『世界の果てまでヒャッハー!』の後、『この世界の片隅に』の感想(ネタバレなし)

『この世界の片隅に』は観たいけど観たくない映画フォルダに入っていて、こういうのはきっと良いことなんだろうなぁと思うんですが要するに好きな人の好きっぷりファンのファンっぷり応援するときの応援っぷりが能年玲奈のあれもあって半端ないので、なにもうぶっちゃけ引く本当に申し訳ないけど。だって能年玲奈とか知らねぇし。戦艦とか別に興味ねぇし。

面倒くさそうだから触れないでおこうと思っていたんですが、急に考えを変えたのは『世界の果てまでヒャッハー!』を観たから。世界の果てでちんちん丸出し大騒ぎの後は世界の片隅でのんのんのんびりしたいというもんです。まぁ全然のんびりできる映画ではなかったけど…。
ネタバレはありませんが不愉快注意とは書いときます一応ね!

『世界の果てまでヒャッハー!』

《推定睡眠時間:0分》

日本版予告編のナレーションに林家ペーパーというチョイスが物議を醸しているようですがこれは確かに間違いで正しくは松本明子と松村邦洋もしくはチューヤンにオファーすべき。
人里離れたブラジルのリゾート地、バカンスを楽しんでいたはずのバカどもが忽然と姿を消し所持していたGoProだけが発見された。果たしてそこに映っていたものとは…という、スタジオ(ホテル)の女性タレントと大御所俳優がバカどものアポなし大冒険を見ながら時折ドン引きの表情を抜かれたりするこの構成は完全に「電波少年的食人族」だな!
ちんちんを出す! ババァを捨てる! つい間違って人を殺す! 身も蓋もないフィジカル志向のひとでなしギャグまで含めての土屋プロデューサー感。あるいは「浦安鉄筋家族」の春巻遭難シリーズです。

あのあそこ好きでしたね、ババァが電動カートで滑走路を爆走するところ。すごいバカバカしい絵面で。あとナマケモノとか。全然、なにも出てくる意味がなくてこのナマケモノ。本当に下らなくて最高なんですけど。
出オチの映画ですよねこれは。出オチでしかないんで瞬間瞬間の破壊力はやたらあるんですけど、同じようなネタを何度も何度も繰り返すんでまたかよってなってくる。

でもそこが良いところで、これはほら河崎実とかと同じ余興映画のジャンルだと思いましたね。仕事終わりにビール飲みながら適当に見て適当に笑うやつ。で、しょうもねぇバカなんだけどちょっとした社会風刺と驚きのケツ末があったりとか、そういうところはキッチリやる。そういうプロの余興。寄席のイロモノ。
あぁそうかそう考えれば寄席芸人としての林家ペーの起用に繋がるのかもしれないな!

これヒューマントラストシネマ渋谷で観たんですが、いつもは行かない夕方に行ったらシェード越しのやわらかい夕陽がロビーの壁をステンドグラスみたいに染めていてとても綺麗でした。
映画のおかげで普段は通り過ぎてしまう風景の意外な一面を見れて嬉しかったのですが、ただやっぱりなそういう綺麗なもんはなもっと綺麗な映画と遭遇したかったよな…まぁウンコから感動が出てくる映画だから…バカだなぁ!

『この世界の片隅に』

《推定睡眠時間:0分》

このまえ観た『エブリバディ・ウォンツ・サム!!』と『誰のせいでもない』とは個人的にハイパーリンクを形成する映画だったんですが個人的にしか形成されないので別にわかってもらおうとかは思わないのですが。
ついでに言えば昨今の邦画の流れというものをすごく感じる映画であったりして、なに『海街diary』(2015)とか、『バケモノの子』(2015)とか、『君の名。』なんかと同じ軸線上にある映画なんじゃないか、いや『世界から猫が消えたなら』みたいなのだって必ずしも違う系列に属する映画とは思えない。まぁ俺の中でだけは。

こういうの、『この世界の片隅に』を見た人間の大半は不愉快になるだろうなっていうそれぐらいの想像力はあるんで自分のブログにこっそり書くが、書きながら自分で不愉快になるんであぁやっぱあまり感想を言えないしあんまり人の感想も聞きたくないなぁっていう、俺の中ではそういうジャンルにカテゴライズされます。
おもしろかった、とてもよかった、が、別にそれ以上なにか言えることがあるのかとかふと考えてしまうジャンルの映画…とすれば意外と『世界の果てまでヒャッハー!』と地球を一周して接続されてしまうかもしれないがだからそういうことを言うのやめろよ! やめます。

メモ的に多少。とても色っぽい映画だとおもう。すずさんはボンヤリさんではなくてすごく気を遣うし考えすぎるほど考えすぎてしまう聡明な大人の女の人だとおもう。戦争のリアリティでは語れないとおもう。この戦争は震災のリアリティとして否応なしに現代語訳されてしまうとおもう(だから、ちょっと冷静に見ることはできない)。
かなしい話だとおもう。平和な日常生活が戦争に踏みにじられたことがかなしいのではないとおもう。戦争の非日常とは無関係に生活そのものの本質的なかなしさがここにはあったとおもう(これはとくに危うい見方だとは承知している)。
意外と笑える楽しい映画でもあったとおもうが、この笑いは『クレヨンしんちゃん 嵐を呼ぶモーレツ! オトナ帝国の逆襲』(2001)と近い苦みがあったとおもう。いや、別に、ちんちんネタおしりネタがあるわけではないのだけれども。

あと一点、エンドロールの最後にあるクラウドファンディング出資者の、普通の人々の長いリストにはすごくなにかを揺さぶられた。そういう映画だったとおもう。

【ママー!これ買ってー!】


Map of The Human Heart [Import anglais]
心の地図 [VHS]

北極圏から話が始まるので世界の果てでかつ世界の片隅なヴィンセント・ウォードの『心の地図』なんですがこれも感想言えない系に属する個人的な心の映画の一本で、『この世界の片隅に』を観ながらぼんやりと頭に浮かべていたのはこれだったりした。

文明病に侵され共同体から追放されたイヌイットの少年が辿る地図と写真と飛行機(気球含む)そして戦争に彩られた数奇な運命のお話で、『この世界の片隅に』とは見た目に全然似ているようなところはないがあちらで描かれなかったことがこちらに、こちらで描かれなかったことがあちらにと非常に強い相補関係にあるんじゃないかという気がする。

地図と写真がイヌイットの少年を戦場に駆り立てるときにすずさんは絵を描いて日常に踏み止まろうとするとかそういう感じに対照を成し…そして先住民族迫害の問題が描かれるという点では『世界の果てまでヒャッハー!』とも通ずるのだ!

↓その他のヤツ

この世界の片隅に : 上 (アクションコミックス)
劇場アニメ「この世界の片隅に」オリジナルサウンドトラック
(音楽がすごくよかったとおもう)

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