えらい人の講義映画『フランコフォニア』『スラヴォイ・ジジェクの倒錯的映画ガイド2』で感想レポート

かしこい映画を見てしまった。アレクサンドル・ソクーロフとスラヴォイ・ジジェクか。そうか。かしこい映画を見てしまった。
まぁ、正直は庶民の美徳であるから言いますけどすいませんよくわかりませんでした。セリフ多いすからねセリフ。セリフ多いから…。

っていうことでソクーロフ先生のルーヴル歴史講義『フランコフォニア ルーヴルの記憶』とジジェク教授のイデオロギー的映画読解『スラヴォイ・ジジェクの倒錯的映画ガイド2 倒錯的イデオロギー・ガイド』の曖昧モコモコかんそうです。
ネタバレとか、もう、そんなのないよわからないんだから!

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『フランコフォニア ルーヴルの記憶』

《推定睡眠時間30分》

90分ワンカットでエルミタージュ美術館を夢幻的大冒険の『エルミタージュ幻想』(2002)、の、姉妹編。こちらもカメラが映画監督アレクサンドルの目となってルーヴル美術館の歴史をふわふわ漂う的な筋立てのない映画。
公式サイトとかチラシに書いてあるあらすじとかあと予告編とか嘘は言ってないがすごい嘘なので注意喚起したいがソクーロフがどういう手口を使うか知らないで観た人が爆睡する光景を見てバカにしたいのでしない。

ほんであの映画が始まりますとですねいきなりソクーロフ(?)の語りが始まりましてですね、なんか知らんのですが誰か過去の亡霊と無線で話し出す。「映画撮ってるの?」「えぇ、美術館で撮ってるんですけど失敗作になりそうすね…」。自らハードル下げてくれるソクーロフやさしい。ここで睡眠許可を貰った気がしたのでもう寝に入ってしまいました。なんのために観てるんだろう。

残った断片的な記憶に頼ればこれはどうも典型的なソクーロフ映画らしいのでした。彼岸と此岸を行ったり来たり、歴史の亡霊との束の間の邂逅と対話、歪んだ映像と環境音を強調するノイジーなサウンドトラック、戦争とコスチューム・プレイ。これはたしかにソクーロフ。
新たに導入のドローン撮影、錯視的な絵画撮影、笑えないユーモアなどおもしろいかったよね。

『エルミタージュ幻想』と違うのはワンカットじゃない点とソクーロフのモノローグというかナレーションが主軸になっているという点。眠いは眠いがそれでも『エルミタージュ幻想』は華やかな衣装とか優雅なダンスとか馬とかあったので目にも楽しく歴史の豊穣と戯れることができたのですが、こちら『フランコフォニア』はなんだか譫妄状態に陥って記憶の底から浮かび上がる苦痛の過去を悪罵している認知症の老人の脳内を映像化したようで寂しいばかり。

エレジー編すね今回は。老いた夢へのエレジー。いつもそうか。

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『スラヴォイ・ジジェクの倒錯的映画ガイド2 倒錯的イデオロギー・ガイド』


※予告編なかったので代わりに劇中で取り上げられた『時計じかけのオレンジ』の超カッチョイイ予告を貼っておきます。こういうテンションでジジェクが喋りまくる映画です。

《推定睡眠時間:5分》

ソクーロフ喋りっぱの『フランコフォニア』でしたがそもそもソクーロフ映画は基本的にモノローグなのでした。語りの世界、聴覚的世界、それを手掛かりにソクーロフは彼岸と此岸を過去と現在を接続するのですが、そのぬるま湯的夢見心地が可能であるのはひとえに他者を問題としないからなんだろうなの説。その区別をつけないというか。

でこちら『スラヴォイ・ジジェクの倒錯的映画ガイド2 倒錯的イデオロギー・ガイド』はスロベニアの哲学者・精神分析家のスラヴォイ・ジジェクが映画を語り倒すシリーズの二作目。
前の『スラヴォイ・ジジェクによる倒錯的映画ガイド』(2006)もなぜか公開時に観に行ったのですが、まぁ両方観ての感想はわからないよねこれはっていうのに尽きますね。だってラカン派の人だからね。しかも早口だからね。字幕制限とかあるわけだし専門用語に注釈とか付かないわけだしね。わけわからないよ。
しかしわけわからないが熱に浮かされたように次から次へと話を転がしていくジジェクはおもしろいのである。ソクーロフもジジェクも言ってしまえば独り言なのですがジジェクの方は人の話は聞かないがとにかく人に向けて話してはいるので、気持ちよくはないがおもしろくはあるのである。

ほんで映画の宿すイデオロギーを語るにあたってジジェクが最初にネタにしたのはジョン・カーペンターのカルトSF『ゼイリブ』(1988)だったんですが、『ゼイリブ』、これ大好きなんですけど何がおもしろいって色んな見方ができるところがおもしろいですよね。
銭ゲバのエイリアンが人々を洗脳して支配している事を知った一人の風来坊がレジスタンスとともに立ち上がるというヒロイックなあらすじは、武装蜂起を企てる狂信者集団に洗脳されたホームレスが資本主義の「真実」に気付いてテロリストと化すお話に書き換えることもできるわけじゃないすかこれ。

あれそう考えると、わりと議論の全体像が見える気もするので観ててよかった『ゼイリブ』。話はわからんが映像の流れを見てればなんとなく感覚は掴めるので難しいようで意外と門外漢にもやさしい「なんとなくかしこくなった気にさせてくれる」えいがです(あと前作より全然おもしろかったです)

【ママー!これ買ってー!】


映画の構造分析―ハリウッド映画で学べる現代思想 (文春文庫)


辺境のフォークロア; ポスト・コロニアル時代の自然の思考

ジジェク的なあれおもしろいよねじゃあ僕もやってみようみたいな感じで内田樹先生が手を出した映画論の本と現代思想系の映像作家の人がソクーロフから出航してふわふわ漂流しながら辺境を論じた本。

↓その他のヤツ
ゼイリブ 通常版 [Blu-ray]
エルミタージュ幻想 [DVD]
スラヴォイ・ジジェクによる倒錯的映画ガイド

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