映画『山』発売!そして邦題が漢字一文字映画を観る!

https://www.youtube.com/watch?v=A5vLTpicYdc

さてさて、ずっと前に映画評論家の町山さんが話してて気になってた『山』のDVDが、ついに4/8に発売される。
監督はエドワード・ドミトリクって人で、この人はフィルム・ノワール(ノワールが何かってのはこっち書いた)の面白いのたくさん撮った人らしい。

この人の映画は、俺はノワールの傑作って言われる『十字砲火』 (1947)くらいしか観てないんだけど、いやコレ面白かったナ。
ロバート・ヤング、ロバート・ミッチャム、ロバート・ライアンっていう三人のロバート俳優(んな括りねぇよ!)が出てくんだけど、そのうちロバート・ミッチャムとロバート・ライアンは共にノワールのイコンって言われる人。ノワールのイコンってコトは、つまり「ヤバい」人ってコトだ。

いやもう、この映画のロバート・ライアンは恐かったよ!
パっと見優しくて頼れるイイ人感出てんだけど、確実に狂ってんの。
すげーユダヤ人嫌いで、理由とか無いのに虚ろに笑ったりしながら殺す。恐いなぁ。
ちなみにこの人、『拳銃の報酬』(1959)っていうノワール映画では尋常じゃないくらい黒人を憎みまくってた。
ノワールのイコンで、しかも人種差別俳優なのだ(嬉しくねぇ!)

ハナシが逸れたけど、まぁ『山』がどんな映画かってのは↑の解説聞いてちょーだい。
んで、『山』発売!ってコトでふと思った。
そうだ、「邦題が漢字一文字映画」を観てみよう!
たまにレンタル屋とかで見かけるけど、題名がシンプルすぎてつい見過ごしちゃう邦題が漢字一文字映画!

だがしかし!たとえば『命』って映画がある!
『命』だぞ『命』!そのシンプルさとは裏腹に、巨大にして深遠な哲学的命題と、人類永遠のテーマがソコにあるではないか!
いったい、『命』とはどんな映画なんだ!
果たしてソコに、人類が追い求めた「命」の答えはあるのか!

…っていう感じに、色々妄想ブクブクだよね!
やっぱ邦題が漢字一文字映画はイイ!
つーコトで、面白かった邦題が漢字一文字映画を見ていくぜ!
…一本だけ例外があるけどな!

『鳥』(1963)

鳥系のペットショップでキザな男にナンパされた主人公の女。
とりあえずその場では断ったものの、なんだかまんざらでもない。
ってコトで女は男の家につがいの鳥を届けて、お近づきになろうとする。
するとなんだか、辺りの鳥が騒がしい…。

言わずと知れたアルフレッド・ヒッチコック監督の代表作(って書くとマニアがうるさいけど)。
古い映画だしなー、怖いっていってもなー、とか思って観たけど、音楽も無く、ただ鳥が飛んでるだけのタイトルバックからして既に怖かった!
音楽が無いのはタイトルバックだけじゃなくて、全編使われてない。
劇伴の代わりに映画を埋め尽くすのは狂ったような鳥の鳴き声と羽ばたき音。
ノイジーな映画なのだ。

まぁ色々面白いトコあんだけど、主演女優さんが静まり返った湾をボートで横切る場面の異様な緊張感とか、目ン玉食われて笑ってるように見える死体とか、それを見つける一連のシークエンスなんて、いや今観てもメチャクチャ面白いねぇ!
あとアレ、ひとり寝室に入った主演女優さんが、待ち構えていた大量の鳥に襲われるシーンな!
鳥が女優さん襲って、女優さんは抵抗できずに喘ぐだけ。
服なんかはだけてきて、やがて鳥のなすがままに…ってのが三分くらいずっと続く。
ヒッチコックはエロい!ってのはエラそうな映画評論家が決まって言うコトだけど、マジでソッチ系のAV観てんかと思ったぞ。コレ絶対家族で観れねぇよ!

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http://town.sanyo.oni.co.jp 『サイコ』は「キャー!」で『鳥』は「カァー!」

つかアレだな、とにかく人が死ぬ映画なんだけど、人が死んでも「キャー!」とか「イヤー!」って全くならないのがスゴイ。
死体が色んなところに無造作に置かれてて、それを日常風景みたいに撮んの。クロースアップとかあんましないで、ボーっと撮る。
死体だけじゃなくて、あらゆるモノがこの映画じゃそういう風に撮られる。
鳥がいても日常風景。人が死んでも日常風景。鳥に襲われても日常風景。人類の終末も日常風景。
聞こえるのは風の音と、さざなみの音と、鳥が羽ばたいて鳴く音だけ。
逆にちょー怖いじゃん、そんなの。

ヒッチコックといえばコレな『サイコ』(1960) なんて全シーン「怖いぞー怖いぞー!」って撮ってたのに、そのたった三年後の『鳥』じゃコレ。
いったい三年の間にヒッチコックに何があったか知らんけど、ともかく映画全体に漂う死の香りと無常観は只事ではない。
いやぁ、怖いなぁ怖いなぁ…(稲川淳二風に)

http://wordofthenerdonline.com
http://wordofthenerdonline.com 『ミスト』で襲ってくんのは鳥どころじゃないけどね

『鳥』はアレだな、生物パニック+世界の終末を描く終末生物パニック映画界におっきな影響を与えた映画でもあるナ。
ある日なんの前触れもなく…っていう導入もそうだけど、終末生物パニック映画でおなじみのラジオやテレビの臨時ニュースで世界の終末を臭わせる手法も『鳥』にはちゃんとある(別にコレがオリジナルってワケじゃないけど)。
これまた終末生物パニックの定番である「黙示録だー!」って騒ぐ聖書マニアが既に登場してるあたりも見逃せない。
ただし、『鳥』の聖書マニアは「ハハハ!黙示録だな!乾杯!」みたいな呑んだくれの楽しいオッサンなのだった。

具体的に「明らかに『鳥』だろコレ」って映画っつーと、『ミスト』(2006)なんかは『鳥』の変奏曲って言えるし、『回路』(2000) なんかもそう。
終末ゾンビ映画に限らず、現代のゾンビ映画全ての元祖『ナイト・オブ・ザ・リビング・デッド』(1968)も、『鳥』をはじめヒッチコックの影響が大きい(もちろんソレ以外にも色々ある)。
でもってその『ナイト~』に影響されて作られた『ザ・チャイルド』(1976) っていうコドモがオトナを殺しまくる終末パニック映画では、映像的にも演出的にも『鳥』ソックリなシーンがたくさん出てくる。

一方、『ナイト~』の影響から離れて独自のゾンビ像とゾンビ世界を構築した(と、監督が言ってる)スペインの『エル・ゾンビ』(1971)シリーズの二作目『エル・ゾンビⅡ 死霊復活祭』(1973) では、ラストが完全に『鳥』。
構図まで一緒なんで、ソレをオリジナルと言い張るのは無理があるだろ。

ってな感じで『鳥』はいろんな映画に影響を与えてるんで、終末パニック映画が好きな人とかゾンビ映画が好きな人、『ミスト』面白かったナーみたいな人は、とりあえず『鳥』も観てみてちょーだい。
あと、本気で怖い映画みたい人にももちろん推すね。
マジ怖いから、コレ。

『哥』(1972)

http://2ndkyotoism.blog101.fc2.com
http://2ndkyotoism.blog101.fc2.com

京都の旧家。
かつての栄華は見る影も無く、次男は家を出、長男も家を守る気なんて全然無い。
そんな中、家の下男で父親の腹違いの子である三男だけは家を守ろうとしていた…。

昔、日本アートシアター・ギルド(ATG)っつー映画会社があって、ココはその名の通り「売れない芸術映画作家とかにたくさん芸術映画撮らせようぜ!」みたいな会社だった。
『哥』はそこで作られた映画ってコトで、もうそれだけで「うわぁ…ツマンナイ芸術映画かぁ…」って思うのに、実相寺昭雄監督による「日本及び日本人の精神構造を抉った観念的三部作」の最終作らしく、なんかもう「うわぁ…」としか言えない。
っていうか実相寺って名前だけでもう難しそうだし、題名なんて意味分からん。それ日本語?

そんなワケでものすごく気乗りしないで観たけど、アレ?コレ面白くね?いや、コレ面白いぞ!なのだった。良かった!

この映画はアレだな、なんつってもワンカットワンカットが決まりまくってる。
魚眼とかワイドとか使いまくった極端に歪んだカットとか、被写界深度の深ーい奥行きありまくりのカットとか、超極端な接写とか、シンメトリーとか。
とにかくあらゆる映像テクニックを駆使して、京都を徹底的に異界化する!
それがすげーグラフィカルで、シュルレアリスムの絵みたいにカッチョイイ!
あと、横尾忠則の絵とか想像しちゃったナ!

http://daichan0915.postach.io
http://daichan0915.postach.io 横尾忠則による坂口安吾。『哥』はそもそもモノクロなんですが、なんとなくこんな感じの映像世界

「家」(ってのは日本の象徴だし、天皇の象徴とも言えるけど)をひたすら守ろうとする下男と、「家」なんてどーでいー主人にして兄との対立!って書くと全く面白くなさそうなハナシに思えるんだけど、そんなすげー独特な画作りもオカゲもあって、なんか漫画みたいで楽しい。

漫画みたいって言えば演技も漫画みたい。
下男演じる篠田三郎なんてこうだよ、こう。
「ワタシハ、5ジイコウハ、ハタラキトーアリマセン」
いやコレ、観てもらわないと分からんと思うけど、マジでロボット演技なんだよ!
だって動きもカクカクしてんもん、なんか。

ロボットに対する主人を演じたのは岸田森って人で、この人は『呪いの館 血を吸う眼』(1971)とかでドラキュラやってた、とにかく立ってるだけで怪しい人。
つまり『哥』って映画は小難しい芸術映画なんかじゃなくて、ロボットとドラキュラが戦う夢溢れる特撮映画だったのだ!
さすが『ウルトラマン』やってた実相寺監督!

http://blogs.yahoo.co.jp
http://blogs.yahoo.co.jp この人がロボットと戦う。なんか夏休みの特番みたい

さてさて、映画では終盤、ロボットが「家」を守るタメにこんな感じのコト言う。
「タマシイガ、ナクトモ、カタチハ、マモラネバ、イケマセン!カタチガアレバ、ソノウチ、タマシイガ、ヤドルノデス!」
それってアレでしょ?それが日本人の精神構造だって言いたいんでしょ?付け加えるなら、ロボットが自分の人生を正当化するタメのセリフなんでしょ?違うの?
…って言われりゃソレでオシマイだけど、そんなのツマンナイ見方だ。
俺はコレ、特撮やってた実相寺監督の魂の叫びだと思いたいね。

着ぐるみのウルトラマンにもきっと魂は宿る。着ぐるみのガラモンにもきっと魂は宿る。着ぐるみのダダにもきっと魂は宿る。
いや少なくとも、『ウルトラマン』に夢中だった子供たちは、そこに魂を見たはずだ!
あんなバレバレの着ぐるみでも、きっとウルトラマンは本当に生きてるしガラモンも本当に生きてるんだって思ったハズだ!
そしてソコに夢を見たハズだ!

「タマシイガ、ナクトモ、カタチハ、マモラネバ、イケマセン!カタチガアレバ、ソノウチ、タマシイガ、ヤドルノデス!」

映画監督である実相寺昭雄の、映画にかける熱意の表明であり、そして映画を観てくれる全ての人に対する魂の叫びがこのセリフなのだ!
そしてそんなメッセージの託された実に実に熱い映画が『哥』なのだった!(多分、そんなコトないです)

あと、川島雄三監督の『雁の寺』(1962)っていう映画なんかも思い出したな、コレ。
『雁の寺』は女に溺れるエロ坊主と生真面目な少年僧が対立して、やがて寺が崩壊しちゃうってハナシ。
古い日本と現代日本の対立とか、ドロドロの肉体関係とか、生真面目に伝統を守ろうとする青年とか、ワリと似たトコあるんで意識したんじゃないかなぁ。

『丘』(1965)

砂漠にある英軍の陸軍刑務所に送られてきた五人の囚人兵士。
ふとしたコトから彼らは刑務所の曹長に目を付けられ、刑務所内にある「丘」を延々何度も登らされるという刑罰外の労働を科される。
疲労と苛立ちと恐怖から、彼らは次第に追い詰められていき…。

いやー、コレめっちゃ面白かったぞ!
題名『丘』だし、舞台も砂漠にある刑務所だけってコトで地味極まりない映画なんだけど、もう地味とかなんとか言ってらんない!
延々続く「丘」労働と渇ききった砂漠の映像に喉がカラッカラ!
サディスティックな看守にムカムカムカ!
徐々に壊れてく五人の囚人やオソロシー看守が何をしでかすかドッキドキ!

克明な心理描写と心理戦に胃が痛む!
静と動!個人と集団!白と黒(モノクロ映画なのだ)!極端から極端に変化しまくる撮影と演出に脳みそグルングルン!
主演のショーン・コネリーはじめ役者さんはみんなマンガばりに極端な演技で、そいつらのぶつかり合いに心臓バクバク!
安心できる場面なんて一つもないね!優しさなんてどこにもない!

だからこそ!だからこそ!だからこそ!

後半三十分、ついに曹長の圧政に耐えかねた囚人たちや看守たちが、勇気を振り絞って立ち上がった時の感動っていったらない!
溜まりに溜まった鬱屈を爆発させて、まさかの大逆転へと一気になだれ込む怒涛の展開がもたらすカタルシスはとんでもない!
でもって、その後の展開はもっととんでもない!衝撃のラストカットに震えたね!
DVDで観たけど、しばらく立てなかったぜマジ!
ヤベェ。この映画、ちょーヤベェ。

https://mubi.com
https://mubi.com こんな顔して女王様。そのギャップに萌える!

監督のシドニー・ルメットは社会派監督とかって言われてて、確かに社会派な題材をよく扱う。
でも、絶対その呼び名で損してると思うね!
ハジメっからケツまで貫く強烈な緊張感に胃をキリキリさせられて、それまでにバラまいた色んなサブプロットや伏線を一気に回収にかかる後半三十分は二転三転する展開に安堵したり、驚かされたり、また安堵したり、そして最後は脳みそ大爆発!
そんな感情のジェットコースターがルメット映画なのだ!

こう考えて頂きたい!ルメット映画とは、SM風俗である!ルメットはSM嬢だ!
縛られて、解放されて、ムチで叩かれて、優しく撫でられる!
もうルメットにメロメロだ!俺はアナタの奴隷です!
ルメット様!もっと俺を蹴ってくれぇぇぇぇ!

死んじゃったけど。

『命』(2002)

http://www.kpac.or.jp
http://www.kpac.or.jp 下の方に「世界が絶賛!(モントリオール映画祭コンペティション部門出品)」って書いてあるけど、それ絶賛されてねーじゃねーか

メンヘラ気味の女流作家さんに子供ができた。
でもなんかどーでもよくなる。
そんとき昔の恋人に会った。
そしたらソイツ、末期がんだった。タイヘン!

『命』ッ!
『命』ですよ!『命』!
なんて大それた題名だろう!
きっとスゲー映画に違いない!
…まぁ、やっぱ違ったけどね!

主人公の江角マキコはメンヘラ気質の人で、不倫相手との間に子供ができる。
でも不倫相手が認知しようとしないんで、なんか自暴自棄っぽくなって、子供なんてどーでもいーのよ的になる。
そんなとき、古い仲である舞台演出家・豊川悦司が末期がんであるコトを知る。
この演出家、役者さんに「ソレはテメェの魂からのセリフなのかぁぁぁ!」とか怒鳴りかかって泣かせる鬼演出家なんですが、その後に役者さんたちがやるミュージカルがあまりにアホらしいんで、なんかバカに見えてくる。

でまぁ、そんな魂のバカ演出家の余生に寄り添うウチに、メンヘラは「命」の大切さを知って自分の子供も大事にしよーってなる。
『命』とゆーからどんな重くて壮大なお話かと思ったら、メンヘラを更生させるには誰かに死んでもらわなきゃいけないという、タイヘン「命」の軽い映画なのだった。

って散々バカにしたけど、あくまで映画が悪いんだぞ!
原作は柳美里の私小説なんで、メンヘラは柳美里本人だし、バカ演出家は東由多加っていう実際にいた演出家さん。
俺はどっちも知らんから、ホントに柳美里がメンヘラでホントに東由多加がバカ演出家かなんて知らん。
っていうか仮にメンヘラでもバカでも、人様のがん闘病記をバカにしようなんて思わん。

が!しかし!
マジつまんねーんだよこの映画!グっとくるカットも演技も面白いストーリー展開も全然ねーんだよ!
柳美里がメンヘラに見えて、東由多加はバカ演出家に見えんだよ!
ちょーくだらねーどーでもいーハナシに見えんだよ!
だから柳美里!恨むんなら監督の篠原哲雄を恨めバカヤロー!

…あー、ヤダヤダ、こーゆー実話モノってつまんなくてもバカにしにくくて。
まったく姑息な手段だぜ!
あ、でもアレだ。柳美里の母親役の樹木希林は味のある演技で面白かったです。
いつもの演技なんだけどさ。

『道』(1954)

アタマが弱くて家族から使えねぇヤツ扱いされていた女が、ちょうど助手を探してた一匹狼の旅芸人の男に買われた。
というコトで助手+雑用係+性欲処理用…ってつまり奴隷ですよ、奴隷。奴隷として女は男と旅に出た。
男はマジひでぇヤツで、女を全く人間扱いしない。それに神だって信じないし、人だって信じないし、自分だって信じない。なんかもう野人みたいな男である。
そんな男との旅はさぞ辛かろうと思われたが、女はなんだかんだ楽しそうだ。
家族に使えねぇヤツ扱いされてた女は、たとえ奴隷だとしても自分を必要としてくれる人間に出会えて嬉しかったのだ。
それに、旅なんてしたコトもなかった。だから女にとって、それは楽しい旅だった。
だが、そんな楽しい旅も、一人の道化師と出会ったことから崩れていって…。

多分、邦題が漢字一文字映画史上最大の名作。
もう『道』って題名だけですでに泣ける。
泣けるって言っても、人情とかそんな感じは一切無い。
やがて心が通じ合い…みたいな、んな甘い展開は一切無い。
でも、この映画はちょー感動的だ。

監督のフェデリコ・フェリーニはイタリア映画界の巨匠で、この映画より後に撮った『8 1/2』(1963)みたいな夢と現実の入り混じったファンタジック妄想映画系の監督って紹介されるコトもあるけど、『道』をはじめとした最初の頃の映画はひたすら現実的で冷たい。
ネオレアリズモっつー「汚くてミジメな現実をちゃんと描こうぜ!」って芸術運動がそのちょっと前くらいに流行ってたんで、フェリーニもソレを引きずってたのだ。
それプラス、この頃のフェリーニがよくやってたのは「神の不在」とかだナ。
神に救われない人々のミジメな人生ばっか突き放して描く。

まぁそれだけだったら『道』は単にイヤな映画なんだけど、コレは救われるんだよね、観てると。
やっぱコレも「神の不在」系の映画なんで、展開的にはエラい残酷な「道」を辿る。
みんなミジメでみんな救われない。
でもアレだ、「救いなんていらねぇよ。神様なんて死んじまえ!」みたいな主人公が、最後に「俺を救って欲しい!」って感情を露にする。
そうさせたのは嫁さんで、人情もなんもない冷たくてミジメな旅だったんだけど、でもその旅は無駄じゃなかったんだー、ってなって泣けちゃう。
ウルトラバッドエンドなんだけど、だからなんかすげー救われた気分になるんだよなぁ。

https://martinteller.wordpress.com
https://martinteller.wordpress.com ジュリエッタ・マシーナ渾身の変な顔

野人みたいな主人公を演じたアンソニー・クインもイイんだけど、やっぱアタマの弱い嫁さんを演じたジュリエッタ・マシーナがイイ。
映画の中でのジュリエッタ・マシーナは無垢な天使として描かれる。
本人の言う「変な顔」でおどけたりするサマはなんだか神聖。

この人フェリーニの嫁さんなんで、なんかヒドイ亭主だったらしいフェリーニの罪悪感がこんな映画作らせたんじゃなかろーか。
そのわりにアタマの弱い奴隷役ってのはヒドイが、まぁネジクレた愛情表現…なのかなぁ?
とりあえず「お前がいなくなったら俺、生きてけないよ!」っていう、フェリーニのジュリエッタ・マシーナに対する女々しいラブレターって風に受け取っとくか。

あとアレだ、ジュリエッタ・マシーナは『道』の他にもフェリーニが翌年撮った『崖』(1955)、更に『女』(1959)なんて映画にも出てる、邦題が漢字一文字映画界のレジェンド女優です。スゴイね!(なにが?)

ついでに、その『崖』はひたすら冷たくて、そしてやっぱり「神の不在」な映画。
こっちはもう救いとか全く無い。

まだまだあるぞ!邦題が漢字一文字映画!

http://www.bloodygoodhorror.com
http://www.bloodygoodhorror.com 『家』(1976)はそのまんま家ものホラー。『家』は他に四本もある

まだまだたくさんあるんで、とりあえず分類してみた。

季節:『春』
人:『父』『母』『女』『男』
武器:『剣』『弓』
自然:『雨』『土』『火』『炎』『河』『風』『波』
人生で大事なモノ:『家』『金』『愛』『恋』『夢』『肉』『血』『骨』『涙』『顔』
その他:『叫』『馬』

まぁ、だからなんだよですが、コレはコレで遊べるんだぞ!

『恋』と『愛』を一緒に見れば「恋愛」!ちなみに『恋』はテレビ映画も含めて三本あるが、ジョセフ・ロージー監督による1971年の『恋』が面白そうだ!
『顔』と『馬』を一緒に見れば「馬面」だ!亡くなった円楽さんの顔をアタマに浮かんだぞ!
『血』と『骨』と『肉』と『顔』と『命』で生き物の誕生!優しくて楽しい生き物になるように『夢』と『涙』と『愛』を加えよう!性別を決めるには『男』か『女』だ!なんか遺伝子操作してるみたい!
『女』と『顔』と『金』でキャバ嬢!『男』は『恋』と『愛』を付け足したがるが、絶対に付け足せない!
『家』と『叫』と『金』と『骨』と『血』で骨肉の遺産争い!
『女』と『剣』と『弓』と『叫』でアマゾネス!
『道』と『丘』と『山』で田舎の風景!
あるいは『山』と『雨』と『風』と『河』でなにか雄大な自然がアタマに浮かんでこないだろーか!

…いや、だからなんだよ!
って言われても困るけど、まぁ色々と面白い発見てのもあるじゃない。

http://katubou.jugem.jp
http://katubou.jugem.jp そういえば『夢』(1990)観てないな

『血』(1989)と『骨』(1997)はともにポルトガルの変な映画撮る人ペドロ・コスタの作。
いまんところこの人は現代の邦題が漢字一文字映画界のエース。
『夢』は二つあるけど、1990年の『夢』は黒澤明の最後の方の映画。
巨匠が最後に辿り着いたのは邦題が漢字一文字映画だったのだ。
日本が誇るもう一人のクロサワ・黒沢清が撮ったのは『叫』(2006)。
戦争映画のマイルストーンである『西部戦線異状なし』(1930)を撮ったルイス・マイルストンは『雨』(1932)を撮った。
やはり巨匠は邦題が漢字一文字映画を目指す!
そうそう、『父』って映画は三本あるけど、『母』は六本ある。
そのうち1926年の『母』は映画史上の重要な一本。
映画界においても父より母の方が大事なんである。
父は弱いッ!

もう飽きましたか?そうでしょうね。
最後に、惜しくも邦題が漢字一文字映画になりそびれた作品も挙げとこう。

『カフカの「城」』(1997)は孤高のヘンテコ作家フランツ・カフカの『城』を、人でなし映画ばっかり撮ってる(でも最近改心した)ミヒャエル・ハネケ監督が映画化したヤツ。
せっかく邦題が漢字一文字映画に仲間入りできるところだったのに、「カフカの」とか余計な冠詞を付けちゃって台無しになった。
この映画、カフカのシュールで冷めた世界観を忠実に映像化してて面白いんで、興味ある人はどーぞ。

スティーヴン・キングの中篇『霧』を映画化した『ミスト』も、邦題が漢字一文字映画になりそびれた残念な一本。
『ミスト』はかなり『鳥』っぽい映画なんだし、『霧』のままでよかったのに。
『鳥』!『霧』!
なんかイイよね、なんか。

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『道』も『鳥』も大好きなんだけど、なんだかんだメジャーじゃん。
まぁレンタル屋いけば置いて無い店はまず無い。
『丘』は置いてある店のが少ないんだけど、マジでヤベェ映画なんで絶対観て欲しいなぁ。
いやホント、もう刑務所版『ダイハード』だよ、コレ。


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あ、もちろん『山』も買ってね!

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