主演・織田裕二。映画『ボクの妻と結婚してください。』本気の感想文(ネタバレないよ)

《推定睡眠時間:0分》

思わず映画館で流れた予告編を二度見してしまったタイトルとあらすじなのですが結論から言えば大丈夫でした。
末期がんで余命いくばくもないからと妻・吉田羊の再婚相手を勝手に探す織田裕二どうかしてるのですがちゃんとどうかしてたので大丈夫でした。
いいですねズレに自覚のない織田裕二。ちょっと阿部寛の芝居に寄せてきてないかなと思いました。

そんな『ボクの妻と結婚してください。』です。おもしろかったです。どこがおもしろいかと言うと実はこれはどっきり案件で…いやそれ以上言うとネタバレになってしまうな。ふっふっふ。

それにしてもハラハラする映画だったなぁ。
夫婦間の話し合いで決めたのならまぁわかるが、妻には一言も話さず再婚相手探しに奔走する織田裕二。この人はベテラン放送作家というわけでちょっとそこらへんの感覚がおかしい。悪ふざけではなく本人的には100%の善意で、そうすることが残る妻子のためだと思い込んでいるのだ(でもそれぐらいの思い込みがないとテレビとかできないんだろうきっと)
果たしてそのまま最後まで逝ってしまうのか、それともどこかの段階で誰かが織田裕二をブン殴ってくれるのか。いやまぁ普通の映画なら後者でしょうが主演・織田裕二ですからねこれは。どっちに転ぶのかわからないところに大変なサスペンスがあったわけですよ。

たとえばほらこういうの。再婚計画に協力したがために織田裕二とフライデーされてしまった若手女優。この人たぶん仕事をいくつか失ったと思うのですが織田裕二はフライデーに計画を邪魔されたことを悔やむばかりで謝りもしないどころか罪の意識が全く無い。
それからこういうのもあった。会ったこともない吉田羊との結婚を渋る(あたりまえだ)原田泰造。なんとか説得したい織田裕二は理由を聞かれてこんな風に叫ぶ。「だって、しょうがないじゃないですか! 見えちゃったんだから! あなたが妻と食卓を囲む光景見えちゃったんだから!」

エゴいを通り越してちょっとヤバい人なのですが、織田裕二の一人称で進むこの映画では一応全てが織田裕二の善性を示すエピソードということになっている。
ポイントは「一応」なのでやっぱりヤバイ人にも見えるのであった。妻の前では病を隠し道化を演じるがそれが全然おもしろくなくシリアス演技をしている時の方が逆におもしろくなってしまう織田裕二のように映画にも建前と本音はある。
水面下で火花を散らす映画的良心と織田裕二の自意識…とかなんとか理屈をこねくりましたけどつまり俺かっけー的な織田裕二のいっぱいみれる胸やけするけどたのしい映画ということですねはい。うん!

知らなかったのですがこの原作は前にもテレビドラマになっているようでそちらは織田裕二の役どころが内村光良とのこと。へぇ。人気なんすね。
ちょうどウッチャン入魂の『金メダル男』も公開中なので縁を感じますがそういえば主人公が裏のない善人なのだがシャドウと一緒に人間性と他者への共感まで欠いてしまっているように見えるのでなんだかおそろしいという点でこの二つはよく似ているな(ついでにどちらも木村多江が出ている)

映画の方の『ボク妻』に話を戻すと高島礼子がちょっとしたコメディエンヌっぷりを発揮しているというのがサプライズでしたね。高島礼子。ほぉ。役柄は結婚相談所の女社長。…ほぉ…。
ちなみにテレビ版にはベンガルさんがゲスト出演を果たしているらしいのですが大丈夫だろうか。織田裕二が万感の思いで結婚の素晴らしさを語る映画なのだがなんかそれは大丈夫だろうか。
まぁぼくは結婚とか関係ないですからなんでもいいですけどね。

「不倫するなら妻と不倫したい!」。冴えるな織田語録。結局、そんな織田裕二の暴走空回りっぷりがつまりこの40年代のスクリューボール・コメディより時代遅れな単なる織田裕二好感度爆上げ大作戦としか見る前は思えなかった映画に意外な驚きと苦笑いホロリを…ってだからそれ以上は言えないのだよ!

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『ボク妻』の監督は三宅喜重という人で主にタイトルに「僕」か「男」のつくドラマを演出しているという雑な説明が正しいのかどうかはよくわからないのですがこれもやっているということは阿部寛から独身性を引き出したたぶんえらい人です。
(そして阿部寛は阿部寛で『恋妻家宮本』の公開が控えているのだから日本の映像業界はせまいなっていうか企画の幅がせまいな!)

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