二本立て感想『エブリバディ・ウォンツ・サム!!』『誰のせいでもない』(ネタバレなし)

きょうは勤労感謝の日なので勤労しないで遊びまくるアホがうるさいクソ感動作『エヴリバディ・ウォンツ・サム!! 世界はボクらの手の中に』と子供を轢いてしまったので勤労どころではない作家と被害者家族の人生の軌跡『誰のせいでもない』の感想書きます。

あれかこれはどっちも家と引っ越しと疑似家族の映画ですね。どっちも大河のような時間の流れと過ぎ去った過去の映画。あとどっちも始まったときにはもう終わっているというお話の映画で、どっちも観た後は仕事を辞めて引っ越したくなりました。
どっちもとても面白かったです。ネタバレとかは別にないです。

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『エブリバディ・ウォンツ・サム!! 世界はボクらの手の中に』

《推定睡眠時間:0分》

野球をしない野球部映画で大学に行かない学生映画なので漫画で言えば「幕張」とか「稲中」みたいなもんの例えはそれなりに的を射ていると自画自賛。
本当にバカ。くだらない。野球部の寮でただただバカどもが爆音レコード垂れ流しで遊んでるだけのクソ映画。あまりのクソさに開始10分くらいでもう泣いているが最後までクソ過ぎるので涙が止まらないクソっぷり。何回か連続で見たら死んでしまうぞクソ眩しすぎて。

「外から見たらなにが楽しいんだか全然わからないが本人たちはメチャクチャ楽しい」会話の天才リチャード・リンクレイターなので本当に中身がない会話の絨毯爆撃最高でしたね。
映画版の『スキャナー・ダークリー』(2006)、原作の名場面だがふつうだったらバカすぎて無駄すぎてカットしそうな「自転車のギア議論」を完全再現していたことからリンクレイターのディック愛はシミュラクラじゃない本物だと思いましたが、愛もさることながら単純にバカ無意味会話が大好きな人なんだろうなこの人。そういう青春感みたいの。友達とか恋人とのいちばん楽しい時間が。

山盛りのバカ無意味会話と80’sジェネレーションアイテム&サウンドにリンクレイターの思い出から抽出した「あの頃」のバカどもを大量投入してガキ帝国完成。ハッパやりながら哲学を論じる謎のヒッピー引きずりオッサン(※部員)とか壁にすら喧嘩を売る狂犬キャラで大学デビューを果たした“デトロイトの野犬”とか本当にどうしようもない人たちばかり出てきますね!
あれなんだろうなんで涙が! どうしようもない人たちが部室(寮)で遊んでるだけなのに! 卓球に負けて本気で怒るヤツとかインベーダーでナゴヤ撃ちを伝授するヤツとか勝手に部屋に入って撮りためた『トワイライトゾーン』とかレコードをパクってくヤツとかそいつに「傷つけんなよ! ちゃんと返せよ!」と念を押すヤツとかそんなのばかりで…とんでもない感動作だな!

デトロイトの野犬なんてあれ絶対後輩にやさしい真面目な良い人なんだよな本当は…同窓会の幹事とかやってくれるんだよあぁいう人…そういう感じ、そういう感じが染みるんだよ! いつもカッコつけてて怖いもの知らずに見えた先輩がよく知らない後輩の友達(パンクス)のライブに連れてこられてちょっと怖気づいているが後輩の手前カッコイイ俺を必死に演出し続けようとしているとかそういうのがな! もう、そういうのがぁぁぁぁッ!

スタッフロールがやけに短いと思ったらそこから長い長い使用曲クレジットが始まり壮観。併せてメンバー紹介のラップが。どこまでも最高すぎるからこれ以上なにか言うのはおせっかいってもんだろう。

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『誰のせいでもない』

《推定睡眠時間:25分》

原題が『EVERY THING WILL BE FINE』というらしいんですが、個人的な今年いちばんの爆涙大大大傑作映画はドン・ハーツフェルトの『きっと全て大丈夫』(2012)というアメリカのアニメで、同じ邦題の短編『きっと全て大丈夫』(2006)三部作を一本に再編集して長編化したものなんですが、その短編版オリジナル『きっと全て大丈夫』の原題が『EVRYTHING WILL BE OK』。
っていう、だからなんなのなのですが…まぁペシミズムの時代にこういう空元気アメリカ標語は心に刺さりますよねなんか。そうそう「アメリカ!」っていう感じの映画だったんですよ『きっと全て大丈夫』。『誰のせいでもない』はカナダ映画だから関係ないけれどほら監督ヴェンダースだし…。

それこそリチャード・リンクレイターの映画を貫くのも80年代アメリカの「EVERY THING WILL BE FINE」なので『エブリバディ・ウォンツ・サム!!』こそ原題『EVERY THING WILL BE FINE』でおかしくないのですが、でも部室でしっぺ遊びとかしてバカ連中とお子様を轢き殺してしまった自殺願望のあるスランプ中の作家では同じ言葉でも重みが違うよね。
しかも作家が事故の記憶に苛まれ家庭崩壊に追い込まれそれでも人生をやり直そうと必死に頑張っているところに轢き殺したお子様の兄弟が現れて彼は彼で貧乏な母子家庭で苦労していたらしくという展開で大変に重い想いの「EVERY THING WILL BE FINE」ですよこれは…。

でも、重いけれど辛い系じゃなかったな。むしろさわやかな。澄んでますカナダの空気。
2Dで観たんですけど3Dで撮られたらしくて。それでなのか分かりませんけど人物が背景から浮いていて、おとぎ話みたいな印象が少しだけあって。そういう語りの映画で。今時の映画であんま見ないフェードアウト/フェードインで場面切り替えて。で、平気で2年後、4年後、そのまた4年後…っていう感じで時間飛ばしちゃって。

つまりその、大事なこととか具体的なものは何も見せないで省略しちゃう映画ですよねこれって。たとえば「死」の現場とか、スランプ作家の、彼のせいで弟を失った少年の心の内とか。
見せないことが演出の上でサスペンスになっていて、またそれがトラウマ的な過去を回想しているように見えたりもして、だから変に現実感がなくておとぎ話みたいに見えるんですけど、それが良くて。あぁ人生こんなもんだよなぁみたいな。正しいこととか大事なことは結局なにもわからないんだけど時間勝手に流れてっちゃうしなみたいな。そういう感慨ありましたねなんか。

ヴェンダースにしては、かどうかはヴェンダース映画をあんま知らないんでわからないんですが、やたら今風というか普通の映画っぽいので見やすく。誰のせいでもないが誰に肩入れするわけでもない透徹した眼差しが心地よく。よかったんじゃないすかね。

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主演のお子様に毎年夏休みに来てもらってちょこっと撮影×12年てどういうことなのっていうところにまず関心をブン盗られますがしかしそんなメイキングエピソードが実にどうでもよくなるくらい面白いよなこれのリンクレイター畢生の「あの頃」無駄話大河ドラマ。

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