映画『64 ロクヨン 後編』に説教されたんで反省文的に感想書く(ネタバレございません)

《推定睡眠時間:15分》

やはり寝てしまった。前編の方は上映時間の半分以上だったのでこちら後編はたかだか15分程度と可愛いものだったが、これはなにか『64』という映画自体に目に見えぬ誘眠作用があるとしか思えない。やかましく怒鳴り合うばかりの映画と見せかけてそんな仕掛けがあったのだ。すごい。
ほんであの前編ほとんど観てないのですが後編は冒頭にちゃんと前編ダイジェストが付いてくる。このような配慮は実に嬉しくあぁこんな話だったなと頭の中で整理ができスムーズに映画の中に入っていけたが、色々あったがお話の要点はここですよと見せられるとじゃああの前編二時間はなんだったんだよ5分もかからなかったじゃねぇかとも思ってしまうのでなんていうかあれだなほら俺はもう映画観るのに向いてない人なのかもしんないすねはい。

そんな『64 ロクヨン 後編』の感想(前編の感想

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ところでキービジュアルが川辺にポツンと佇む公衆電話。なにかなと思ったらこれはあれか滝籐賢一のセリフにもあるが現代の象徴たる携帯電話と対比される時代に取り残されたものの象徴だったのか。ロクヨン関係者みんなの魂はあの公衆電話の中に閉じ込められたままなんすよとそのよなイメージ。
カッコいいなこれ腐っても瀬々敬久。『ストレイヤーズ・クロニクル』(2015)のパワフルな落胆体験が記憶に新しいが強靭なイメージひとつであらゆるツッコミを強引にシャットアウトしてしまうのでやっぱすごい人なんだなぁと思ったりしたのだった。

従ってなんでやねん的な場面が頻発しつつまぁそんなものかとこうなる。ほらあのロクヨン模倣犯が電話するときにヘリウム使うとことか。すごい長電話のため途中で用意したヘリウムが切れてしまい裏声を搾り出しながら苦悶の表情を…ってオモチャのボイスチェンジャーとか使ったりすればいいだろ! と思いつつもそのよな余裕がない人たちのお話であり、苦痛を堪えながら裏声を搾り出すの見てるとあぁこの模倣犯は心にひどい苦しみを抱えてるんだなぁと思えてくるからこれでいいのだ。
あるいは事件の結末とか。これはなんというか…いや犯人見つかったはいいがそれで起訴できんのかよみたいな。しかし一件落着昭和は終わった、これからは平成の世だお前ら次の世代が頑張れよな! と力強く肩を叩かれるよな大団円感なのでそうやっていちいちあげつらうのは野暮というものだろう。これでいいのだ。

…ヤラれているこれはヤラれている! パワハラの横行する映画だが観てるこちらも画面越しにパワハラを受けてる気分になる! いいかそんなもの甘えだお前は間違ってる俺を見習えとサシ飲みで怒鳴られながら説教されてる気分になり反論できなくなってしまう!
さすがオヤジ映画! 前編の方は(俺が起きてる間は)絶えることのない怒鳴り合い罵り合いを見せつけられこれが働くということか大人社会で生きるということかと大いに勉強になったが後編の方もこのバイタリティと傲慢こそ弱肉強食の世で生きるに必要なのかとか、あとこういう警察の体質が冤罪生んだりこういう記者クラブの在り方が報道自由度の低下を招くんだろなとかの学びを得ました! ありがとうございます!

と、表面上取り繕ってはみたがやはり本音では「あんたが大将」を歌いたくなるよな映画ではあった。

だってほらあれっすよ、追い詰められた人があまりにも容易く失神したり発狂するのはいかがなものか。スケープゴート的に記者会見の場に立たされたヘナチョコ刑事・柄本祐が中央メディアの記者(だったはず)のありえないほどの罵詈雑言大攻勢に耐えかね失神て…いやあるかもしれないが! 無いとも言えないが! しょせんフィクションというのも分かってはいるが! でもいくらなんでも表現が古すぎるだろ!
ロクヨン模倣事件の被害者の父親がパニックになってウワァーってなるとことか! いや、これはまぁちゃんと理由があったが…いやしかしあるとしても…古いよそれやっぱ絶対古いよ古いしリアリティとかないよ!

いあやまぁ映画にリアリティとかいらねぇよとは常日頃思ってますがぁ! でもさぁ! なんつーか許容できる映画の嘘って国とかジャンルとか時代によって範囲と種類が変わってくるもんだと思うんですよぉ! それをこう…全部はみ出ちゃったみたいな! はみ出してるけど本人気付かず超シリアス大真面目みたいな! 俺はどうすればいいんだよこういう映画と対峙したときに!
いやなんかもうちょっと居たたまれない気持ちになったよ正直! ほらあの…あれだ! 前に銀座の喫茶店で本読んでたら隣で若手SEとその上司だかが話してんの耳に入ったんですよ! SEはこんな問題発見しましてこのままでは大問題と事の詳細を話してるわけですよ! それ聞いて上司は言うわけですよ! 「えーと、今サーバーって言ったけどサーバーってパソコンのこと?」。
…あのときのSEの表情がこれ見てるときの俺の表情だよ! そんなオヤジにお前は理屈ばかりで魂がないとか説教されるみたいな映画だよこれは! もう歌うしかないだろ「あんたが大将」! 武田鉄矢テメェこの野郎すっかり自分が大将になりやがってよぉぉぉぉ!

結論。オヤジ性が爆発してておもしろかったですはい。110分ぐらいでスマートにまとめらんねぇのかよとか言うな。スマートだったらオヤジじゃねぇよ泥臭くなかったらオヤジじゃねぇよだからこれでいいんだよ!
誰からも存在を忘れられて尚そこに存在し続ける公衆電話に、そこに込められたオヤジどもの魂の叫びに、泣け!

(文・さわだきんたま)

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