『哭声/コクソン』『アシュラ』でコリアンノワール地獄めぐり感想文

『哭声/コクソン』は長い映画で156分とかあったんですけどしょせん田舎の猟奇殺人ですから呪いじゃ呪いじゃ騒いだところでどうせ野蛮な田吾作が薬物商売にでも手を染めて村ぐるみで隠ぺいを図った結果とかそういうあれだろうタラタラやってんじゃねぇよさっさと犯人捕まえろよこのヘボ巡査とおもってましたが謎祈祷師を召喚してしまったあたりから(なんなの…なんなの…)わけがわからないなにもわからないなんなんですかこの怪異もう誰の言うことも信じられない!

困惑甚だしかったがしかし思わぬところで真相がわかってつまりこれは『アシュラ2/哭声』です。『アシュラ』の続編でしたの感想。

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『哭声/コクソン』

《推定睡眠時間:5分》

それにしても最初の事件現場になった民家こわかったなぁ尋常じゃなく荒れててしかも照明が暗くてなにが映ってるんだかよくわからない、で外でタバコを吸ってたヘボ巡査クァク・ドウォンが謎の植物が吊り下げられていることに気付くんですけどそれがまた…近づいてよく見てもなんだかよくわからない。よくわからない!

白ふん一丁で野山を駆ける國村隼のビジュアルが強すぎるため國村隼がおかしいと勘違いしてしまうがこの村は妙齢の女が全裸で深夜徘徊してたり道に座って雑談してると知らない女がすごい大量の石を無言で投げてきたり病気になったら医者じゃなくて祈祷師を呼ばれたりするので全体的におかしいしよくわからない。
村人目線でストーリーが進むのでこういうの普通の光景みたいになってますがこれ興味本位で踏み込んだりすると後からビデオだけ見つかってファウンド・フッテージ的なやつになるタイプの村だろ絶対…ていう所で悪魔的猟奇殺人事件勃発なんだからそれはヤバいよね。ヤバい。

ヤバいけどわりと時計を意識させられるのは妙に空気が緩んでいてあんま緊張感とかないため。俺はまだ本気出してないだけと訴え続けるクァク・ドウォンの目に(いいから早く本気を出せよ…!)のもどかしさで愛娘にカーセックスを目撃された時に見せた動揺っぷりともみ消し工作の本気をなぜズタズタに切り裂かれた死体を前にして発揮できないのかと思わずにはいられない。

この村の人間はだいたいそんな感じなのでいつの間にか村中ゾンビだらけ(あんまり嘘は言ってないとおもう)になってしまうが「だろうな!」みたいな。放っといたら絶対ヤバいって分かってるのに誰も有効な対策を講じられないしあんまり真面目に考える気もないっていう寒々しい群像の、その意味ではちょっとだけ『ナイト・オブ・ザ・リビングデッド』とか『サンゲリア』みたいな終末ゾンビ映画の趣もあったかもしれない(だから、タルい中盤を乗り越えて一気に破滅に突き進む様はなんだかドス黒いカタルシス)

『チェイサー』のナ・ホンジンの映画と言われれば確かに背景にライトアップされた十字架が映りこむというのが『チェイサー』同様の仕掛けだったし取り返しがつかないことになるまで事態の深刻さに気付かない鈍感バカ男、そいつに覚醒を促すマセた少女の受難の図式も『チェイサー』み。

そういえば『チェイサー』は暴力デリヘル経営者が近所では評判の好青年的に同類の臭いを嗅ぎ取り化けの皮を剥がしてやろうとする映画だったが、この好青年が自分はスーパー猟奇殺人鬼でもう何十人も女を殺してるの爆弾発言をしてもデリヘル男は信じない、信じないのに絶対にとんでもない悪党だとは気付いているっていうの不思議な印象を受けたところで。

これデリヘル男は猟奇殺人鬼に鏡像を見ていたがそれがあまりにも醜かったからどうしても自分だと認めることができなかった的なことなんだろうと思ってるんですけど、『哭声/コクソン』の最後の最後に出てくるあれっていうのもそういう風に解釈できるものなんじゃあないすかね。

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『アシュラ』

《推定睡眠時間:0分》

平穏な日々を襲った突然の怪異におれが一体なにをしたと嘆いていたクァク・ドウォン巡査でしたがその謎は『アシュラ』で解決。祈祷師として地方営業生活を余儀なくされる前は食べる撃つ殺すが趣味の極悪市長だったファン・ジョンミンを挙げるべく自らも蛇の道に入ったのがこの時は検事のクァク・ドウォンだったのだ!
つまり餓鬼の如く互いを喰らい共に無間地獄に堕ちたふたりの終わりなき闘いの一コマが『哭声/コクソン』だったんである…やっぱり悪いことはできない!

それで『哭声/コクソン』はオカルトよりもオカルトを信じたくなる追い詰められた心情がこわい的な冷笑ホラーと個人的には受け取ったのでげに恐ろしきは悪魔より人間なのですが『アシュラ』を見るとこいつら悪魔より悪魔じゃんいや阿修羅か!

再開発に沸く地方都市で利権と権威に群がる鬼クズ連中が潰し合い殺し合うがここは修羅の国なのでそこらへんに死体が転がってても誰も気にしないしみんな挨拶代わりに目下のクズを殴るし美辞麗句を並べただけの空虚なマニフェストと一片の曇りもない作り笑いを撒き散らすどう考えてもいかがわしい政治ヤクザがその汚職裁判が証人の突然の出廷辞退による疑惑しかない幕切れを迎えてもなお強い改革者を求める人々には支持される。
この街に比べればまだ悪魔憑きが蔓延る村の方が暮らしやすいんじゃないかなって気になるからそれはクァク・ドウォンも隠居しますよね。

その修羅の国の最前線、ファン・ジョンミンとクァク・ドウォンの間でサッカーボールになっているのが主人公の悪徳刑事チョン・ウソンで、これが掃きだめの美学を感じさせてカッコ良かったなぁ。
あそこなんてやっぱり惚れてしまうよほらついにブチ切れて口中血だらけにしてガラスコップをボリボリ食うところが…それだ! それが『哭声/コクソン』の地域はおろか国境を超え國村隼を巻き込んだほどの巨大な怨念の起源だったんだ! あれ呪い送りの儀式でストレス性の問題行動じゃなかったんですね!

ていう『哭声0』の一面も見れるお得な『アシュラ』。あのなんかすごい面白かったですよエネルギッシュで容赦なくて。きったねぇ下町ロケもどこだか知らないけどムードありありでいいよね。最後はなんかもうドリフのコントみたいなありえなさで爆笑。人でなし哄笑ノワール。
祈祷師ダンスもおもしろかったファン・ジョンミン、サイコパスに振り切れすぎ!

【ママー!これ買ってー!】


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演者急死による打ち切りもほかには真似できない衝撃の結末と化す例のアレ的な怪ドラ『キングダム』ですがなんか近しいものを感じたのでコリアンノワールは巡り巡ってラース・フォン・トリアーの世界に接近しつつあるんだろうか。

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