応援映画『青空エール』ッ! 観たぞッ! 書くぞッ! 感想ッ! ネタバレは雑にあるッ!

《推定睡眠時間:0分》

おもしろいぞッ! おもしろいッ! …おもしろいッ!
地方系学園映画の黄金パターンッ! 名所名跡祭りと自然ッ! 絆ッ! 汗ッ! 涙ッ! 甲子園の夏ッ! そして病気ッ! 私たちはッ! 先輩たちから受け取ったこの伝統を誇りに思いますッ! この伝統をッ! この地をッ! この祭りッ! この家ッ! この仲間ッ! 守り抜きますッ! We! Are! 親戚ッ!
おもしろいッ! でもつらいッ!

そんな『青空エール』。河原和音が原作。土屋太鳳、高校に入学したところ野球部のクラスメート・竹内涼真に一目惚れ。「へぇ太鳳ちゃん吹奏楽部? じゃ応援してよオレ絶対に甲子園行くからさ!」「うん! わたし…わたしがんばるよ!」(※大意)。
開始5分も経ってないのにもう辛いし例の甲子園応援のためコンクール辞退の吹奏楽部問題がジャストフィットしてしまい渋い顔になる。予告編で流れていた『SCOOP』という映画に福山雅治パパラッチの「このネタ文春に持ってくわ」みたいなセリフがあったのですが、風刺の攻撃力はこちらのが遥かに上ですよねだって無自覚だからね無自覚の皮肉は強いです。

そういう、そういう! とにかく、文化系の考えるこんな高校生活はイヤだを全力で汲み取ってみんなのためだからお前も感動しろと言いながら顔に塗りつけてくるようなおそろおもしろ学園映画の感想。

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ところで土屋太鳳の登校とモノローグから始まるあたり激しく既視感があったのですが、これはやはりJK太鳳の情緒時間SF『orange オレンジ』(2015)が同じような導入部のみならずそのキャラクターも同じで「へっ!?」「で、でもっ!」「ごめんなさい…」のセリフを惚れた同級生の前でbotのように繰り返す人だったからなのでした。
三歩下がって男に尽くす健気儚げJK太鳳。黙ってお弁当作ってあげたり黙って応援してあげたりしてなんならちょっとした言葉の暴力を振るわれても自分のせいだと思い込み怒らせてごめんなさいと謝ってしまう…なんかすごくダメ男に都合のいいAVドリーム的キャラクターな気がする!
それでも『orange』の方はJK太鳳の意志薄弱をアダルト太鳳が大悔恨みたいな感じのお話だったのでフェミーな人たちも怒らないと思いますが、こちら『青空エール』の方は初めてトランペットで音を出して恍惚の太鳳に「出たぁ」のセリフを言わせたりする映画なので勝部元気先生なんかにはとても見せられませんよね。

ほんでそんな土屋太鳳が超体育会系の吹奏楽部でひたすらイビられつつ(甲子園で竹内涼真を応援するために!)頑張ったりするのですが、これはつまり世間を知らないウブい高校生が苦しむ光景を言い訳だらけの見世物にする昼メロ的趣向の品のない映画なんじゃないすかね。
ほら先輩コネクションにより入学前の春休みから編入のエリート新人・葉山奨之(稲垣吾郎をPS2のCGに落とし込んだような顔の人)とかな、この人は意識が高すぎるので入部早々の土屋太鳳に素人は引っ込んでろと退部を迫ったりするんですが、三年になったら今度は自分がもっと意識の高い後輩グループに集団恫喝されたりすると。夜の公園で。
なんかそういう陰湿粘性エピソードとキャラクターをどんどんブッ込んでくるんですが、体育会系社会の論理で全部正当化して爽やか美談にするグロテスク。「実績も出てないのに吹奏楽部だけ(部費を)特別扱いできないですよ」「なんでそんなに厳しくするんですか? 先生の願望に生徒を付き合わせちゃ可哀想じゃないですか」とかのたまう教頭が完璧に悪役だったりするのですが、間接的にとはいえシゴキの末に生徒の一人を登校拒否に追い込んでしまった吹奏楽部顧問の鬼教師・上野樹里よりはたぶんこの教頭の方が教育者として正しいぞ!

こういうな、こういうやつな、こんな下衆いの面白いに決まってるので面白いんですけど悪夢です悪夢の面白さです。透き通った青空の下に粘つくギスギス人間関係とかデヴィッド・リンチの世界。華やかな祭りの裏で仮借ない心理的バイオレンス横行とか北野映画の世界。「飛翔!」とか「輝け!」とか「誇り!」みたいなポジティブワードが学内中に貼られてんのって『ゼイリブ』みたいですよね。なんか大物に思えてきたよ!

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あれだな気丈な吹奏楽部の鬼部長、小島藤子っていう人だそうですがすごい良かった。知りませんけど今流行の『HiGH&LOW』出てる人なんですね。へぇ。そういえば故障で甲子園断念、たぶん荒んでヤンキー化してしまった野球部の鬼キャプテン(この高校には鬼しかいない)が山田裕貴という北村一輝の幼生みたいな感じの人で存在感ありましたがこの人も『HiGH&LOW』組とのこと。体育会系邦画ネットワークの強度を見る。
あの上野樹里が! ゆるふわ封印鉄仮面のクールビューティなのでずっと真木よう子かと思って観ていたんですが、のだめの人生の落としどころが吹奏楽部に叶わなかった夢を託そうとする高校教諭っていう風に見れるのでそういう作品を超えた繋がりが面白いんですよ繋がりが、体育会系映画は。

ところで群像劇的な趣が多少あったのですが、先輩からバトンを受け取った後輩が今や先輩となって新しい後輩にバトンを渡す、地元・高校ヒエラルキーの中で確立された何種類かの人物類型に新入生が次々とはめ込まれ、同じ高校生活に同じ人間関係が多少の強弱を付けながら人物を入れ替えて再演され続ける的な物語なので生き生きした青春群像の面白さとかそういうの全然ないな。っていうかその意味で徹底してつまんないので逆に妙な厳粛さとリアルの重み出てて良いよなみたいなとこ、あるんじゃないすか。
過酷なトレーニングと重圧により一時はあわや自殺かとすら思われた部員の志田未来が卒業後に土屋太鳳の下を訪れるっていう場面があってですね、屋上で吹奏楽部の美しい思い出を語らうのですが得も言えぬ哀しさが漂ったりするわけですよその行間に。なんか、あまりに老成してしまった表情を見せるので。利口な立ち回りを若くしてすっかり知ってしまった風なので。自分を殺して集団に尽くすことにあまりに慣れきってしまっているので。

志田未来は14歳の母だから老いも分かるが土屋太鳳のフィルモグラフィー、見てみると銀座ママの回顧録の目次のような辛酸放出度でこちらも強烈な歩みだった。あの媚態は一朝一夕にしてならずと痛感ッ! 芸能界で生きるということの意味を知るッ! なんでしょうねさながら太鳳を生贄にした豊穣の儀(制服は祭服だったのだ!)に思えてきてしまった『青空エール』なので原始儀式的高揚と神聖さを感じますがそれ以上にやはりつらいッ!

(文・さわだきんたま)

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リーダー的存在の桐島先輩が消えてしまったので高校大パニックというのは高校階級社会の暴露であるとか批判と思わせつつ結局は現状追認のための批判ぶった嘘なんじゃないの、と思えてくるぐらいの破壊力は『青空エール』にあった。
こういうのは裏表ですよね地方系高校映画の。

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