『キング・オブ・エジプト』は神映画なので民にその真実を伝えよと託宣を賜りました


《推定睡眠時間:20分》

『キング・オブ・エジプト』です。『クロウ 飛翔伝説』(1994)とか『ダークシティ』(1998)のアレックス・プロヤスの新しいやつです。なので飛翔してましたし伝説でしたよね。神映画ですよこれは。神映画です。
そうそれでつまり…前情報入れないで見たので最初に王様が出てきてジェラルド・バトラーが出てきて(似合い過ぎ)ふーん古代エジプトのお話かぁと思ったらこの人たちが変身して『牙狼』とかあぁいう感じの特撮スーツで宙を舞いながら闘い始めたので人間じゃなくて神様だったことがわかる。怪物怪獣がいっぱい出てくる。宇宙船も出てくる。女の人はみんな谷間を強調した衣装を着ている。ライトセーバーみたいので殺陣る。なにがなんだかよく分からなかったんですけど寝てたせいじゃないねこれはきっと起きててもよく分からないと思うねっていうか! すごい! なんだ! わぁ! バカ! カッコイイ! クソダセェ! えぇ! うおぉ! やっぱすげぇ! でしたね。

そういう、思考が乱れてしまうので文の乱れも防ぎようがないのですが結論を先取りしますと今年いちばんおもしろいえいがでした。以下、雑感。電波注意入ります。

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これは予告編詐欺であの日本版予告編を見てもなにもおもしろい感じはしないし原題が『GODS OF EGYPT』なのに邦題がキングなのでおい格が下がってるぞ! と言っている人もいたのですがつまり、このスーパーな超感覚映画を少しでも凡庸な大衆に身近に感じてもらおう理解してもらおうという宣伝部の人の工夫がこうしたところに現れているのであろうと思われるのです。

だいたい、確かに間違っているのは間違いないが間違いかどうかには疑いの余地があるのであって、日本オリジナルのスマホ対応レスポンシブ予告編なるものが公開されておりそこでは大幅に超感覚の刈り上げがなされ囚人の丸坊主の如しでありますが危機を救うのは盗賊!? といって盗賊をプッシュ。嘘なのであって、しかし正しいのであって、これなぁんだ? スフィンクスの謎かけになってしまうのですが、冒頭、主人公の盗賊自身のセリフにあるように「これは私の物語ではない」。神々の物語なのであります。

盗賊は宇宙からの電波を受信しました。その電波は二重コイル、つまりDNAのらせん配列と同等の形状で宇宙の法則がオン/オフの双子(タオ)として示されているのですが、人間には触れられぬこの情報を翻訳し人の理解に及ぶ物語として発信する、これが盗賊の役割でした。端的に言えば物語内世界の盗賊の役割/宣伝部の役割として二重化された語りが真理の変換作業として縮小再生産を続けるのでありますがこれが我々の理解の及ぶところの宇宙真理の限界といったところでありましょう。アレックス・プロヤスは真理の伝道者なのです。

…だいたいこういう感じのトーンの語りがなされる映画だと俺は思ったのですが、どうでしょう。実際はもっと、ポップ。もっと、バカ。もっと、壮大で勇壮。
普通の楽しいファンタジーアクション映画じゃんと言えなくもないがでもやはりこれはやはり電波感覚がシビれてくる映画なんじゃないかというところもありまして、それはまぁプロヤスの前作『ノウィング』(2009)がケイジの啓示映画シリーズの一本(他は『レフト・ビハインド』(2014)など)だったというのもあり、SF的な題材の神秘主義的アプローチといったプロヤスの作風が新宗教を感じさせるからというのもあるのですが、とにかく、ご都合主義というより支離滅裂、でも俺は語らなければならないんだよこの物語を語らなければならないんだよ! と誰も聞いてないのに大声で捲し立てるような作劇にメーターの振り切れたカルト的誇大妄想を感じてワクワクが止まらないのです。

いや、ちょっと、落ち着こう…要するにオタクの一人語りのような映画でしたねこれはそれも超楽しそうな…。

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そうですね『キング・オブ・エジプト』、俺の中では今年やった押井守の最新作『ガルム・ウォーズ』と同じような立ち位置にあったりしますね。すごくこう、オタクの考えるカッコイイを開陳しまくるところとか。そのオタクセンスが二十年くらい前で止まってるようなところとか。唐突に世界が終わってしまうとか。その世界がすごく狭いとか。そしてたぶん最大の共通点は、どっちも過去作で見たことある映像があちこちに配置されているので既視感がすごいというところ。でも縮小再生産ではなくてデジタル化されて拡大再生産になっているような気がする、など。

飛ぶことへの憧れ、現世とあの世、地球平面説、世界の終わり、宇宙人の神々と神に選ばれた男。こういうのプロヤスの映画によく出てくる気がすんのでなにかこの人の核になるイメージだと思うんですが、今回それ全部映像にしてブチ込んだ。たぶんずっと頭の中にあったんですが方々の制約から変更を余儀なくされてきたビジュアルをやっとストレートに表現できた。そういうイマジネーション純度の高さを感じたりする映画だったりして、そのイマジネーションが本当にもうオタク全開ですごいので圧倒されるしなんか感動的、というのが『キング・オブ・エジプト』と『ガルム・ウォーズ』の個人的共通感想だったりします。

なのでこれは、『ガルム・ウォーズ』ポジションと考えると、そして例えば紀里谷和明のビジュアル感覚ともなんとなく通底する部分があることを考えると…確かに確かにあまり普通の人には勧めにくいイマジネーションオナニー映画には違いないのですが俺は! こういうオナニーが見たかったし本当に見てよかったと思ったしまた観に行くよ…!

(文・さわだきんたま)

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すごい今更なんですけどこの白塗りブランドン・リーとか『ダークナイト』(2008)のヒース・レジャー/ジョーカーっぽいので影響あるんでは、とか考え始めるとどうもクリストファー・ノーランのビジュアルは結構な部分プロヤスに負ってるんじゃないか説も出てくる。ほらあの、『インセプション』(2010)の街を折りたたむシーンとか『ダークシティ』っぽくないなんか。

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