ウィル☆スミスのクリスマス映画『素晴らしきかな、人生』感想

《推定睡眠時間:20分》

数か月前だか数年前だかの愛娘の死がショックすぎて今では会社に来てはドミノ倒しをして帰るだけの人になってしまったウィル☆スミス。話しかけても反応なし。ごはんを食べる気力もなし。急に手紙を書きはじめたので誰だろうと宛名を見れば「愛」さんへ、「死」さんへ、「時間」さんへ…とにかく精神状態が尋常ではないウィル☆スミスだったのでこれはいかんと一念発起したエドワード・ノートンら同僚たちは奇策に打って出る。近所の売れない役者に「愛」の精霊、「死」の精霊、そして「時間」の精霊をこっそり演じてもらってウィル☆スミスをファンタジックに説得するそう名付けてクリスマス・キャロル大作戦!

ねーよ。

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いやねーのですけどでもこれはなんというかファンタジックにミラクルなオチがあって…ただ前提の部分で説得力がまったくないからオチがオチになってないじゃねぇかみたいな。瓢箪からコマが出るからうわぁってなるんであってUFOからコマ出たらいやコマかよってなるじゃん…ていう。

それで思ったのは『クリスマス・キャロル』を現代的に翻案しても尚それなりにあり得ないこのお話は邦題からすると同じく『クリスマス・キャロル』を下敷きにしたクリスマス映画のマスターピース『素晴らしき哉、人生!』をリスペクトしてるような感じなのですが。
むしろ、ウィル☆スミスの職業がニューヨークの広告屋であることを考えるとビル・マーレイの『3人のゴースト』とか念頭に置いてるんじゃないかって思いました。仕事一筋で傲慢なテレビ屋のビル・マーレイが過去・未来・現在の精霊と出会って悔い改める的なユーモラスな現代ニューヨーク版『クリスマス・キャロル』が『3人のゴースト』だったわけですが。

『素晴らしきかな、人生』のどこが『3人のゴースト』かというと。たとえばこういう場面があった。今日もドミノ倒しのために出社したウィル☆スミス。エレベーターで共同経営者のエドワード・ノートンと乗り合わせる。気まずい空気…ノートンは勇気を出してちょっとした世間話を振ってみる。だがウィル☆スミスはただただ困惑の表情を浮かべるばかりなのだった。
このときのウィル☆スミスの顔、完璧にビル・マーレイだった。完璧にちょっとだけ笑わせようとしていた。そういう具合にウィル☆スミスが顔とリアクションで笑わせようとしているような気配のシーンが実はかなりあって、少なくともウィル☆スミス的には『3人のゴースト』というか80年代ビル・マーレイのような芝居がやりたかったんじゃないかと推測できる。

会社で技巧を凝らし過ぎたドミノ倒しをするウィル☆スミス、愛と死と時間を相手にポエムな手紙を書いて投函までするウィル☆スミス、自転車で車道を逆走するウィル☆スミス、ごはんを食べずに暗い室内にこもって座禅を組むウィル☆スミス、精霊を名乗る役者に付きまとわれておかしくなっていくウィル☆スミス…どのウィル☆スミスも激シリアスに切り取られているのですが、たぶんこれは枯れたユーモアを感じる部分は多少あるんですけど全体的にシリアスなムードで統一し過ぎてウィル☆スミスの微妙なおもしろ芝居を取りこぼしてしまったんじゃないかとおもう。
なかなか現実感のないストーリーもコメディの範疇なら別に違和感とかなかったんじゃないすかね。そんなこといったら『3人のゴースト』の方がよっぽどあり得ない話なんだし(でもおもしろいでしょ)。

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ていう感じだったのでウィル☆スミスおもしろかったですよウィル☆スミス。本当にもう「苦悩する俺」芝居が大好きでいい加減にしろよ腐れナルシストがお前そんなに言うほどイケメンじゃねぇよっていつも思ってますけどその「苦悩する俺」を自分でちょっと茶化してるようなところがある気がして。あぁそういうウィル☆スミスあるんだなとかおもってしまう。自分に酔うだけの人じゃなかった。

そういえばキャストがやたらゴージャスな映画だった。ウィル☆スミスと一緒に会社を立ち上げたのがエドワード・ノートン、その右腕がマイケル・ペーニャとケイト・ウィンスレット。精霊を演じる謎の小劇団がヘレン・ミレンとキーラ・ナイトレイすよ。ほんでウィル☆スミスの出会うセラピストがナオミ・ハリスでしょ…めっちゃ芸達者の集まりじゃん!
段々なんか歯痒くなってきてしまうぞだってマイケル・ペーニャもっとおもしろいじゃん他の映画だともっとおもしろいじゃんこの人もっとできるじゃん! エドワード・ノートンだってそう! ケイト・ウィンスレットだってそう! ヘレン・ミレンは…なんかエキセントリックな感じで遊んでたな。

上映時間が100分を切ってる短い映画なのにウィル☆スミスの秘密+どんでん返しでおわらない。クリスマス・キャロル大作戦を通じてウィル☆スミスを取り巻く人々の抱える事情も少しずつわかってくる、という欲張りプロット。
でもとにかく時間が短いのであんまり芸達者な人たちのお芝居に浸ってられないというわけでうーんなんかうーん、とにかくなんかいろんな意味でもったいないゴーストが出る映画じゃないすかねこれは。

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ラストの歌謡ショーが好き。

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