映画『ディストラクション・ベイビーズ』でブレインダメージ残りまくり感想(ネタバレなし)

《推定睡眠時間:0分》

明日から仕事行きたくなくなる系映画。映画館から出ると目の前の街並みが人々が全部まとめてクソつまらんく見えてきて困る系映画。
はいはい、最高最高! そう言っときゃいいんだろ! やめろよマジ真面目に穏やかに生きるのがイヤになんだろ! まったく困った映画だな!

柳楽優弥は戦闘マシーン。喧嘩しかプログラムされてないポンコツAIなので街をぶらついては通り魔的に喧嘩をふっかけることしかできない。おなかが空いたら近所のスーパーの店内で生肉とかそのまま食う(むろん金は払わない)。お金が必要になったらとりあえず目に付いた誰か殴って奪う。言葉はうーとかあーとかだけ話せる(ごく稀に普通の会話もする)
なんたる危険人物だと思うが動物の嗅覚で喧嘩してそれなりに楽しそうなヤツしか相手にしないので見た目に弱そうだったりいきなり襲い掛かっても無抵抗のヤツは相手にしない。格闘漫画とかでよくいるなこーゆー人。きっと誰かが拾ってちゃんと育ててやれば世界も狙える逸材に違いない。
しかしこちら『ディストラクション・ベイビーズ』は丹下段平ではなくザ・クソつまらんイキったヘタレ童貞の菅田将暉が柳楽ネーターを拾ってしまったので大変なことになってしまうとそんなお話。友達はちゃんと選ぶべきと教えられるな!

いやしかしこれはとても面白くない映画で面白くない人たちしか出てこないと言えば語弊があるがやっぱり柳楽優弥を除いて面白くない人しか出てこないし映画も面白くない。街で見かけたクソみたいなネタをSNSに流して俺おもしれーと思ってるアホとか退屈だから万引きしちゃった誰か私を楽しませてよと密かに思ってるアホとかとにかく自分ではなんも面白いことをできんヤツしか出てこないが、そのつまらんアホどもの地獄堕ちを社会派的に真面目に見つめてしまうのでいやそんなアホはどうでもいいし元からつまらんヤツらを殊更つまんなく描いてもしょうがないだろまたこれ系の荒廃人間シリアス映画かよもう飽きたよ地方の閉塞感が云々みたいのいい加減にしろよと…だが! だが!

もう、そう思っちゃったので。そう思っちゃったんで頭から尻尾まですっかり食われてるわけです、映画に。あぁつまらない、つまらない…つまらない! つまんない連中のつまんない出来事をつまんなく眺めながら柳楽優弥が誰でもいいからぶん殴るところを早く早く早く! と渇望してしまった時点で既に食われて消化済み、映画館を出る頃にはウンコになってました。
だって柳楽優弥の真似しながら歩いちゃったからな新宿を。柳楽優弥がどっかで喧嘩してないかなぁと思わず探しちゃったもんな視界の隅で。イタい。これはイタい。完全に中二。俺の中の眠れる中二魂を呼び覚ましてしまったな…(中二的表現)

なにが素晴しいか。柳楽優弥の一切の迷いを捨てた手足の動きが素晴しくて素晴しくて…人間の機械的な動作は笑いを生むのだと言った人もおりますがなるほどあまりに迷いがないので笑っちゃう場面多数。いや、だって柳楽優弥ふつうに歩いてたと思ったらいきなり通行人に突っ込んでそのまま殴り合うわけだから。そら笑うだろ。えー! ってなりながら変な笑い出ちゃうだろ。
戦闘マシーンのくせに別に強くないってのがまたイイんだ。むしろ弱いんじゃないか。殴られたらいたーいって顔を押さえる(リアル)。自分から喧嘩吹っかけるくせにだいたいいつもノされてしまう。しかし喧嘩で一番強いのは命を捨てたヤツだと誰かが言っていた。殴られれば殴られるほどむしろ面白くなってきちゃう柳楽優弥なので自らの血反吐を眺めてニヤリと笑う。面白くなってきた、これだそうだこれが欲しかった…そして何度でも立ち上がっては死ぬまで相手に向かってくのだ。一言も発さず狂ったニヤけ顔を貼り付けて。
あまりに魅力が強すぎるので頭の中で勝手にマッチメイク。VSジェイソンとかジョーカーとかDIOとか…いやそれぐらい人間捨ててるからなこの人。

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んな化物の喧嘩行脚が延々続くんで前半はもうノリノリ。わははと笑いながらやれやれやっちまえそんなつまらんヤツらやっちまえ世界を壊せ行け柳楽ネーター! と観てたがそう思ってたのは菅田将暉も同じなのだった。
どうやら戦意を見せなければ襲ってこないらしいということを学習した菅田将暉は懐かしゲームで言うところの『ワンダープロジェクトJ』的に柳楽ネーターをナビゲート。ゆけ柳楽ネーター! 次のターゲットはあいつだ! 菅田将暉の言葉を聞いてか聞かずかは知らないがとりあえず近づく人間は殴ってみる柳楽ネーターなので虎の威を借る菅田将暉もすっかり得意になってしまう。

さてこっからがつまらない。ひたすら不快なだけでクソみたいにつまらない。ひょんなことから万引き趣味のキャバ嬢・小松菜奈も加わって柳楽ネーターの狂気と暴力が拡散してくが、いつのまにか柳楽ネーター本人は画面から消えてしまう。
あんなにおもしろかったのに。なにかとんでもないことになると思ったのに。いやとんでもないことには確かになるが、物凄く想像力の欠如した方向にとんでもないことになるのだ物語的には。それを現代の病だとか社会の歪み的な視点で捉えるのもなぜあんな化物が生まれたのか見てる側に理解させよーとする姿勢も全くおもしろくない。

結局捕まってしまったのだ柳楽ネーターは。つまらないバカガキとつまらない物の分かった大人に。無敵の柳楽ネーターもつまらない世の中には敵わなかった。
かなしい。急に夢から覚めた気分。地下アイドルがメジャーになってしまったときのファンの心境かこれは。好きだった深夜番組がゴールデンに昇格したときの心境かこれは。こんなヘビーな映画のたとえとしてそれはどうか…。
けれども、だから、柳楽優弥が再び画面に姿を現した瞬間の感動は言い尽くせない感じあんのだ。その身を縛り付ける全てのつまらない視線を跳ね除けてスクリーンの向こうから客席に狂気のニヤニヤを投げかける瞬間の感動とゆーのは。
きっと『時計じかけのオレンジ』(1971)は意識したんじゃないか。あれぐらいの感じあったよ俺ん中では。

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ほら『ダークナイト』(2008)とかあるじゃん。ヒース・レジャーのジョーカー超かっけーじゃん。対してバットマンすげーダセェじゃん。つかバットマン邪魔じゃん。ノーランのクソ真面目ぶった語りとかウゼェじゃん。もうそんなん全部いらないからジョーカーだけ見てたくなっちゃうじゃん。
でもジョーカーがあんなに映えたのはやっぱバットマンとノーランがつまんないヤツだったからですよ。あいつら本当つまんねぇ。『ダークナイト』は全然面白くない。だからこそそのつまんない世界を突き抜けてヒース・ジョーカーがバットマンとノーランを凌駕した瞬間に得難い感動があったんだろうと。あんなにつまんない作りなのに『ダークナイト』死ぬほど面白かったんだろうと。
なんか、『ディストラクション・ベイビーズ』その感じ。作家の意図を超えたところで奇跡的に映画の弁証法を形成しちゃってるよーなとこあって、それがとても凄いと思ったなこれは。いやつまらなさも含めて全部狙いだったらそれはそれで凄いんですけど。

ところで柳楽ネーター柳楽ネーター言ってるが唯一柳楽優弥が普通の人っぽい顔を覗かせる場面があり、ネタバレでもなんでもなくどこかと言えば冒頭、弟の村上虹郎と川越しにちょっとした会話をするところ。
なんせ冒頭なので何気なく流しちゃったが全部観てから思い起こすといやこれが実にこう…リピートか。リピート必須映画か。もっかい観てこよう。

とにかく面白かった!

(文・さわだきんたま)

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なーにが包丁の雨だい渋谷ストリートだいダセェんだよと思いつつ千原ジュニアの身にまとう狂気がやはり凄まじいのでなにがなんでも『ポルノスター』(1998)はおもしろいのです。これとか『その男、凶暴につき』(1989)とかの虚無系バイオレンス邦画の系譜なんだろか『ディストラクション・ベイビーズ』は。

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