映画『ペット』が最高に大したことなくて素晴らしい感想(ネタバレなし)

《推定睡眠時間:5分》

おもしろかった『ペット』! すごい! 何の足しにもならない! なんの意味もない! ドタバタだけ! そして動物可愛くない憎たらしい!
ふふふ、併映のミニオンズ短編からして快調快調。老人ホームのお庭でミニオンズ大暴走。ちょっと泣けてくるんじゃないかこれ逆に、な他愛の無さ。87分ていう潔い上映時間もいいですよね。

あれですこういうのは映画館出たら10分ぐらいで忘れる。なんの思い出も残さないしなんも考えさせてくれない。でも映画っていうものを感じてしまうのは『ズートピア』よりも『ファインディング・ドリー』よりも『ペット』の方だったっていう気もするので、こういうのが大人の映画、と立川談志なら言ったかもしれませんがつまり良い映画とても良い映画くだらないが良い映画、内容とかだいたい忘れたけどっていうそういう感想書く。

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ほんであのどういうお話かと言いますとマックスくんという一匹の飼い犬がおりましてですね、呑気に平和に暮らしてたんですが飼い主のケイティちゃん(すごくかわいいがロクに出てこない)がついつい粗野で厚かましい捨て大型犬を拾ってきちゃったので平穏にひび入る。
で、ひょんなことから二匹とも散歩中に迷子になっちゃって、マンハッタンさまよってるうちに野良動物ギャングに追われることになっちゃって、あいつら助けようぜっつってマックスくんのペット友達が動き出すと、なんかまぁそんな感じ。
あれだろそれオモチャのアレだろ、オモチャのあの映画をペットに置き換えただけだろって言われたら否定できないので言わないでそういうの。いいだろ別にストーリーとかどうでもいい映画なんだよ!

なにが面白いかっていうと別にそんな面白くないところが面白い。こういう反語的表現がまず初めに出てくるような感想は信用しないことにしているので自分でどうかと思うのですがでもやっぱそんな面白くない。
なんというか、つまり家でお留守番中のペットは何しとんじゃろなっていう予告編から想像される範囲を一歩も出ないんすよこれ。あれなマックスくんの大冒険とか言うけどな別に冒険もないよなちょっとだけスリリングな散歩だよなっていうそういう感じで。

だからそこなそこ。そういうとこすげー良くないすかって思いましたよね俺は。なんかね踏み止まってんですよ、この程度ですよっていうところで踏み止まってその範囲内で出来ることだけやってるような映画なんです。
ほら、あれもこれもやりたがるじゃないすか最近のハリウッド映画とか。このキャラクターにはこんな過去が、あのキャラクターにはこんな心の苦しみが、とか。社会問題盛り込んでみたり寓意と象徴を充満させたり引用とオマージュあてがったりして、色んな文脈に接続したり批評性を持たせようとするとか。
いやそういうのも良いと思いますよそういうのも。そういう「深い」やつな。でも結局は商売だろう、興行だろう、「深さ」ってのも売るための装置でしかないだろっていうところで往々にして金のかかった「深い」映画って一抹のいやらしさを帯びるもんです。それに色々盛り込み過ぎて一本の映画として観てる側は消化不良とかそういうのもあったりすんじゃないすか。

『ペット』、そういうところ少しもないから良かったんですよ。そんなに笑えないしそんなに感動もしないしそんなに驚きもないんですけど、だから観ててすごく気持ちいい幸せな感じあったんですよねこれ。

サントラ。そうそうオモチャ箱ひっくり返したようなまとまりのないサントラすげーいいんです。アレクサンドル・デスプラのスコア、ダニー・エルフマンみたいになったりスウィング・ジャズになったりして余裕ぶっこいてる感じで。遊んどるなっていう。
ほんでこれ時代設定とか現代ですけどマンハッタンの摩天楼にスウィング・ジャズ鳴らしてるとこ見るとたぶん40年代くらいまでのコメディ映画を志向してるんですよね。だって原題の『THE SECRET LIFE OF PETS』ってほら、妄想コメディの古典『虹を掴む男』(『THE SECRET LIFE OF WALTER MITTY』、1947)から取ってきてるんじゃないかなっていう感じあるじゃないすか。あれ、ダニー・ケイのコスプレ芸を見るだけの本当に他愛ないけど愉快な幸せ映画だった。

楽しいだけでいいでしょ他になにがいるの。つって、騒々しいノリとセンスとナンセンスだけで87分繋いでくってのはたぶんジャズそして粋。下らないけどバカじゃないよ軽妙洒脱ってもんですよ。客に媚びを売らない可愛げのないキャラクターが悪ガキ魂を直撃。ソーセージのミュージカルがバカバカしくて最高。あんな無意味で下らないシーンはあるのにペットの心情とか飼い主との絆っていう子供を連れてきた親が安心しそうな部分は通り一遍で適当に流す。
これ、こんなアニメはどっかで見たことあると思ったらルーニー・テューンズっすね。バックス・バニーとプレストン・スタージェスとダニー・ケイっていうそういう感じの『ペット』です。

ええんじゃないですか。これやっぱええですよ。こういう映画こそ大事にしたいんですよいや映画館出たらすぐ忘れる類のなんでもない映画なんですけど! だからこそっていうのは結構あるよね。

(文・さわだきんたま)

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コヨーテとロードランナーの追っかけっこだけでいいんだよアニメなんてっていう暴論。

↓名盤決定のサントラ
Secret Life of Pets

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