映画『ウォークラフト』はダンカン・ジョーンズの『レッツ・ダンス』なのだ感想(ネタバレなし)

《推定睡眠時間:断続的に計10分》

『月に囚われた男』(2009)、『ミッション:8ミニッツ』(2011)のダンカン・ジョーンズ監督初の大作ってんでこれは期待する方が悪くそら月男と8分間に続く何かをついつい期待したくもなるが世の中そんな甘いわけないだろ!!!
それに考えてみたまえ! ジョーンズの親父デヴィッド・ボウイが果たしてアベレージヒッターだったかと! 違うだろ! 終生変態を続け当たる時は場外ホームランだが外れる時は場外ファールだろ! ティン・マシーンはどうなんだティン・マシーンは! 俺はティン・マシーンも好きですが!!!

しかしボウイと違ってダンカン・ジョーンズは堅実な人なのでつまり『ウォークラフト』は何かというととても普通とても普通の…それなりに面白いがでもそれなりの面白さなんてダンカン・ジョーンズに期待してないのに…でもまぁ世の中そんなもんかそんなもんだよな人気ゲーム原作の映画をこれぐらいそれなりに面白くまとめたダンカン・ジョーンズやるなと思いつつの…こう、なんか凄く煮え切らない感想だよだって映画も煮え切らなかったんだもんしょうがないよ!

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そんでまぁ原作ゲームはやったことないんで知らないんすけどなんかゲームっぽいなと思ったのは色んな職業色んな種族色んな舞台とか矢継ぎ早に出してくる。はぁオークですか、ドワーフですか、魔法使い、戦士、ファルコン、城塞都市、天上世界、なんかいっぱいおるな。
80年代のSF映画とか好きなんすよとか言うダンカン・ジョーンズなので『月に囚われた男』とか『ミッション:8ミニッツ』はわりとゆったり丁寧にストーリーを語るよな感じあったんですが、ほんでミニマル美学というか限られた舞台の中でキャラクターとか展開とかコツコツ作り込んだりする感じあったんですが、『ウォークラフト』の方は逆にそれほど作り込まないというか、雑なとこあっても広大な物語世界をとにかく見せることを主眼に置いてるよな感じある。

だから結構、二時間ぐらい上映時間あんですが色々足りてないような。なんかな、俺が原作ゲーム知らんからなんでしょうがオークの魔王みたいなヤツ何者? みたいな。魔法ばっか使ってるから魔力にパラメータ全振りの軟弱野郎なんだろうと思ったら殴り合いの決闘にもちゃんと応じる肉体派。潔くて良いがどんなキャラやねんと思う。チートコード入れてんのか?

あとほらゲーム原作なのに意外と戦闘がショボイとか…なんとなく、なんとなくどうせガキが観るんだからファンタジー世界でドンパチやってジョーク言ってりゃいいだろとまで吹っ切れることもできず、ちゃんとしたお話を語ろうはするがしかしそれには説明も時間も足らなかったみたいな、そういう煮え切らなさ。
ある意味、良心。いや嫌いじゃないんですこういう良心。あるいは矜持。俺はリブート版『ファンタスティック・フォー』(2015)だって嫌いじゃないからな。あの映画には良心があるんです作家としての良心がそして矜持が…!

なんつーかこれはつまり誰かが言っていたが『グランド・セフト・オートⅢ』と『メタルギア・ソリッド2』の違いのよなもんじゃなかろか。グラセフは広い広い舞台でなにが出来るかを追求して他方メタルギアの方はごく限られた舞台の中でなにが出来るかを追求すると。
そのたとえが既に古く最近のゲームに全然ついていけてないことがバレてしまうが、とにかくメタルギアの小島秀夫でさえ『メタルギア・ソリッド ファントム・ペイン』において微妙なオープンワールドに結局は舵を切ってしまったようにダンカン・ジョーンズもオープンワールドに舵を切らざるを得なかったのだ。世界に売るつもりの大作ってそういうもんでしょうたぶん。

ファルコンに乗ってあっち行ったりこっち行ったりすんの良かった。人間の王様(ドミニク・クーパー)のバカっぽさが懐かしい味。主人公のオークのカミさんとかええ感じよねカッコ良くて。ちょっとしか出てこないドワーフが癒し。
天上世界とか『薔薇の名前』(1986)っぽい大図書館とかワクワク冒険感あり…あぁ面白いのにな! うーん、面白いのにな! 面白いのに…なんかやっぱり物凄く歯痒いこれは歯痒い実に歯痒い! 全然知らない人が監督にクレジットされてたらもっと楽しめたのに! だってダンカン・ジョーンズだもんだからさぁ…。

あれだな小島秀夫といえばだな、もう思い出すだけで悲しくなるがだな、『P.T.』、『P.T.』だ…『サイレントヒル』待望の新作『Silent Hills』のプレイアブル・ティーザーのはずだった『P.T.』だ…。
『P.T.』、めっちゃ怖かったな。同じ廊下を延々ループするだけなのにな。大した操作も出来なくてゲーム性ほとんどないのにな。でもあれ『サイレントヒル』っぽかったよ。あれでいいじゃん。あれが面白いんじゃん。あれが…あぁもし『Silent Hills』が制作に入っていれば! CRサイレントヒルなんか出してる場合じゃねぇだろコナミこの野郎!
いや『Silent Hills』はもういいがダンカン・ジョーンズの『P.T.』が観たかったと、面白いは面白いが『ウォークラフト』を見ての素直な感想はやっぱそうなるわけなんでしたとさ。

あぁそうか…これはあれだ、『月に囚われた男』がボウイにとっての『スペイス・オディティ』もしくは『アッシェズ・トゥ・アッシェズ』だとするならジェイク・ギレンホールが悲惨な8分間の記憶に囚われる『ミッション:8ミニッツ』は終末まであと5年の強迫観念に囚われたジギー・スターダストであり、そしてダンカン・ジョーンズがカルト映画作家からメジャー映画監督への飛躍を図った『ウォークラフト』はボウイがカルトスターからの脱却を図った『レッツ・ダンス』なのであった。

そう考えればボウイが90年代に『アウトサイド』『アースリング』と名盤を連発したようにダンカン・ジョーンズの未来も明るい。その前にティン・マシーン化する可能性もあるがそれはそれでいいんじゃないですかね! がんばれダンカン・ジョーンズ!

(文・さわだきんたま)

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