黒海街diary映画『裸足の季節』観たので感想をキャピる(ネタバレ若干注意)

《推定睡眠時間:0分》

黒い『海街diary』(2015)じゃないです。トルコは黒海沿岸の小さな村のお話です。
詳しい事情は知らないが、母親が死んで黒海街の親戚に引き取られたらしい五姉妹。うわー! ほぎゃー! どわぁー! ともうとにかくこいつら毎日が大騒ぎで片時も大人しくしてられない。なぜならイスラムに則った因習が黒海街を支配してたから。女子たるもの貞淑たるべし、おしとやかにするべし、男の命令に従うべし、じゃないと殴るぞしまいにゃ殺すぞクソビッチどもとそんな具合に怖い伯父さんと怖いババァからバイオレンス込みで抑圧されまくってんで、その反動から五姉妹は暴れまくってたのだった。果たしてかしまし五姉妹はバイオレンス伯父さんと因習に打ち克ちキラキラすることができるんだろか…。

あれだな、保守的な田舎は怖いという映画で姉妹が主人公なんだからやっぱ黒い『海街diary』だな。本当は怖い『海街diary』。そんな感想。

ところであれどこでしたかねサウジだったかな、なんか女性活動家が車を運転する動画をyoutubeに投稿してセンセーションってのあったな。
サウジ女の人の運転禁止か。世の中いろんな考えあるな。ほんでトルコは世俗主義の国でイスラム世界っつっても女の人キラキラしとるがなというが、そんなの都市部だけじゃん田舎の方じゃやっぱ女の人の権利制限されまくりじゃんとトルコ出身フランス在住のこの監督デニズ・ガムゼ・エルギュヴェンさんは思ったらしいのだった。

なので車、女の人が車を運転すること、たぶん例のサウジの女性ドライバー動画は念頭に置かれてるが、それまでバイオレンス伯父さんカーの後部座席に押し込まれてた五姉妹が自らハンドルを手にして走り出す場面のアゲアゲ感は『マッドマックス 怒りのデス・ロード』(2015)に匹敵する。表面上対立しつつも五姉妹に対因習ゲリラ戦術を伝授し陰で共闘するババァのカッコよさも『マッドマックス 怒りのデス・ロード』のババァ・ウォリアーズに匹敵。
つまり『海街diary』というよりこれはトルコ女子版『マッドマックス 怒りのデス・ロード』なのだった。いやむしろトルコ女子版『わらの犬』(1971)にさえなってたが、そうでありつつトルコ女子版『ひなぎく』(1966)かつ『スプリング・ブレイカーズ』(2012)で『大脱走』(1963)だったりもするというキラキラしたバイオレンスな戦争映画だったんである。どんな映画だ。

まぁしかしヒドイもんで男の子と水遊びして近所の柿盗んだだけで一人一人折檻タイム。物凄い剣幕で五姉妹をお仕置き部屋に引きずりこんでくババァに恐怖。しかしそんなことでへこたれる五姉妹じゃないのでこちらも負けじとババァ開けろババァてめぇババァやめろババァババァ! とボカスカ扉を殴りながらの大抗議。
もちろん余計怒りを買ってパソコン禁止アニメ禁止オシャレとか禁止っていうか楽しそうなもの大体禁止とこうなるが、家で遊べないならと伯父さんから禁止されたサッカー観戦のために脱走し三河屋さん的近所の若造の配送車をジャック、処女のまま勝手に結婚させられる慣わしなので見つかったら名誉殺人のラインすら見えてくるのに夜毎どうでもいい男と逢引、とそんな感じで理不尽すぎる現実に不屈の闘志で五姉妹は抵抗する。
伯父さんの方も引っ込みがつかなくなってしまったのでやがて学校に行かせてもらえなくなり窓には鉄格子がハメられてしまう。もう軟禁なんじゃないだろか。しかしそうなったらそうなったで来客のコーヒーにツバ入れたりの弱々しいが飽くなき抗議活動が続くんであった。

これが本当の女子力か。あのちなみに巷で言うところの女子力はあれですね、パンク五姉妹をなんとか矯正して嫁に送れるようにすべく雇われたバイオレントじゃない方のババァが叩き込んでましたね。伝統料理とか礼儀作法とかね。うーん、この…。

んでまぁこんな決死の抵抗にも関わらず結局は五姉妹の一人一人が望まぬ結婚をさせられたり自殺に追い込まれたりするってな過酷なお話なんですが、五姉妹が闘うバイオレンス伯父さんは全くユーモアがない。伝統とか因習などというものにはそもそもユーモアがない。
そんなものにマジになっちゃったらこちらの負けを認めるようなもんなんで、隙を突いてはユーモアが顔を出すフランス式エスプリのゲリラ戦と映画はそのよな様相を呈してくる。

命がけの密会を続ける次女だかと未経験の三女だかがこんなこと話してる。「処女じゃないってバレたら殺されるよ」「処女だよ」「だってヤってんでしょ」「後ろでヤってんの」。
自宅で仕事をしながらテレビのサッカー中継を見ようとする伯父さん。なんとなしにテレビを見たババァ仰天、そのあたりで大人しくしてるはずの五姉妹が観客席にガッチリ映ってる! 禁を破ったことに伯父さんが気付いたら五姉妹を殺しにかかるに決まってんので咄嗟のダイナミック判断でババァはブレーカーを破壊する。
過酷だなぁ大変だなぁと心を痛めながら見ていると、カメラはちゃっかり末っ娘の履いた超キュートなネコネコ靴下を映したりして笑いを誘うのだった。
あぁそうだネコネコ靴下といえばこれはファッションが良かった。キツイ制約を掻い潜ってギリギリのキュートを追求する五姉妹ファッションに女子魂が。

笑いもあったがエロもあった。こう、五姉妹が男子禁制の自室で生足絡ませてふざける場面とか超絶エロかったね実に。
分かりますか、AVとかの献身的エロじゃないんですよ。フランスといえばストリップ・ティーズ、クレイジー・ホース。あのエロよあのエロ。自立と拒絶のエロ。全然ヌケない感じのあぁ美しいですねって眺めるしかないエロですよ。色々と題材がセンシティブな映画なのでここは強調しておきたい。

これは、そのよなエロで闘うアクション映画。エロと笑いを武器にした戦争映画。私たちは超エロいけど別にお前たちのためにエロくなってんじゃねぇから勘違いしてんじゃねぇよハゲ死ねと全裸で街を闊歩しながら下らない常識と偉そうなバカ男どもを挑発して笑いながら突き放す、そんな映画じゃなかろか。
やたらカットの多い目まぐるしい躁編集も抵抗戦略の一環か。跳んで走って笑ってそしてエロ。抑圧女子エネルギー爆発。そしてなにがなんでも車は運転できるようにしておけ、大学も行ってなければそもそも地元から出たこともなさそうな近所の三河屋さん的な若者は意外と役に立つので友達になっておけ、などとイスラム世界のみならず因習と退屈でがんじがらめの田舎でサヴァイブするための知恵の詰まった、これは確かに『海街diary』が決して教えてくれなかったことを教えてくれる黒海街diaryなんであった。

(文・さわだきんたま)

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『裸足の季節』はフランス映画ですがこれもやっぱフランス映画。共通項多しなイラン出身の女性監督の半自伝的アニメ。子供の頃は欧米的自由堪能、しかしイスラム革命が勃発してから自由がなくなってしまった。そんなわけで家族に言われるまま単身ウィーンに亡命したがやっぱなんか馴染めんなぁ家族の待つイラン戻ろうかなぁ…とそのよな人のお話。捻くれた絵柄がキュート。「アイ・オブ・ザ・タイガー」に笑う。

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