映画『ハイ・ライズ』観たので感想書く(居眠り注意・ネタバレなし)

《推定睡眠時間:35分》

シネマライズでハイライズ、と誰も言いたがらないが心の底では誰もが言いたくて仕方がないに違いないうえ『クラッシュ』(1996)でバラード教の信仰告白をしたデヴィッド・クローネンバーグの息子ブランドンのデビュー作『アンチ・ヴァイラル』(2012)、こちらもバラード的ディストピア否ユートピアを遺伝子レベルで受け継いでしまった倒錯SFを上映したのもシネマライズだったのですからJ・G・バラードの代表的な一作をすごい今更映画化した『ハイ・ライズ』、やっぱりシネマライズで観たい感じはあったのですが既に閉館。

ってことで旧ライズすぐ近くのヒューマントラストシネマ渋谷に観に行ったんですが、なにがあったのかこれが普段の何倍かぐらいの大混雑っぷり。動線よりデザイン優先な感じのファッションビルの上階にあるので列にならない列で通路は塞がってしまうし、入り口のエレベーターはほぼ一機しか稼働してないのでスムーズな出入りが出来ず大変詰まっている、二台ある案内モニターは故障中なので上映時間や販売状況がわからず混乱に拍車、空調が悪いのか場内がやたら暑かったが飲み物を買おうにもそれどころじゃない行列なので売店は使えないしビル自体に自販機も置いてない。

これは困るが、なにが困るってレストランがあってカフェもあって書店もエステも音楽教室も映画館もフィットネスジムも全部あるビルなのにちょっとした喉の渇きを癒すことすらできない、けれども下の階のレストランでは普通に気取った渋谷人が食事をしているし最上階のフィットネスクラブではむしろ汗を流して水分を浪費しているという状況があまりに『ハイ・ライズ』過ぎるので困る。

要するにこれはそういう状況に置かれた金持ちタワーマンションの話らしいのですが、このですねここで巻き起こる乱痴気暴動はですね停電によって発生し一本のフィルムによって加速するというわけでバラード映画上映してたら映画館自体がバラード世界みたいになっちゃったのバラード拡張現実の趣、なんかとてもおもしろかったです爆音と4DX超えたと思いますよね体感度って意味で。

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映画の内容にほぼ触れないうちになんとなく感想が終わるところでしたがたぶん一番大事なところで寝てるのでよくわからなかったというのが俺の感想です。なんでみんな狂ったんだろうと考えてるうちにエンドロールに入りました。世の中そんなもんだろうと思いますたぶんきっと。

それであのイギリス映画っぽく皮肉織り交ぜぇの淡々としぃのグロテスク趣味ありありぃのみたいな感じだったんですけど、思ったより血が出てびっくりしましたよ血が出て。もうね冒頭からグロ死体笑いですものなにあの死体なんか『殺し屋1』(2001)にあんな感じの死体出てたなっていう感じの(こっちもマンション映画だった!)

で、このマンション居住階層即階級らしく、三人の違った階に住む住民が出てきてこの人たちの関係性を通してマンション共同体崩壊の原因を語らせている、らしい。
その三人。トム・ヒドルストンは感情見せない人でこわいかっこいい、どんどん人格崩壊してくルーク・エヴァンスはこわいきたない、杖振り回すジェレミー・アイアンズはこわい哀愁そしてクローネンバーグ発デヴィッド・リンチ経由でバラード回帰の感慨あり。
そういう、なんか色々盛ってるなみたいな、絵もごちゃごちゃしてて面白いしみたいな感じの映画でしたねとりあえず起きて観てた範囲で言えばですけれども。

ほんで良かったところはですねトムヒが人間性の喪失を自覚して狂っていくエヴァンスをこう評すとこ、あそこグッときましたよね。「彼だけは正常なんだ!」。
狂った世界で狂うことができるのはその狂いを知っていて正常に戻したいと考えている常識人だけであって、だからこそマンションの理想を誰より信じて秩序を取り戻すための行動に出たエヴァンスは逆に混乱を加速させることしかできなかったと。
エヴァンスの存在が一番の問題だ、とマンションの偉い人アイアンズ。そうだよな冷静に考えたらそうだよなぁとか思いつつエヴァンスに憧れてしまう理性の人トムヒの図、たとえば安部公房が『第四間氷期』で人間の終焉をロジカルに語りつつそれでも言い訳がましく情けないヒューマニズムの残滓のようなものをエピローグに付け加えずにはいられなかったのと似たような印象があって、なんだかほんのり泣けてしまう感じあったなぁ。

いや、実際そんな話かどうかはよく知らないんですけど。

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映画のラスト、たぶんサッチャーの演説だと思うんですがこれがラジオから流れてきて資本主義は云々と言うにあたって脳内にバグルス流れました。『ラジオスターの悲劇』。そんぐらいポップな悪趣味感覚の映画っすよねこれ。
バラード、ニューウェーブ界隈のアーティストからやたらリスペクトされてたりするみたいですが、あの冒頭のテレビ人間とかの感じからするとニューウェーブのポップなバラード解釈の流れに位置する映画なのかなぁって思うなこれは。なんかMVみたいだしな。

ほんでそのポップを考えると渋谷というのは意外とバラード性に溢れてる気がしてくるので話は冒頭に戻るのですが、たしかバラードはこんなエピソードを語っていたはずであった。モーターショーの最終日、なんとなくの思い付きでスクラップされた車を一台置いてみた。すると今まで大人しかったはずの来場者が急に車を殴ったり酒に酔ってコンパニオンを押し倒したりの蛮行を働くようになったのだ…。

かくしてヒューマントラストシネマ渋谷(恐ろしく皮肉な館名)はバラード廃墟世界と化すのでありましたが、人間の主体性を信ずればこそ破壊せずにはいられないみたいな倒錯がバラードのように思われるのでこれは確かに逆転したヒューマントラスト。
なんか駄洒落で始まって駄洒落た感じで終わってしまった。そんなバラード映画です。

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終末階級闘争アクションコメディトレインパニック映画。ワクワクとドキドキある版『ハイ・ライズ』みたいなものな気がするのですがポン・ジュノは団地映画『吠える犬は噛まない』(2000)で世に出てきた人ですねそういえば。なんかこういうの縁あるな。

↓その他のヤツ
クラッシュ 《ヘア解禁ニューマスター版》 [DVD]
ハイ・ライズ (創元SF文庫)
ラジオ・スターの悲劇+9

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