映画『サウスポー』の感想と見せかけてのジェイク・ギレンホール考(ネタバレ一切なし)

《推定睡眠時間:60分くらい》

在りし日の新橋文化劇場でダラダラ適当に二本立てで観たい程度にはおもしろかった気もするが、別に疲れてるわけでもなかったのになぜだか堪えきれない程の強烈な睡魔に晒され続けまぁ寝る寝る。
普段ならまぁいいかとスヤスヤ素直に眠るがしかし待てジェイク・ギレンホールがリング内外で闘ってる。ジェイク・ギレンホール…これがスタローンなら逆にスタローンならいけるやろと思いその大いなる包容力に甘んじて安眠できるがジェイク・ギレンホールが再起をかける落ちぶれボクサーとくればやはり不安で安眠できない。

最近『プリンス・オブ・ペルシャ』(2010)、『エンド・オブ・ウォッチ』(2012)なんかで頼れる兄貴の側面を見せたとはいえ元は『遠い空の向こうに』(1999)、『ドニー・ダーコ』(2001)の心身共に脆めのなにやら鬱屈を抱えた人であり、そうか最近はすっかり落ち着いたんだなと思ったが『ナイトクローラー』(2014)を観ればやはりお薬の処方が必要な人には違いないと再確認。
そのジェイク・ギレンホールが闘ってる。俺にできることはなにか。せめて応援してやることだろう。松岡修造も頑張ってシジミを取ってる。ジェイクが闘うなら俺も睡魔と闘うよ!

でも結局は睡魔の猛攻に屈した上に悪眠だったので映画が終わっても眠くて眠くて仕方が無い。ジェイク・ギレンホールのファイトスタイルはノーガード猪突猛進打つべし打つべし打つべしなので試合後はいつも顔面血塗れで後遺症が心配になるが、痛みを眠さに変換しつつこちらもその辛さを共有してしまった。
寝ないで映画を観ようとするだけでもこんなに大変なんだから、12ラウンドもリングに立ち続けるボクサーって大変なんですね!

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つまりまぁエロイ奥さんがいて可愛い娘がいてデカイ家があって目下連勝中のイケイケボクサー、ジェイク・ギレンホールだったがなんやかんやあって大好きな奥さんが死んでしまった。大ショック。そして大スランプ。テメェじゃもうダメだな金になんねぇなとプロモーターから見放され金も豪邸も娘も失ってしまう。もうダメなのか俺は…とそのとき彼は下町トレーナーのフォレスト・ウィテカーと出会って再起をかけるとなんかそんなお話だろうと思われる…が!
ストーリーを追おうと思ってもその度に睡眠によって理解が中断されてしまうので途中から諦めてボヤボヤとジェイク・ギレンホールのことばかり考えていた。よって詳しいことは皆目わからないがまぁ別に入り組んだストーリーあるわけじゃなさそうだからその程度の理解で問題なかろう。
ジェイク・ギレンホールが必死に頑張る! ストーリーがその一言で要約できて適当に感動できるイイ映画です。あとフォレスト・ウィテカーの堂に入った名伯楽っぷりとか面白かったよねあんま観てないけど。

しかし人生の奈落に落ちてしまったジェイク・ギレンホールがウガーと鏡を叩き割るがシーンがあったが、これはジェイク・ギレンホールの十八番とも言え「ヨシ!」と思わず頷いてしまった。
ジェイク・ギレンホールと鏡の関係は深い。こないだの『ナイトクローラー』でも感情が抑制できず怒りに任せて鏡を割ってたが『ミッション:8ミニッツ』(2011)では鏡に映った自分を見てパニックになっており、そもそも『ドニー・ダーコ』の時点で既に鏡を見て鬱屈を爆発させるシーンがあった。
鏡が映すのは当然もう一人のジェイク・ギレンホールなので、ジェイク・ギレンホール一人二役のドッペルゲンガー映画『複製された男』(2013)なんて直球もあったがジェイク・ギレンホールが正体不明の連続殺人鬼ゾディアックの謎を解き明かそうとするあまり精神がゾディアックに犯されジェイク・ギレンホール憔悴の図が繰り広げられる『ゾディアック』もジェイク・ギレンホール的な鏡モチーフ分身モチーフのバリエーションと言えるのかもしんない。
見えざる敵の悪意にジェイク・ギレンホールはジェイク・ギレンホール自身を見てしまったんである。

するとそこに『ジャーヘッド』(2005)まで加えることもできるだろうが、つまり鬱屈俳優ジェイク・ギレンホールの鬱屈とは自己嫌悪から生じており、かくも鏡モチーフ分身モチーフが頻出してしまうのはジェイク・ギレンホールがジェイク・ギレンホールを受け入れられないことの逆説と言えるのではなかろか。
ジェイク・ギレンホールはジェイク・ギレンホールではないとの逃避こそがその目に映る世界の全てに無数のジェイク・ギレンホールを投影してしまい、かくしてジェイク・ギレンホールには常に「世の全ての出来事の責任はお前にあるのだ」と耳元で呪詛の言葉を囁くジェイク・ギレンホールが付きまといジェイク・ギレンホールとジェイク・ギレンホールの終わりなき闘いが繰り広げられることになんである。

その行き着く先が逆に世界に対する共感の一切を欠いた『ナイトクローラー』の荒廃ジェイク・ギレンホールだとすれば、その最もエレガントな表現はおそらくジェイク・ギレンホールが過去の悲劇をひたすら反復しながら自責の念に駆られて憔悴、やがて死とジェイク・ギレンホールならざるジェイク・ギレンホールとしての転生を待望するようになる『ミッション:8ミニッツ』じゃないだろか。

ボクシングは自分との闘いだとロッキー/スタローンは言った。もう一人のジェイク・ギレンホールとの闘争史がすなわちジェイク・ギレンホールのフィルモグラフィーであるとすればジェイク・ギレンホールが己と闘うボクシング映画への出演は至極当然の帰結であり、ぶっちゃけ細かいこととかどうでもよく『サウスポー』はボクシング映画、いやジェイク・ギレンホール映画として完璧におもしろいんじゃなかろか。
誰が見ても事故なのに奥さんの死に超絶自責の念を感じて悶えまくるジェイク・ギレンホール。リングの上で行き場の無い怒りを発散しながら傷だらけになるジェイク・ギレンホール。鏡に映ったジェイク・ギレンホールをぶん殴るジェイク・ギレンホール。あらゆる場所にジェイク・ギレンホール!
ジェイク・ギレンホール映画的にはこれで万事オッケーです。

それにしてもこの文中のジェイク・ギレンホール率。だんだんとジェイク・ギレンホールがゲシュタルト崩壊を起していくがこれこそジェイク・ギレンホールを語ろうとする人間すらジェイク・ギレンホールはジェイク・ギレンホールで満たしてしまいやがてジェイク・ギレンホールの概念が解体されてしまうという恐るべきジェイク・ギレンホール性をなにより雄弁に物語るのだジェイク・ギレンホール。
これはもうジェイク・ギレンホールではなく『ドグラ・マグラ』みたいな気もするが、それはそれでジェイク・ギレンホール主演の『ドグラ・マグラ』が観たくなってしまうのでやはりジェイク・ギレンホールは恐ろしいのだ! チャカポコ!

結論:ほぼ観てないので『サウスポー』についてはよくわからないジェイク・ギレンホール。

(文・さわだきんたま)

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姉妹編みたいな『ドニー・ダーコ』と『ミッション:8ミニッツ』を二本立てで観れば気分はすっかりジェイク・ギレンホール。
あれもジェイク・ギレンホール。これもジェイク・ギレンホール。それもジェイク・ギレンホール。きっとジェイク・ギレンホール!

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