映画『64 前編』観たから感想書きますけど半分以上寝てるから参考にならない(ネタバレ当然なし)

《推定睡眠時間:75分以上》

寝過ぎ。明らかにオーバースリープ。これはなにか睡眠に関係する脳の伝達物質の異常なんじゃなかろか。思い返してみれば小中高と授業中によく寝て廊下に出されたりしていたし、バイト中に接客しながら寝る、歩きながら寝て倒れそうになる、などなど度々睡眠禍に見舞われる人生だった。
最近はそうでもないが映画といえば名画座二本立てでばかり観ていた。二本立てなので一本寝てももう一本はまぁだいたいは寝ないで観れるので損をした気にはならないし別段気にもならない。基本一人でしか映画館には行かないのでお前ちょっと寝すぎだろと指摘する人間がいない。やはりこの映画観ながら居眠りっぷりは世間一般の平均から逸脱してるよーに感じるが、本人にとっては日常なのでそのおかしさに意外と気付かないもんなんである。

統計的には既婚者と独身者の寿命を比較するとやはり独身者の方が短命傾向にあるとゆーが、原因の一つとして挙げられるのは日常生活における病気の前兆、ちょっとした心身の異常に気付く人間の不在だという。
なるほどこうやって俺は気付かぬ間に病気を悪化させて孤独死するのか…と恐るべき現実を突きつけられる映画体験が今回の『64 前編』であった。

…いや、死なない! 俺は死なないぞ! とりあえずこの異常睡眠については今度お医者さんに相談してみよう! もう何年も受けてない健康診断も受けよう!
確かに爆睡も甚だしいが、そのことによってこのよーに間接的にでも健康を意識したのなら『64 前編』の居眠り鑑賞も無駄ではなかった! 健康大事! 映画観るより健康大事! ありがとう『64 前編』! 助かったよ『64 前編』!
『64 前編』、人間ドックみたいな映画です!

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しかしこれは俺定義によれば純度90%以上のオヤジ映画である。いつの間にかオヤジ映画にしか出なくなってしまった佐藤浩市が主演の時点で既にオヤジ度数が高いのに、その佐藤浩市を筆頭に誰も彼もが口汚く怒鳴りまくる。登場人物が理屈を無視して感情的に怒鳴り散らす場面が見せ場とされるのがオヤジ映画である。
つまりは昭和64年に囚われたオヤジたちのお話であり、脇を固めるのが三浦友和、赤井英和、夏川結衣とくればこれはもうただただオヤジ映画としか言いようがない。公式サイトを見れば「究極のミステリー」「超豪華オールスターキャスト」「感動の人間ドラマ」とベタな修辞が踊り…完璧じゃないかオヤジ映画的に。
健康ドック映画であることも考慮すれば尚更オヤジ映画としての強度が増す。

得てしてオヤジ映画ほど気持ちよく寝られるの法則が俺ん中にあり、従ってこれもまたスヤスヤ快眠、しかも要所要所で登場人物の誰かが怒鳴って起してくれるのでとても安心して眠れた。その意味で懐の広い映画と言えよう。
アレだ、オヤジ映画は懐が広い。変に映画に情熱を燃やす若手の映画にはこの余裕がない。どれ観てもだいたい爆睡するがそれでも俺がオヤジ映画をついつい観てしまう所以である。
スヤスヤ眠ってスッキリ映画館を出る。健康意識も高まる。いいですねオヤジ映画。

いやそれにしてもこれ未解決の誘拐殺人事件のお話かと思って観に行ったが違うんだなぁ。警察組織のお話か。たぶん後編で全部誘拐殺人事件の真相に繋がってくんだろが、前編の方はやたらめったら登場人物をばら撒きながらひたすら警察の体質であるとか内部力学とか記者クラブとの関係なんかを追求する(らしい)
む、確かに快眠できる映画ではあったが寝てはいけない映画だったか。これはちょっとでも寝てしまうと各々の登場人物の立ち位置と関係性が分からなくなってしまい、それだけ見せる映画っぽいんで何が面白いんだかもまったく分からなくなってしまう。寝ながら観ようとする人は注意しよう。

横山秀夫原作の映画は『クライマーズ・ハイ』(2008)を観たことがあった。あれ面白かったな。日航機墜落事故を巡って大混乱の新聞社。こう、一つの事件を発端に関係組織に属するオッサンたちの相克が描かれる群像劇ってのはこれと同じか。
『クライマーズ・ハイ』なにが面白いって悩む人は顔に苦悩と書く、怒る人は顔に憤怒と書く、そして言いたいことがあったら絶対に遠回しになんかせずにストレートに怒鳴る。そういうオヤジしか基本出てこないんで画面が常に汗と怒号で満たされる。
これは面白い。俺みたいな若輩者からすると漫画にしか見えないが(いや、だから面白いのさ)記者の経歴を持つ横山秀夫さんが書いてるんだからリアルなんだろう。こんなシンプルな時代があったのか。こんな熱いオヤジたちがいたのか。勉強になります。

『64 前編』に話を戻せば、別に驚くことでもないのかもしれないが俺的にはすごく久々にスクリーンで見た永瀬正敏の老けっぷりに驚いてしまった。
永瀬正敏か…渡哲也と共演の『誘拐』(1997)なんて刑事映画あったな。生意気なルーキー刑事が今や白髪混じりのオッサンなのか。つか『誘拐』97年製作だったのかよ。97年にしてあんな古臭い…と思ったがもう20年前なんですか。はぁ、時の流れは本当に残酷で…。
『64 前編』はしかしそう嘆く人たちのためにあるので、これは、つまりこの作りは、時代がかっているなどというのは少しも欠点には成り得ない。古くてなにが悪い、ではなく古いからこそ良い。安心できる。感情移入できる。

前後編堂々4時間超の大作にして画面に映るのは組織のしがらみの中で苦悩するやたら攻撃的な脂ぎったオヤジたちの顔ばかり。ええじゃないか、それが観たいんだ。半分以上寝てるわけだからあんま説得力ないが事件発生の過去から時効間際の作中における現代までの時代の移り変わりがあんま感じられない気がした。ええじゃないか、オヤジにとっての十数年はガキの一年と大差ない。
これはオヤジ映画である。これがオヤジのリアリティである。俺みたいなペーペーの若造の現実認識とは全く違う。このズレは積極的に楽しみたい。

前後編といえば昨年の実写版『進撃の巨人』は後編を観てないので話が迷宮入りしてしまった感があるが、こちらは迷宮入りさせずにキッチリ解決させたいので後編も観に行こう。逆に言えば『進撃の巨人』は前編だけでもそれなりに一本の映画として成立してたが『64 前編』は完全なる前編なのでこれ一本だとまったく何も終わらない。
これだけ観ても仕方が無い。興行的に厳しいんだろうと思いつつ、それなら休憩挟んで4時間の映画としてやって欲しかったとはやはり思う。

そうそう、あの瀬々敬久らしい田舎の風景、聳え立つ鉄塔とか、そーゆーの良かったな。俺が寝てる間にこんな素晴しい場面が数多あったんだろか。
うーん、睡眠時間75分超。75分といえばギリギリ長編映画の範疇じゃないか。なんだか三部作の第一部だけ観た感じになってしまったな…。

(文・さわだきんたま)

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※同じくNHKのドラマ版『クライマーズ・ハイ』。主演はやはり佐藤浩市であった。
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