『神聖なる一族24人の娘たち』のチン性なる感想です

《推定睡眠時間:10分》

ドーナツぽく見えたがたぶん違う伝統料理のようなものとキャンディーだかチョコレートだかを並べて森の神さまに少女がお祈り。神さまホクロがコンプレックスなんですホクロ取ってくださいお願いします。
そうやって始まってなんかテロップで名前が出る。オシュライとかオナクサとかたぶん違うけどそんな語感のやつ。それが24人分。24人分の名前が次々出てきて、迷信と風習とセックスのマリ・エル共和国(そんなの初めて知ったよ)ど田舎エピソードが24人分語られるとそういう映画。

おもしろかったですあの、タイトルから『百年の孤独』のような摩訶不思議大河ドラマかと思ったのですが、とくに関連しない下絡みのホラ話の羅列なので『千夜一夜物語』とか『デカメロン』とか、いや読んだことないから知りませんけどたぶんそういう感じじゃないですかね。

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まぁ24人も村娘出てきますので何はなくともとりあえずセックス! っていう以外共通点なくごった煮雑多エピソードの数々なんですが、あれですね好きだったのはバグパイプのエピソードとかですね。
旦那が祭りでバグパイプ買ってきて飯も食わずにずっと吹いてるんです。ぶぉーぶふぉー。カミさん、これはきっと祭りで若い娘とヤってきたんだと直感し近所のババァに相談。あんたそれ旦那のアソコの臭い嗅いだらええよそれで浮気したかどうか分かるよ。旦那に迫るカミさん。嗅がせろ。そのままなんかいい雰囲気になっちゃってやぁねもうあなたったらってなってるところを窓から覗き見してババァ爆笑なのでありました。
いいですねしょうもなくてね。

そういう素朴に下世話なお話がユーモラスに綴られるのであれこれはもしや、ロシアンオヤジがウォッカ片手にもう片手でカミさんの尻撫でながらつまらなさそうに笑って見るやつなのではっていう気がしてくる。民話的である以上に飲み屋的なのでは。
こういうのを大らかでいいですねぇ僕たちも見習いましょうねぇみたいなヤツはクソみたいに嫌いですしそれにほら、ここに出てくるのはマリ族というらしいがいや別にその文化は否定しませんけれどもやはりほら女性の人権がとかそういう観点からするとこういうの微妙なことになるので、説教的に真面目に見るとふざんけんなっていう気にもなってくるが飲み屋で人のタバコをせがむ汚いジジィババァの艶笑話、そのように受け取れば平和。

真面目なようでふざけた、人を食ったユーモアはロシア映画のお家芸のイメージある。中盤に出てくる「おらモスクワさ行くだ」の章。こんな村もうイヤじゃと歌手を目指す少女がモスクワに出ていくが、ここはわかりやすく笑える、ちょっとした風刺もあったりする。
森で集めたキノコを真剣な面持ちで品定めする少女。「こんな旦那がほしい!」。欲求不満と好奇心が爆発し悪魔? 悪霊? 村の女子ーズが禁断の儀を行ったところ国際派イケメンITエリートの姿をとった悪魔だか悪霊だかとにかく悪い何かが現れるのでした。

最後、超絶唐突に現れる「世界に平和を!」のメッセージはたぶん笑うところなんじゃないすかね。

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想像力のない想像力というものが土着性を感じさせたりするので、狙いとも狙いでないともつかないこのチープさは味。
魔女のような野人のような巨大な女の人(?)が森に住んでたりするが、そこにファンタジーが入ってこないところ、西側の映画とは違うんですみたいな。
あとですね絶対にCDで売ってなさそうなカセット感覚の音楽、味すぎて中毒性いかんですよ。プリセット音! っていう感じのシンセがキてるアイドル歌謡的なあれ。あれやばいよ。

つまりだから結局これは、とりあえず、異世界。エロ話も24エピソードあれば一つの世界なんじゃないですかやっぱり。で、異世界なんですけれどもどこか遠くにあるんじゃなくて、近代的な価値観とか現代社会と地続きにこういう異世界はあって、科学とか合理性と自然信仰とか呪術性みたいのは違うように見えて実は表裏一体なんだとか、そういう批評っぽいの最後まで見ると浮上してくる。エロ話なのに。

おもしろいすねロシア映画の土着性、と、おそらくそうであるがゆえの批評的な越境性、みたいなやつ。

(文・さわだきんたま)

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キリスト教的には超邪教なはずの原始宗教っぷりの『神聖なる一族24人の娘たち』だったんですけれども家に聖人の肖像みたいの飾ってる人もいたのでこれどういう宗教観なんだろうってなる。
それはともかく『サテリコン』なんでもありでおもしろくてすきです脳みそ爆発。女性器に呪いをかけられて、というネタが『神聖なる~』と共通してました。

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