驚愕ワンカット映画『ヴィクトリア』から教訓をたくさん学ぶ感想(含ネタバレ)

《推定睡眠時間:0分》

エンドロールの筆頭に来るのがプロデューサーとか監督とか主演俳優を差し置いて撮影監督ストゥルラ・ブラント・グロヴレンなのでつまりそんな映画で、全編140分ワンカット、ベルリンの夜の街を縦横無尽に走り回るが大変これは大変、なんとなくごまかして違うカットを繋いでる感じもないんでこの人ホントに手持ちカメラ片手に駆けずり回って撮り続けたんじゃないか、いや、だとしたら俳優の人たちも相当エライよな、プレッシャー半端ないだろセリフ忘れたりしたら全員から袋叩きにされんだから、つか現場の人全員エライよスゴイよと全編ワンカットに敬意を払ってこちらも句点を打たずに蓮實重彦的ワンカット文体、面倒くさいんで以下普通に書きます。

しかしそんなエラすぎるスゴすぎる映画ですがなんか観てたらムカついたんで映画って難しいよねと思う。
『ヴィクトリア』、予告編見たら長回しが売りの犯罪絡み青春ものっぽかったんで『セーラー服と機関銃』(1981)かなと思ったが、こちらは主人公の女とつるむ男子グループにいたのが柳沢慎吾じゃなくてマイケル・ベリーマンみたいな人だったので大変なことになってしまった。
そんな映画。その感想。ネタとかバレる。

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はて映画はクラブで若い女が踊ってるとっから始まる。この人主人公ヴィクトリア、スペインからベルリンに一人でやってきてカフェで働いてる。友達いない。
余談ながらここストロボ焚きまくりで画面が3分ぐらいポケモンフラッシュなのでとても目が疲れた。なにか、冒頭からしてこれ気合入った映画だからボケっと見てるテメェら客も気合入れて見ろこの野郎みたいな意思を感じる。

ほんでこのチャンネーがあぁ楽しかったそろそろ仕事行こっとと思って外に出ると酒に酔ってはしゃぐ四人の若い男たちがおった。君どっから来たの? みたいな感じで軽くナンパされるヴィクトリア。なんだったら車で送るぜと言われてこいつら既に怪しいが、どうもその車他人の車でこれから盗もうとしてるらしい。
コラ! 貴様ら俺の車になにしてる! 車の持ち主が現れると男たちは笑って逃げてく。ヴィクトリア、なんか楽しそうだから一緒についてく。映画が始まって10分も経ってないがこの女絶対トラブルに巻き込まれるな感。

男たちはあんま英語ができないんでコミュニケーションに若干の障害がある感じだったが、夜の街を一緒にブラついてるうちに仲良くなった。友達がいないところで見知らぬ人と仲良くなって嬉しくなっちゃったんでヴィクトリアは男たちと一緒にその場のノリで楽しく万引きしたり不法侵入したりする。で、そうこうしてるうちに銀行強盗するハメになって警官隊と銃撃戦を繰り広げるハメになってと散々な一夜となってまうのだった。

とりあえず言いたい。特に仲良くなって付き合っちゃおっかなとヴィクトリアが思ってた男たちのリーダーが警官に撃たれて死んで、それでうわーんと泣き叫んで悲劇のヒロインぶってるが、これ全部自業自得だからな。
なに寂しかった? ちょっとした冒険がしたかった? だったら友達も冒険もいっぱい待ってるからお前は黙ってメキシコにでも行け!

いやなんつーかアレだな、これ途中まですげー面白かったんすよ。ひとけの無い夜のベルリンをチャリの二ケツで走るとことか超青春。これ即興? みたいな演技とかグダグダ会話とか、例のワンカットでカメラが通りを駆け抜けてアパートの屋上登って車に乗って走ってって…とか超面白い。イイよこれ。イイよこの感じ!
いやそれは良いが映画が半分ぐらいまで行ったとこですごく唐突に強盗の話になって劇的に萎えた。なんだなにが起こったんだ。さっきまで奔放な青春映画って感じでみんな活き活きと味のあるキャラクター演じたりしてたのに急に段取り臭くなったぞ。説明セリフばっかになったぞ。
それまではこいつらロクデモネェなと思いつつナチュラルな展開だったんでついていけてたが、いきなりギャングのボスが出てきて「今から一時間以内に強盗してもらいます!」と無茶振りされてその場で聞かされた計画に従ったら首尾よく強盗成功しちゃってとかになるとだな…なんか新宿から代々木ぐらいの距離感の映画かと思ってたら小岩から新小岩ぐらいの距離感だったみたいな感じだな!

これはシナリオが酷いんだろがワンカットが売りの映画であるからして後から酷くねと思ってもきっと切ったり変えたりすることができなかったに違いない。でもそもそもご都合主義すぎるし全部一夜140分リアルタイムの出来事として詰め込まれてるんで最初から無理あるだろ。誰かシナリオの段階で気付かなかったのか。後から修正効かない映画なんだから尚更そこでアレしたりコレしたりした方が良かったんじゃないのと思いますが…。
結局、そのストーリーの無理あるだろこれ加減が後半に至って加速度的に増してくんで、それに伴って主人公からどんどん心が遠のき最終的にこいつ単なるバカじゃねぇか勝手にやってろアホいいからメキシコに飛べせめてお前『カルテル・ランド』(2015)観ろと思った次第。リアリティ最重視のハイパーなワンカットとゆーのもこう無茶なお話となるとむしろ逆効果なんじゃないかとすら感じてしまう。

しかし途中まではすごく面白かったしだいたい大事な教訓をたくさん学べる貴重な映画であるのは間違いない。
1、軽々とナンパに乗ってはいけない。
2、その場のノリで万引きしてはいけない。
3、盗難車と分かっているのに乗ってはいけない。
4、強盗しろとギャングに言われたところで見張りもなにもついてないし逃げるチャンスもいっぱいあったんでそういう時はちゃんと逃げたほうがいい。
5、強盗に成功したからと有頂天になって依頼主のギャングに報告もせずにクラブで踊り狂ったりしてはいけない。
6、それに自分たちが全裸になったりして暴れたから追い出されたのにクラブの人を悪く言ってはいけない。
7、警官に追われてるからとシングルマザーの家に逃げ込んどいて「その赤ちゃんを渡せ! なんで渡さないのよすぐ返すって言ってるでしょ!」などと逆ギレしてはいけない。
8、ただ赤ちゃんを抱えてちょっと服を着替えただけで銃を所持した銀行強盗犯が逃げ込んだアパートを包囲する武装警官は「あ、一般市民の方でしたか。どうぞ通ってください」などと言って見逃してはくれない。
9、腹部を撃たれて致命傷を負ってるんなら十数分間も気付かないわけないしだいたい歩けない。
10、こんなしょうもないお話をイイ話っぽく終わらせてはいけない。

…教訓がちょっと多すぎやしないかな!

(文・さわだきんたま)

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しかし別に『セーラー服と機関銃』も好きじゃないしそもそも薬師丸ひろ子の魅力が分からないのだった…。

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