもたらす予期せぬ奇跡)』(2014)も観てるとはいえ俺ん中でのアレゴ基本認識は『バベル』(2006)ぐらいで止まってるんで、未だに鬱屈を抱えた汚い庶民どものバイオレンス気味群像劇をやる人のイメージ。
そんなワケで、え、クマとディカプリオが闘う映画? …レオナルド熊? と意外な感じあったが、実際観てみるとアレゴ成分120%だった。

作家の全ては処女作に出るとゆーから基本的には『アモーレス・ペロス』(2000)が『レヴェナント』でも繰り返されることになる。確執を抱えた父子の断絶、泥まみれの復讐、複雑に入り乱れて一点で爆発する人間関係、荒涼とした大地に放り出された人間、神話とエスニシティ、死と救済、などなど。これは『21グラム』(2003)でも『バベル』でも『バードマン』でもずっとやってる。
俺がアレゴ映画で一番面白かったのは『BIUTIFUL ビューティフル』(2010)だったが、あの映画のラストカットなんて『レヴェナント』でもそのまま使い回してた(ネタバレになるから言わないけど)。『バードマン』に出てきた隕石の画も引き続き出てくる。
この人は引き出しが少ない。作家なんてそんなもんだろが。

しかし素材の選択なんてもんはどだい限りがあるんだからなんでもいいと言えるが、何回同じもん題材にしてもええだろと思うが、やっぱこの人合わんなと思うのは調理法の方で、まぁとにかく素材を自分好みにコントロールしようとする。素材そのままの味で絶対勝負しようとしない。それが俺にはすごく合わない。
たとえば『アモーレス・ペロス』でのテレビを見ていた登場人物がそれを点けっ放しにして部屋を出て行く、するとカメラはテレビ画面にじーっと寄ってってやがてテレビに映ってる登場人物のエピソードになる、なんて繋ぎが典型的だったりする。
これはあざとい。あざといし、ちょっと安易すぎるんじゃないか。この人の場合はその安易な作為が前面に出すぎていて役者さんの演技とかストレートな映像やお話の面白さを押さえつけてしまってる気がすんのだ、俺には。

『レヴェナント』は最近大人気らしい(『赤い薔薇ソースの伝説』(1992)の!)エマニュエル・ルベツキの撮影で、なにを撮るかといえばクマの映画だから森やら川やら山やらの大自然を撮りまくる。
その画の一つ一つがうるさい。わざとらしい。木々の間からこれ見よがしに溢れ出る光は詩情もなんもない。極端に誇張されたコントラストはオレンジとブルーの補色コンビをしつこく見せつける。カメラに飛び散る血の赤、冷えた呼吸の白…うるさい!
色を失った雪原に点在する焚き火の鮮烈なオレンジ。いったい何回このあざとい画を最近のハリウッド映画で観ただろう? 人智の及ばぬはずの大森林は、その局所的不均衡など少しも意識されず傲慢にもシンメトリーを形成するのだ…。

いや、スタイリッシュじゃんてのは大いに賛成すよ。スタイリッシュで超かっけーよこの映画の画。ルベツキすげー! …だから今回イヤだったのはさぁ、それをリアルな映像として提示しようとしてるとこなんだよ。いつものアレゴ映画よりもっとセコイ作りだ。
ナマの自然なんてのは到底カメラに収めきれぬものだとしても、それに挑む気すらハナっからサラサラ無い。大自然の中で人間なんて所詮ちっぽけなもんさ、なんてストーリーを語りつつ自然を徹底的にコントロールできるものとして映画を作ってる。イメージに合わせて成形された偽りの美しい自然をリアリティとして語ってる。すごい面の皮厚くないこの人?

早い話が予定調和的だって言える。いつもと同じことやってる脚本もうそ臭い画作りも予定調和もいいとこ。
ことによると宗教的バックボーンも影響してるのかもしんない。いやアレゴがどんな宗教観持ってるか知らんが、すべてはあるべきところに収まるもんだと思ってるフシがある。ほんで誰がそのあるべき所を決めるかっつーと、作品にとっての神であるアレゴ自身なんすよ。
あぁイヤなヤツだ…(※個人のクソ意見です)

レオナルド・ディカプリオが『ウルフ・オブ・ウォールストリート』(2013)に続いて呻き這いずり芸を披露。ふごぉぉぉぉ! くぎゅぅぅぅぅ! と地獄の呻き声でヨダレだらだら垂らしながら這いずる。
ちょっと可哀想な気がしたのはなんせアチラの呻き這いずりが笑えるシーンだったんで、そのイメージに引きずられてコチラの呻き這いずりもちょっと笑いそうになってまった。
それを言ったらクマとの死闘で確実に脊髄やられてんだろこれと見せかけつつ死の淵から復活、這いずって這いずってやがて立ち上がりターミネーター的戦闘マシーンと化すあたりもそんなわけねぇだろと笑いそうな気もするが、雪原をメキシコの荒野に変える空回りを厭わぬ大熱演でなんとなく納得させられてまうからディカプリオはすごい。
しかし『BIUTIFUL ビューティフル』のハビエル・バルデムのよーにアレゴの強固なコントロールを突破するだけの破壊的存在感はあったかと言われるとそうでもない気がすんので、やっぱディカプリオは損な役回り引き受けたなぁと思うのだった。

はてルベツキの撮影といえばアレゴと同じくメキシコ出身のアルフォンソ・キュアロンの『ゼロ・グラビティ』(2013)がどうしても頭に浮かぶ。そういえばキュアロンの『トゥモロー・ワールド』(2006)もルベツキ撮影だったらしいが、あぁいう映画だとこの映画で感じたイヤな感じは全然無かったんで、この人は自然より宇宙とか未来とかSF的な(つまりは過度なデザインが嫌味にならない)空間の造形のが向いてるんだろうと思う。
それはさておき『ゼロ・グラビティ』も這いずって呼吸して立ち上がる映画なのだった。こう、メキシコ系監督の何か共通するイメージなんかね。プリミティブな生の称揚みたいの(ちなみに、アレゴ映画ではそもそも『アモーレス・ペロス』の時点で這いずりは導入されていた)

あるいは死の容赦なさ。『ゼロ・グラビティ』のスペースデプリ襲撃シーンは『レヴェナント』のネイティブ襲撃シーンと比すこともできる。どこに違いがあるかと言えば映像の設計において、『ゼロ・グラビティ』は無駄なものを画面に入れることで現実のカオティックな相貌を到底到達できぬとしても露にしようとする。他方、『レヴェナント』の襲撃シーンはアレゴが欲しいものしか画面に入れようとしない。
コントロールされたカオスはカオス足りうるだろか。俺は、この場面はまったく大したものだと思えなかった。ただ死ぬべきヤツが死んで生きるべきヤツが生きる、そのためだけに挿入されたシーンだ。緊張感もクソもない。

実話を基にしてるとはいえアレゴの映画なんでこれは神話で幽霊譚でもあんだろな。アレゴ映画において生者と死者の垣根は限りなく低く分かち難く繋がる。
その群像劇的な作りを見るに生と死の相補的な、円環的なエコノミーといったもんをたぶんこの人は描き出そうとしている。誰かの生は誰かの死であり、誰かの死は誰かの生に繋がる。そのようなもんを描こうとしてる。
けれども俺がそこに少しの迫真性も感じないのは例の予定調和があるからで、たとえば『バベル』は世界中に分散した悲劇を遡行していくと一つの原悲劇に辿りつき『21グラム』はある人物の最終的な救済が冒頭であらかじめ提示された上で救済に集約される複数の死の過程が描かれる。

ここでは死が一つのパーツでしかない。いやそもそも、ディカプリオ以外の登場人物は全てパーツでしかない。人工的に構築された自然の中で『レヴェナント』の登場人物たちは死の天使ディカプリオの復讐と救済にその死でもって奉仕する。
そしてそのお話の中でディカプリオが獣と化していくことでの美化された自然との融合は、ディカプリオの行為に作られた正当性を与えんのだ。ディカプリオの復讐相手には少しの言い訳さえ認めずに。
生と死の極限、なんてお話では少しも無い。ここに自然は少しも無い。現実だって少しも無い。

さすがに長いんで中だるみ感はあったが『レヴェナント』は美しい映像の堪能できるドキドキハラハラのとてもおもしろい映画だったなぁ。
プロダクション・デザインはポール・トーマス・アンダーソン組のジャック・フィスク、とても渋い良いお仕事っぷり。音楽は坂本龍一か。これもちょっと主張が強くてうるさすぎる気もしたが曲はカッコよかったなぁ。
…でも俺はそんなワケで、かなり嫌いな映画だったんだよこれは!

(文・さわだきんたま)

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こーゆー映画撮るんならその前に100回ぐらい観とけよアレゴこの野郎と思うのはアルトマンの『ギャンブラー』(1971)とかヘルツォークの『アギーレ/神の怒り』(1972)だったりするが、それはさておき雪原サバイバルっつーと最近のコレは『レヴェナント』よりずっと面白く感じたし真摯な作りだと思ったね。
なんつーか、アレゴ映画は言い訳がましいんだよ。でもこれはそーゆーことなかったんだよ。2時間以内でちゃんと終わるしな!

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