映画『ドント・ブリーズ』! おい全然怖くねぇじゃねぇかよ感想! ネタバレはない!

《推定睡眠時間:0分》

ちょっとアテが外れてしまった映画で、強盗が押し入った家には盲目の殺人マシーンが! …超おもしろそうなのですが押し入る強盗、実に3人。しかも凶器も狂気も持ってない本当は優しいヘタレ若者…ということは殺人マシーンの殺人マシーンたる所以が全然見れないじゃないか! そんなヤツら銃さえあらぁ誰でも殺せるじゃん! どこが殺人マシーンなの!

ただ、あらすじと予告編で脳内に出来上がっていたイメージは『暗くなるまで待って』(1967)的シチュエーションで『ブラインド・フューリー』(1989)のルトガー・ハウアーもかくやの西洋座頭市が『ワナオトコ』(2009)の如く罠を張り巡らせそして、ラストはチェーンソー座頭市が家中を破壊しながら強盗どもを切り刻んでいく『鮮血の美学』(1972)あるいは『逆噴射家族』(1984)! …それは確かに勝手な期待を込め過ぎた俺が悪いという気にはなる。

実際はむしろ、『パニック・ルーム』(2002)のような『グラン・トリノ』(2008)。そもそもジャンルが俺の考えていたものと違うのでした…っていうか『グラン・トリノ』のイーストウッドの方が遥かに殺人マシーンだよ!

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色んな人に配慮して溜め込むのは体に良くない。どうせ俺のブログなのでとりあえず文句を全部吐き出しておきたいのですが、まず、繰り返しになりますが3人は、3人はダメだろ…だって殺されてくれるだけの人が入れられないじゃんそのシンプル編成だと。斬られるだけの大部屋俳優がいなかったら誰が座頭市の強さと恐ろしさを実感できるというの。

この映画には「だけ」の人がでてこない。実は強盗にも強盗せざるを得ない理由があった、そして座頭市にも座頭市になる理由がちゃんとあった。
これをどう捉えるか。つまり、誠実だとは思い。舞台はデトロイトらしいのですが、その貧困と荒廃が物語の背景として真面目に描き込まれていたりするわけです。
社会派はわかったが、でもそんな風にキャプションとエクスキューズだらけにしてしまったら全然怖くないじゃんとか俺はおもうのですが。

弱者が弱者を襲う構造はたしかにおそろしい。殺人マシーン殺人マシーン言ってますが、ぶっちゃけてしまうとあの人は殺人マシーンではなく予期せぬ侵入者に終始怯えてるだけの若干マッチョな盲目の老人に過ぎなかった。そういう人と、人を殺めたこともなければ銃も触ったこともないような若者がお互いへっぴり腰で殺し合う。これは悲惨これはこわい。
ところが。…こいつら全員こんな極限状況にも関わらず理性的なんだ。みんな紳士。酷いことは色々やっている、が、その酷いことが消毒されて「安全な」酷いものになってしまっている。ボロは着てても心は錦。これはこわくない。

たとえばこういう状況を設定するなら暴力を知らないがゆえの歯止めの効かなさ、といったものが描写されても良さそうな気はする。孤独や貧困は人を獣に変えてしまうということを具体的に描けば問題提起にもなるし見ててすごくこわいでしょ。
そういうことがこの映画からは周到に取り除かれてる。レイティングの関係でしょうが血や傷口もほとんど出てこない。とても配慮した映画で、まぁこういう配慮は必要なのでしょうが、配慮というのは基本的につまらないという認識はあってもいいのでは…。

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もう悪口はだいたい言ったので良かったところを。
これゲームみたいで楽しい。追跡者から身を隠しながらアイテムと脱出口を探していくハラハラ感…舞台が一軒家オンリーということもあって『クロックタワー2』のリック邸ステージやってる気分でしたね。犬出てくるしね犬、凶暴な犬。そうだこの犬の扱いも動物愛護的配慮がなされ…まぁそれはいいか。

ゲーム的な選択性を原理としてジャンル映画のいくつかの話型を横断的に再構築する作劇というのは『キャビン』(2011)と似ている気がした。『キャビン』の方も全然怖くないしそんなに面白いと思わなかったのですが、あれと比べるなら『ドント・ブリーズ』は小じんまりとしてる分だけよくまとまっていて、整った映画を見たなぁという後味の良さ。
いい加減なところはそれなりにいい加減だったりはするのですが別にディティールとか気になるようなタイプの映画じゃないでしょ?

アメリカの座頭市ことスティーヴン・ラング、プロい身のこなしに惚れる。拳銃だけ持たせるにはもったいない。この身体能力と元兵士の設定を生かして身の回りのあらゆる物を武器にしてしまうぐらいのケレンはあってもよかったような…とにかく、期待は外れたが小じんまりとよくまとまった安全に楽しめる映画って感じでしたねこれは。

【ママー!これ買ってー!】


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女子大生かなんかが訳あってお屋敷に侵入したところそこにいたのは一見無害な足の悪いジジィ。だがその正体はニトログリセリンを女体に塗り付けて監禁する変態爆殺魔だったのだ…というアルゼンチンの人でなし監督アドリアン・ガルシア・ボグリアーノによる「入ってみたらヤバかった」系映画。
これおもしろかったですね。

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