隣の芝生はディープブルー映画『マイケル・ムーアの世界侵略のススメ』感想

《推定睡眠時間:0分》

よう! 俺だ! マイケル・ムーアだ! みんな久しぶりだな! 元気にしてたか!
いや~参ったぜ! こないだペンタゴンに呼ばれちゃってよ、なんだお前ら俺にプロパガンダの手法でも学ぼうってのかと思ったら違うんだ!
侵略帝国アメリカも第二次世界大戦以降は負け続き、これじゃいけねぇってんでどうしたら侵略が成功すんのか教えて欲しいんだと!
HAHAHA! バカヤロウそんなの俺じゃなくてディズニーに聞けってんだよな! 『ズートピア』を観ろ『ズートピア』を! あれこそ世界に誇れるアメリカ文化侵略兵器だぜ! 俺みたいなすっかり落ちぶれちまった汚ねぇデブじゃなくて可愛い動物たちがな! ってやかましいわ! 誰が落ちぶれた汚ねぇデブやねん!
HAHAHA!

…なんか一ミリたりともマイケル・ムーアのキャラクターを理解してない気もするが『マイケル・ムーアの世界侵略のススメ』観てきたんで感想垂れる。

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しかしペンダゴンの尖兵となったマイケル・ムーアが次なる侵略地を求めてヨーロッパ大偵察旅行とゆー白々しい設定は別によいのですが何があんま面白くないかとゆーとなんかマイケル・ムーア体型も含めて丸くなってしまっていた…。
いや体型は元からな気もするが、これはゆるい。だってアポなし突撃取材を売りにして出てきた人のくせに全部アポを取ってる! …当たり前か。当たり前だしむしろマイケル・ムーア=突撃の認識が古いのか。考えてみればマイケル・ムーアなんて『ボウリング・フォー・コロンバイン』(2002)ぐらいしか観てないしなだいたい。
でもマイケル・ムーアから突撃を取ったら単なる皮肉っぽい意見広告作家になってまうんじゃないか。その皮肉っちゅーのもまた何世代か遅れたよな古風な…いや、逆にそれがグっとくるポイントなのか。

まずはイタリアに飛んでどっかのカップルにインタビューを試みるムーア。「イタリアでは年間有給が30日あるのよ」と言われて大げさに驚く。なんてこった、アメリカの労働者には有給がないのに!
続けてフランスに行ってみたらこれまた驚いた。なに小学校の給食がフルコースだって!? アメリカの給食なんてマックより酷いのに!
そんな感じであちこち飛んではアメリカとの違いっぷりにいちいち大げさに驚くムーア。ノルウェーの刑務所はまるで天国だ! フィンランドの学校はこんなに自由! ポルトガルはドラッグが犯罪にならない! どこの国の政策もアメリカとは大違いじゃないか!
けれどもそれで社会が悪くなってる風もない…いやむしろノルウェーは再犯率が下がったらしいしフィンランドの学力は世界一、ポルトガルでは薬物の使用率は下がる一方で治療率は上がったそうな…よしこれはなんとしてもアメリカに持ち帰ろう! これぞ侵略! HAHAHA!

かくして侵略の印にアメリカ国旗を立てては各国のドリーム政策を奪い取っていくうちに実は昔のアメリカもなんかこんなんだったらしいとムーアは気付いていくとそんな牧歌的にアメリカンな映画が『マイケル・ムーアの世界侵略のススメ』なのだった。
全然侵略してないだろ。

しかしこりゃあれだな、映画ってゆーかバラエティ番組だな。ムーアたしか『バカでマヌケなアメリカ白人』(1999)とかなんとかいうテレビシリーズ作ってたと思うがその感じなんじゃないか。
へーこんな政策あんな考え方あるんですねぇ世界広いなぁ面白いなぁあとアメリカ人アホだなぁと思いつつ『YOUはなにしに日本へ?』みたいな外国人に学んでみよう系バラエティ以上に踏み込んでる感もなく…隣の家の芝生は青い以上の考えがあるわけでもなく…ムーアがあっちこっち行って驚く&米国ディスを繰り返すだけなのでえらい単調な…もちろんサプライズ展開とか別にない!

いやこれはやっぱバラエティなんだと思い、町山智浩さんがこれアメリカ人のためにマイケル・ムーアが作った映画なんですよと解説してたが、ここで想定されてるアメリカ人観客はビール飲みながらテレビで野球とリアリティ番組見てゲヘゲヘ笑うだけみたいな漫画的アホでマヌケなアメリカ白人なので、チュニジアでジャスミン革命に参加したんだかなんだかの女性のこんな発言をわざわざ使ったりすんである。「リアリティ番組ばかり見てないでネットを見よう! 世界を見よう!」。
なにか、ご老体向けの振り込め詐欺啓発ビデオを見せられてる気分になってくる…。

空母ロナルド・レーガンに乗って(むろん編集でそれっぽく見せてるだけのゆるいギャグ)ムーアがヨーロッパに侵攻! なんて冒頭からして時代錯誤感と加齢臭パないが最後はベルリンの壁の思い出をムーアが語る。俺も壁崩壊の場に居合わせたんだ。あんな風に世界が変えられるなんて当時の俺には信じられなかったぜ…。
今でもまだ息子ブッシュを目の敵にしてるムーア。輝かしきかつてのアメリカを取り戻そうと闘っているムーア。ちょっと泣けてしまう。『ボウリング・フォー・コロンバイン』の時はまだ時代にコミットしてた感あるムーアが今やすっかりドン・キホーテみたいになってしまった。

別にここに出てくる程度のことなら1800円払わないでも適当なニュースサイトでも見てりゃ分かんだろとかバラエティ的に分かりやすい映像並べて扇動するより具体的な統計データ並べて理性的に比較検討することのが大事だろとか言うべきでない。そんなこと言ったら台無し。ネタにマジレス。ドン・キホーテに説教。
足を引きずりながらベルリンの壁を語るマイケル・ムーアの哀愁。内容はわりとどうでもいいがそれが良かったなそれが。

(文・さわだきんたま)

【ママー!これ買ってー!】


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アレックス・ギブニーが監督。なんか今年アレックス・ギブニーのドキュメンタリー映画が二本も日本公開されるらしいんでなんとなく貼る。
いや、でもやっぱこれぐらいの距離感あれよとちょっと思うよドキュメンタリー作家とその映画には…マイケル・ムーアは映画と自分が一体化しちゃってるんだもんさぁ…それが面白いんだろうけどさぁ…。

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あーーー

マイケルムーアすら語れないのに上から目線blogやめたら?w

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