さよならイギリス映画『エンド・オブ・キングダム』寝ながら感想(ネタバレ別に気にしない)

《推定睡眠時間:40分》

英国首相急死の報を受けてロンドンに集結した各国首脳が片っ端から死ぬ。気取り腐ったインテリのフランス大統領がボートと共に爆破! 愛人連れて公私混同のイタリア首相(ベルルスコーニだろか…)がウェストミンスター寺院と共に爆破! チェルシー橋の崩落に巻き込まれた日本国首相は「なにこれ! なにこれ!」とか言いながら情けなく散る!
最高。おもしろかった。ロンドン大破壊から先は寝てたのでほぼ記憶にないが脳内で適当に補完した結果おもしろかった。寝てもおもしろいので素敵な映画です。
ちなみに前作は観てませんが『ホワイトハウス・ダウン』(2013)は観てたのでなんとなく大丈夫でした。

それにしてもすごいですね。米国大統領がアーロン・エッカート、大親友シークレット・サービスがジェラルド・バトラー。この、映画が始まる前からこいつら絶対に死ぬわけないと思ってしまうウンコが太そうな感じ。ジェラルド・バトラーのカミさんまでウンコが太そう女優ラダ・ミッチェルなので死角はない。ラダ・ミッチェルはベイビーを孕んでおりテレビでロンドン大破壊の光景を眺めながら夫の安否を心配しまくってたが、極度の不安と緊張から破水しちゃうんじゃないか! このままでは母子ともに危ないんじゃないか! みたいなよくあるハラハラ感を夫ともども微塵も催させない圧倒的安心感。
最近、お子様が動物園のゴリラの囲いに入って安全のためゴリラが射殺されるという痛ましい事故があったが、ジェラルド・バトラーとラダ・ミッチェルが子供を抱いてたら子供がゴリラに襲われてると勘違いした警官が思わず銃を手にとってしまうんじゃないかと逆の意味で不安になる。まぁジェラルド・バトラー銃で撃たれたぐらいじゃ死なないと思うけどね、胸板厚いし。

胸板も厚いが迫力の市街戦も胸アツ。近衛兵からそこらの警官まで万遍なくテロリストが紛れこんでるロンドンなので(どんなザル警備だよ!)大規模テロ勃発後は紛争地帯みたいになってしまう。詳しく知りませんが所々覚醒して観た感じからすると完全にエスケープ・フロム・ロンドン。大統領機をスティンガーで撃墜するテロリストの図は『ブラック・ホーク・ダウン』(2001)的興奮。予想外に雑な爆破エフェクトも逆に豪快でよろしかろと錯覚させてくれる。
ロンドン大戦争といえば『28週後…』(2003)とかありますがロンドンなら別に壊してもいいし無法地帯にしてもいいっていう映画業界のルールがあるんでしょうか。さすがパンクの国は懐が広い。アナーキーです。

さてロンドンが空前のテロに見舞われているころその首謀者と見られる人物からホワイトハウスに動画メッセージが届いた。今日で世界は変わる。貴様ら西側諸国の支配から我々は解放され…とお馴染みのテロリスト発言。
慌てふためくジャッキー・アール・ヘイリーら政府高官だったが一人だけ冷静に受け止める男がいた。「思った通り…やはり貴様の仕業か…」全てを知る副大統領モーガン・フリーマンである。「ねぇ君、釣りをする意味ってなんだろうね」「はぁ分かりませんが」「だろうね。私も分からないんだよ!」などとすごく無意味なことばかり言う(一応このセリフが伏線ぽくはなってたりはする)くせに無駄な説得力だけはあるモーガン・フリーマン副大統領が司令室のモニター越しに事件のだいたいを説明してついでに解決してくれる。

安心しかない。この米国、この映画、安心しかない。共和党支持者のこの映画支持率きっと90%以上。
こちらも胸板の厚すぎる米国と完璧なハリウッド様式美の世界に安心して寝れたのでやはり米国とハリウッドアクション映画は細かいことを気にしないストロングスタイルがいいですね!

もう内容に関しては半分くらい寝てたのでアンジェラ・バセット超綺麗だなぐらいしか言う事ないがこれは監督が面白く、ババク・ナジャフィとかいうテヘラン生まれスウェーデン育ちのイラン人監督。なんだその複雑感は。この内容でオファー受けたナジャフィは祖国と米国に何を思うのか…。
映画は米国はんがテロリストやっつけてくれて良かったね的に終わるがこれは確実にイギリス存続の危機。首相が暗殺されてるうえ右から左まで買収されてるかテロリストが潜んでるのでエンドロール後にイギリス社会がどうなったか気になってしまう。
内容もおもしろかったがそれ以上に画面に映らないことの方がおもしろいという映画なのだった。

あれだな、しかし物理的にも社会的にもちゃんとイギリスが壊れるので『エンド・オブ・キングダム』の邦題は嘘ではなかったが、これには『GODZILLA』(1998)でゴジラの概念を壊し『インデペンデンス・デイ』(1998)でホワイトハウスを壊し『2012』(2011)で地球を壊し『もうひとりのシェイクスピア』(2011)で歴史を壊し『ホワイトハウス・ダウン』で再びホワイトハウスを壊した破壊王ローランド・エメリッヒも悔しい思いをしてるに違いない。
もし続編があればたぶんEUが壊れてしまうので是非エメリッヒに『エンド・オブ・EU』撮らせてあげてください。あれだろ中国資本入れればいけるだろ!

(文・さわだきんたま)

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都市部のテロが描かれる点、とりあえず豪快に爆破してみる点、胸板の厚い男たちのバディムービーである点、更には前作が閉鎖空間バトルだったのに今回は市街戦である点やテロリストの言うことがまったく同じである点など…共通点しか感じないぞ『ダイハード3』と『エンド・オブ・キングダム』は! 唯一の違いはアフリカ系枠がモーガン・フリーマンかサミュエル・L・ジャクソンかってことぐらいだろ!
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