三本立て居眠り映画感想『タンジェリン』ほか二本

よく寝た映画が何本か溜まったのでまとめて感想放出スヤスヤ。どれも人を探す映画という共通点があります。

『タンジェリン』

《推定睡眠時間:60分》

最初と最後だけ見る限りではおもしろうてやがて哀しきロサンゼルス下町哀歌。極めて曖昧な断片情報しか得られなかった睡眠鑑賞のため確かなことは何もわからないのですが街娼コンビ、遠目に見たらアヴリル・ラヴィーンみたいなやつ、威勢だけは良いヘタレの売人、アルメニア人のタクシードライバーが深夜のドーナツショップに集まって騒いでいたら店の人にすごい怒られて外に出されたというお話だとおもいます。
外はとてもさむかった。でも帰る場所は誰にもなかった。今日はクリスマスだというのに。

出てくる場所(目視で確認したもの)。モーテル、ドーナツショップ、タクシーの車内、ナイトクラブ、コインランドリー。場はドラマの下部構造であると誰かが言っていたような気もするし言っていなかったような気もしますが低所得者の生活圏活写してヘボな魅力です。
スマホで撮影。それが売りの一つのようだったのでどんな映像か、と思ったら拍子抜けというかなんというか、スマホの機動性と取り回しの良さを生かしたダニー・ボイル的なチョコマカ映像のようなものを安直にイメージしていたら、それは、スマホでなくても、いいのでは…と思わずにいられないガッチリ固めた構図でやる。

それで行き着くところがドーナツショップの森崎東的下町騒動なので新奇な外見に反して保守的な作り、というところが逆説的に台風の目のトランスジェンダー街娼コンビを、あるいはアルメニア人の運転手でもアヴリル・ラヴィーン風の家なき女でもなんでもいいのですが社会の周縁に追いやられた人々をノーマルとして町の中心に捉え直そうとする試みなのかもしれないなぁと思いつつも結局は寝てるのでどんな映画かよくわからなかったの一言。

主人公の親友街娼、ちょっとケン・フォーリーに似ていてカッコ良かった。

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『エリザのために』

《推定睡眠時間:60分》

『4カ月、3週と2日』のクリスティアン・ムンジウの新作だそうでこれはすごい面白かったとおもう。ドキュメンタリータッチのつまりダルデンヌ兄弟系の演出で娘を暴漢に襲われた父親が犯人捜しと娘の卒業試験のために奔走する姿を描く。
間隙を作らない筋肉質な作劇が良くて画面に絶えず緊張感が漲っていた。さしたる説明もなく不条理に見舞われ不穏ムードの中を堕ちていく最初の20分ぐらいなんて凄みあったんじゃないすか。

ていうかほとんどそこしか見てないから…通例エンドロール20分前ぐらいにはどんなに寝ていても目が覚めるのですが今回はそこまで寝ているから…その分もう一度たのしめるとポジティヴに考えたい。名画座で見直す。

※事情はまったく呑み込めないが結末にたいへんな含みがあったような気がする。投石に関して。

『アイヒマンを追え! ナチスがもっとも畏れた男』

《推定睡眠時間:10分》

アイヒマン追跡に尽力したドイツ人検事フリッツ・バウアーの実録ドラマ。あくまでアイヒマン発見から裁判に至るまでのアウトラインを伝えることに主眼が置かれているらしいので良く言えば実直な作り、悪く言えばケレンがないという感じ。
右向きだろうが左向きだろうが近現代史に隠れたリアルヒーローを発掘していこうとする動きというのは国に余裕がなくなってくるとよく出てくるものだと思うのでドイツも大変なんだなぁと呑気な感想漏れる。

アルゼンチン潜伏中(そのくせ自分から言論活動を行っている)のアイヒマンを捕縛するのはモサドなので裏で手回ししたバウアーの活躍に話を絞ったこの映画にはアイヒマンの姿がほとんど出てこない。
ということはなんというかこう目的に向けて感情が乗せにくいのですが政権に食い込んだナチの残党の妨害工作を受けながらも敢然と立ち向かうバウアー検事、そう書けば威勢がいいが多少政治的な駆け引きがあるだけで別にドラマチックななにかがあるわけではなので体温が上がらない。
事務的に悪を成した人間は事務的に対処すべしという映画だからしょうがないのか。傲岸不遜な鉄仮面と四六時中吸っている葉巻の紫煙で素顔を隠し続けることがバウアーの戦いだった。建前を捨てて本音とか本気とか言い出してしまったら負けなのです。

こういう映画なので基本抜きどころがないのですが(文字通りに)抜きどころが一か所あってどこと言うとネタバレになってしまうので言えないのですがあそこすげぇエロくて良かったですよあそこ、あの蠱惑と退廃。
どんなに低体温でもそういうところは変に凝るのがドイツ映画っぽいという気がするタメになる教科書映画です。

【ママー!これ買ってー!】


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なんの関係もありませんが『タンジェリン』界隈な気がしたので。

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さるこ

「アイヒマンを追え」、途中から、“ナチスもの”に見えなくなってしまって、「裏切りのサーカス」並みにスタイリッシュでした、って変な感覚かな?

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