映画『貞子VS伽椰子』に現代社会の歪みと荒木飛呂彦を幻視する感想(ネタバレなし)

《推定睡眠時間:0分》

『貞子VS伽椰子』、あれかタイトルからすると『フレディVSジェイソン』(2003)みたいな映画か。いや『エイリアンVSプレデター』(2004)か。それとも『座頭市と用心棒』(1970)か? …いや違う! こ、これは…『ドラゴンクエストモンスターズ』だ! 『ドラゴンクエストモンスターズ』! 『ドラゴンクエストモンスターズ』やってる気分になる映画だったと言えばネタバレになるんすかね! どうすかね! まぁいいや知らねぇよ! 色んな技とか耐性を継承させてな、一生懸命作った俺の魔王パーティをな、通信ケーブル繋げてな、さぁどうだと友達のパーティと戦わせてる感じの! あれだよあれ! あれが『貞子VS伽椰子』だったよ! なんかそういう感想だよ!

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それにしてもだな、貞子なんて『リング』(1998)で見て以来だったがだな、お前オレが知らない間に随分進歩したんだな! スマホ使えるんだ! テレビ使わないでも自由に出てこれるんだ! 髪アタックなんて新技も使えるようになったのか! それに憑依も!
いやぁ…『リング』の頃はケータイ画面で呪いのビデオ見たら小ちゃい貞子出てきて可愛いやんと松本人志にネタにされてたが、もうバカにされる心配ないな!
アマゾンで買った商品が即日配送の今の時代、かつてはユーザーが呪いのビデオを見てから配達まで一週間かかった貞子もたった二日で来ます! 貞子、立派にネット時代に適応しました!

ほんでそんな先進的な貞子に比べて俊雄くんと伽椰子さんですが…確か『呪怨』シリーズはハリウッドリメイク版しか観てないから怪しいが、なんだこれは、もしかしてビデオ版の一作目から全然変わってないのでは…?
相変わらずの廃屋でいつまで経っても変わらぬ生活を送る二人。メディア戦術を駆使して新たな顧客の獲得と囲い込みに余念がない貞子に対して俊雄と伽椰子はあくまで地域社会に根ざした地道な活動を続けてる。
個人営業のビデオ屋はTSUTAYAに取って代わり、代々続く古本屋はBOOKOFFに淘汰されてしまった。地域の独自性と共にコミュニティも失われ地方経済は衰退の一途だが、それと同じ構図がここにもある。俊雄&伽椰子とイノベーティブ貞子の対決に地方再生の鍵があるのかもしれない。

EUのブレグジット問題、アメリカのトランプ旋風、移民問題に揺れるドイツ、そして戦後レジームからの脱却を掲げる安倍政権に対する野党や市民連合の反発…折りしも各国で保守とリベラルの対立が激化しているが、キナ臭さを増すばかりの世界情勢に映画もまた無縁ではいられない。
古臭い井戸を飛び出し貪欲に新技術を吸収しながら変革を続けグローバル展開を目論む貞子。その野心が貧乏ボロ家で昔ながらの慎ましい生活を送る俊雄と伽椰子を捉えたとき、亡霊界を二分する保守とリベラルの一大抗争が勃発する。
『ドラゴンクエストモンスターズ』ではなかった…『貞子VS伽椰子』は現代を照射する社会派映画だったのだ!

いや戯言はどうでもいいのですが面白かったっすねこれ。貞子も伽椰子もシリーズ全然観てないから詳しい人が観たらどう思うか知りませんが、ザッツ・エンターティンメント! みたいな感じで。
呪いのビデオが全然怖くないのはどうかと思うがそれ以外はほどよく怖くてほどよく笑えてとても楽しい。安藤政信の霊能者がカッチョよくそして女の子が可愛い。なにやら市松人形めいた玉城ティナのコワカワにはヤラれる。
あれだね職人芸ですね職人芸。逆にトンだ映画を期待すると裏切られますが。

白石晃士の映画ってあんま観たことないんですがたぶんいつもの感じなんじゃないすか『貞子VS伽椰子』も。展開詰め込んでさ、フィジカル志向でさ、そんでなんかやたら濃いキャラ出てきてさ、あと基本的に人間が安いみたいな。
だって呪いパニックの発端とかめちゃくちゃ酷いからな。雑に生きてる人がそれ見たら死ぬって噂知ってんのにたった600円で呪いのビデオ売り捌いて…あとクソ小学生どもの扱いも酷かったなぁ。井脇ノブ子みたいな霊能者の徐霊法が呪われた人に水ぶっかけてひたすら殴るだけとかだし…なんだよこのやさぐれた人間観! すごく良いですよねこういうの!

つかあれだな貞子も俊夫も伽椰子もオール物理攻撃で攻めてくるんで呪いってなんだっけみたいな感じになってくるが、これはあれだろ『AKIRA』で超能力が見えないのが不満だったのでスタンドとして超能力を具現化した荒木飛呂彦と同じ考え方だろ。
いやそもそも、貞子の憑いた山本美月と俊夫・伽椰子の憑いた玉城ティナが因果の糸に導かれ電撃遭遇を果たす展開…これはまさに「スタンド使いは惹かれ合う」じゃないか! タイトルは違えど微妙に世界観を共有する白石作品だが…ジョジョ各部に対する荒木飛呂彦のアプローチと同じじゃないか!
…白石晃士は荒木飛呂彦だった!?

論点が散らばってしまったのでまとめますが『貞子VS伽椰子』は『ドラゴンクエストモンスターズ』でありつつ現代社会を抉った社会派映画でありつつジョジョの四部ぐらいでありつつ白石晃士は荒木飛呂彦です。
ちなみに僕の好きなスタンドはスーパーフライです。『ドラゴンクエストモンスターズ』ではワイトキングとか使ってました。
以上。

(文・さわだきんたま)

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一作目の頃は実体があるのか無いのか分からないフワフワした存在だった元祖スラッシャー殺人鬼(異論はありましょうが)のマイケル・マイヤースくんですがシリーズが下るにつれてどんどんフィジカルな存在になり、殺人技術は飛躍的に向上したが同時に殺す理由も意味も失ってやがてプロの派遣殺人鬼みたいになってしまった。

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