映画『Sharing』の感想をシェアしたい(ネタバレもクソもなし)

《推定睡眠時間:10分》

予知夢! 分身! シェア! テロ! 原発! 終末! …こう、現代的テーマを全部まとめてぶち込んだらいいじゃないみたいな闇鍋低予算映画です。
スタビライザー付けたカメラで主人公の心理学教授が走るのを追う場面があるが、荒波に乗り出したかと錯覚するレベルでグワングワン揺れまくり船酔い気分。
あれは、操作に習熟した人が使えば浮遊するよーな映像が撮れてとても面白いが、扱いが難しいので慣れない人が使うとこんな風に上下左右に揺れまくって目も当てられないことになる。
たぶん映画学校の学生がカメラマンなんだろうなぁ。もう、細かいことはどうでもいいからとにかくショッキングな現代的テーマを全部盛り込んで即席で撮ってしまえみたいな、エクスプロイテーション精神と活動家精神と実験精神の入り混じった系。

こーゆーのある意味で若松孝二っぽいのかもしんないが、観たのが若松孝二を看取った映画館テアトル新宿だったんで縁を感じる。
だからと言って別になんとも思わないので、とりあえず安いなぁとゆーのがまず出てくる感想なのだった。

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テアトル新宿の映画なのでこれ観に行くインディーズ邦画に慣れたよく訓練された観客はあらかじめ安さ除外フィルターがかかってると思うが、そんな方々に無粋と言われようがなんだろうが安いもんは安いんだから仕方が無い。
内容の真面目さもあってなにより先に安いなぁと言うと関係者から憎まれそうな気もするが、そんなもん俺だってH・G・ルイスの映画大好きだけど高級だなんて一度も思ったことないんだから分かって頂きたい。
…なんで軽い謝罪から入ったかとゆーと、この手のインディーズ邦画は感想書く人間の母数が少ない上みんな大っぴらに文句言わないから関係者がエゴサするとすぐ引っかかって角が立つんだよ! 読んでる人はそのあたり大いに汲んでくださいね!

ほんで、でも安い安い言ってますけど、安いなら安いなりに面白い感じはあったなこれは。
いやホント、ロケがほぼ立教大学オンリーの上に技術レベルはそんな高い感じじゃないんで学生の実習だろこれみたいな安さなんですけど、半ドキュメンタリー的とゆーか、アウトテイクでもそのまま使っちゃえよみたいな即興っぽい感じあったんでそこちょっとだけ面白いよな。
演劇部の学生が卒業公演の稽古をする場面があるが、こーゆー作りなので劇中劇の芝居とそれを演じる映画の中のキャラクターの芝居との境が無い。っていうか実際の稽古風景そのまま撮ったんじゃないのぐらいな感じあり、軽く現実が揺らぐ。
あれだろ、ゴダールだって予算無くてああなったんだから金が無いのは武器にもなるのだ!(ちなみに最近それを実感したのは『孤高の遠吠』(2015)だった)

それを先に面白い点として挙げてまうとだからなんやねん結局安いだけじゃねぇかと言われかねないが、不思議なお話もええんじゃないの。
なんかね、311で夫(恋人?)を失った心理学教授がおって、この人が311の予知夢を見たと言い張る人たちを研究してるワケです。
それは後から作られた虚偽記憶じゃないかと。うーん、何かその、自分は被災してないのに被災者の感情をシェアしてまう心理状態とはなんなのかと、そのよーなことを研究してるワケです。
ほんで、この人が籍を置く大学に311をテーマにした演劇をやろうとしてる学生がおって、他方自我の分裂を経験しながらテロを画策する学生もおって、こーゆー人たちの運命が徐々に混じり合ってくと、そーゆーお話。

ほら、なんとなく面白そうでしょ? いやまぁ、それで面白そうだなと思って訓練されてない人が観に行くとなんだよこれ安過ぎんだろと怒り出すのも想像に難くないが…汲め! 色々と!

俺が観たのは111分ぐらいのロングバージョンで、90分ぐらいのアナザーバージョンもあるとか。
これはでもロングバージョンはさぁ、撮ってる人は映画学校の講師とかだけど授業で生徒にこんな脚本出されたら絶対ダメ出しするだろとはちょっと思うぞ。
…かったるい…かったるいし取り留めないしメチャクチャ思い切りが悪い…そう思う人に向けて恐らくはより商業的なアナザーバージョンがあるんだと思うが、それはそれでキッチリ別料金取るってのはプロの映画監督としてどうなんだ。劇場公開版がディレクターズカットだ、とジョン・カーペンターが言ってたぞ…。

ほんで、これはもう真面目も真面目なお話で、冒頭からして「それで、あなたは福島原発が爆発する夢を見たわけですね」「福島原発じゃありません! 東京電力福島第一原発です!」なんて会話があったりする。
大いに弱る。なにその会話意味ねぇだろ切っちゃえよとか俺の感覚では思うが、こう真面目な政治思想が展開されたり被災者の悲しみはとか大声で言われるとそれに文句言う俺が人非人みたいである。
常々思うが、原発とか津波みたいなセンシティブなテーマを自らの主義主張や考察としてではなく娯楽に昇華して悟られないように語るのがプロの映画監督ってもんじゃないんかね。熱演などと観客に言われる役者は二流で、そう気付かれない役者が一流だと高峰秀子は言っていた。監督もやはりそうなんじゃなかろか。
その意味で『天空の蜂』(2015)はとっても良い映画だったなと思うが…いやことあるごとに『天空の蜂』を引き合いに出すのはやめよう! 俺は堤幸彦の回し者じゃないんだよ! でも『天空の蜂』面白いからみんな観てね!(結局宣伝してしまった)

なんか話が逸れたが、散漫で長いうえ真面目極まるので(少なくともロングバージョンは)その思想をシェアできない俺にとっては眠い映画だった。
寝ても起きても結局立教大学が目の前に広がってるのであんま寝た気にならず、お得感は微かにある。いややっぱ無い。
若松孝二的なアプローチかとも思ったが、あぁいう扇情は一切無いんで違った。とにかく真面目に311後の都市生活者の心理を考察した映画であって、真面目に映画を観れて真面目に共感できたり安さフィルターを脳の映画受容部分に自在に張れる訓練された邦画マニアには面白いのかもしんないが、物見遊山の一見さんにはだいぶキツイ映画であるのは間違いない。
なんとなく似たような映画作りといっても塚本晋也だったら予算無いなりに派手で面白い見せ場をたくさん出してくれるのに…(ブツブツ)

やっぱりお前は分かってない! 今の日本でこれをやることに意味があるんだ! との幻聴も受信する。
いやもちろん、安さと完成されてなさを厭わぬ機動性の高い撮影スタイルはあえて選択されたものであろうし、今こーゆーものを提示することには一定の価値があるんじゃないかとゆーのは分かるが、それって若い自主映画作家が勝手にやればいいことでキャリアの長いプロの人がやっても…とはちょっと思うぜ。
ほら仮にこれが19歳の大学生が仲間と撮った映画だったりしたら逆にすげー面白いワケですよ。そーゆーの、あるよ。

あのラスト近くの二転三転どこに転ぶか分からない不安定なあたりとか田口清隆の特撮とかは面白かった。主演の人(山田キヌヲ)とか、その同僚のオッサン木村知貴の妙な存在感とか良かったなぁ。
それに終末の予感というのも…いやしかし結局は立教大学の中だけで展開される心理劇なのでそれでテロだ終末だと言われてもやっぱ困る。それ読み取れるほど俺は訓練されてない。
アレだな…とにかく、汲め! 『Sharing』、汲む映画です!

(文・さわだきんたま)

【ママー!これ買ってー!】


グランド・ツアー(字幕スーパー版) [VHS]

ところで共感・予知・分身・大災害・罪悪感と贖罪…とこう似た感じの道具立てで『グランド・ツアー』(1991)ってSF映画が最高だったな。
いやほら予算規模も違うし…と思いつつ、ぶっちゃけ『Sharing』で描かれたことの大部分なんて『グランド・ツアー』でもっともっと高いレベルで出来ちゃってるじゃんかとちょっと思ってまうよ…。
伏線いっぱいギミックいっぱい味のあるキャラクターいっぱいで暖かみがあってほんのり泣けて災害パニックもあって田舎町の話なのに意外なスケールのデカさもあって…ってメチャクチャ面白いのでどっか勇気あるメーカーさん頑張って国内盤出してくんないかなぁと思ったら、国内盤どころか米盤DVDも廃盤プレミアだった…!

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