(ほぼ)見ないで感想:映画『追憶』

《推定睡眠時間:60分》

会社経営に行き詰った柄本佑が勝ち組の幼なじみ小栗旬に金をせびるため重い腰をあげて故郷・富山行きを決意するのだがせっかくなのでと小学生の一人娘にますのすしの土産かってきてあげよかの配慮を見せる。ほら、前に買ってきたとき喜んでただろ。この親父が小栗旬に金をせびりに行くのは初めてではない。それを聞いた娘の表情が曇っていたのは優しいが生活力のない親父を軽蔑していたからなのかもしれないが、必ずしもそうとはいえない。
金がないので夜行バスを使うつもりの柄本佑だったが、彼の会社は東京にあるのである。季節的には冬とはいってもますのすしを富山-東京間の夜行バスで持って帰るのは危険なのではないか。きっと前にますのすしを買ってきた時というのも夜行バス移動だろうから娘としては腹を下した記憶が蘇って表情を曇らせた可能性も考えられるのである。

あ~あ~あ~あ~(主題歌)

一方、こちらも柄本佑の幼なじみ岡田准一は富山で刑事をやっていた。岡田准一はメンマが食べられない。子供の頃から変わらないその食わず嫌いがラーメン屋での柄本・岡田じつに十数年ぶりの再会のかすがいになる。
ところでこのラーメン屋はなにかラーメンに特徴があるようには見えないし客層も地元の家族連れとか老人とかだったからいわゆる町のラーメン屋にしては清掃が行き届いて小ざっぱりしている点を除けば何の変哲もない普通の店である。
ラーメンというか中華そば一杯食って店員に千円札を差し出す岡田准一。はい20円のお返しです。

この単なるラーメン屋の中華そばは980円であった。高級中華そばのメンマを残すセレブ岡田。そしてそんなに困窮しているのなら柄本佑は入る前に値段を確認するべきだった。そのへんのどんぶり金銭感覚が経営困難を招いたのでは。

あ~あ~あ~あ~(主題歌)

それにしても。果たしてこのイケメンイケメンひとりイケてない幼なじみ3人組にはどんな過去が。予告編は忘れたくて忘れられない過去を巡る『ミスティック・リバー』的ヒューマン・ミステリーの線で押してきたが本編に入るや即座にこども3人組が猛虎弁の渋川清彦(なんじゃあわりゃあなにしてくれてんねん!)を撲殺!
そこにミステリーはなかった。あるのはバイレンスだったの北陸代理殺人。こども3人組の育ての親・安藤サクラの暴力女衒が渋川清彦なので吉岡秀隆の存在はとりあえず無いこととして3人にとっては折檻継父的なポジションになるが、北陸では盃をくれたほうがマトにされるのだッ!(→実録が現実を喰う! 『映画の奈落』 北陸代理戦争の仁義なき場外戦

あ~あ~あ~あ~(主題歌)

つまりこれはそのような映画らしいのだ。藤子A先生の正しさを実感する北陸の過酷な『少年時代』。そんなトラウマ記憶を乗り越えて3人+αは幸せを掴むことができるだろうかというのが本題なのでは。なぁ~るほどな! そっちか! そっちだったか! ミステリーっていうよりもそっち! まぁそうかどうかも知らないが。
柄本佑はすぐ死んだからつらい過去を乗り越えるのはやはり並大抵のことではないとわかる。わかるのはそれだけで後は爆睡してたので何もわからない。ちなみに柄本佑の死体が発見されるのは氷見港ですが氷見ってA先生の出身地ですよね。これもわかった事に加えてよいのかもしれませんが映画の内容とはまったく関係ないだろう。

あ~あ~あ~あ~(主題歌)

以下おもしろかったところ列挙。
撮影、木村大作。タイトルバックが雪の吹き荒れ白波立つ冬の北陸の荒々しい海景。屏風画みたいですごいかっこいいうつくしい。吹雪が金箔かなんかに見えます。金箔で思い出しましたが小栗旬の妻の命が! みたいな緊迫の場面でもカメラは海にパンしちゃうのでよっぽど北陸の海が撮りたかったんだろうなこれは。俳優とかあんまり興味ないのでそういうのはほかの人に任せました(※想像)

岡田くん魂の熱演。『海賊とよばれた男』に続いて表情筋が切れてしまわないか心配な渋面で怒ったり嘆いたりしきりです。北陸の荒海はさすがに油を売りに舟を出せないし『海賊とよばれた男』でさんざん奴隷のようにこき使った吉岡秀隆が今度はきわめて情けない親代わりなのでフラストレーションも溜まってたいへんだったに違いありませんね(※想像)

安藤サクラのピュアネス。これは非常に凄みを感じたのですがただそこに至るまでのシーンを寝過ごしているので事情はまったくわからなかったです。なんか知らないけどでもすごかったです。
凄惨少年期! 情けない吉岡秀隆! 死んだ柄本佑! 安藤サクラのピュアネス! 起きて見ていたシーンだけ繋ぐとそういう流れになりますからぼくがピュア安藤サクラに受けた衝撃もおおきかったです。

まぁ。なに。ほら。結局。ここまでで2000字くらい書いているのですが感想をまとめると。これじゃあ感想になってない。そうだよね。当たり前。寝てたもん。見てない映画の感想はかけない。
まぁ思い出さないほうがいい過去もあるって映画なのかもしれないからこれでいいんじゃないかなうわすごい言い訳!

あ~あ~あ~あ~(主題歌)

追記:なんかごめん

【ママー!これ買ってー!】


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チャン・イーモウが高倉健へのラブレターとして『単騎、千里を走る』を立ち上げた時にその志を受け取り日本側監督として参加したのは降籏康男だったが、木村大作的様式美と降籏康男的演歌感覚から今度は海の向こうのジョニー・トー『冷たい雨に撃て、約束の銃弾を』に思いを馳せれば『追憶』の正直なんじゃこりゃあなブロークン演出もジョニー・トー的遊戯精神へのリスペクトを込めた返歌の響きを帯びてくる! そんなわけあるかよ。

↓その他のヤツ

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