映画感想:『バッド・バディ! 私とカレの暗殺デート』

《推定睡眠時間:5分》

最近もマーベルの『THOR: RAGNAROK』が『マイティ・ソー バトルロイヤル』、マーキュリー計画の舞台裏を描いた『HIDDEN FIGURES』が『ドリーム:私たちのアポロ計画』となったことで再燃したその邦題どうなの問題ですが、そんなことを気にする繊細な映画ファンなら爆死必至の弾道ミサイル級邦題『バッド・バディ! 私とカレの暗殺デート』。原題『MR. RIGHT』。爆死のうえ溶けてバターになってしまいます。

だがでもしかし。納得。見て納得『私とカレの暗殺デート』。そうでした確かに『私とカレの暗殺デート』でした。これ以上に的確な邦題はないな! あえて文句を言うとしたら末尾に♡を5個ぐらいつけた方が良かったっていうことぐらいかな! 『私とカレの暗殺デート♡♡♡♡♡』!
狂った映画には、狂った邦題をつけるべき。

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あのそれでどういう映画かというと。いつも口がちょっと開いているアナ・ケンドリックがいて。このアナ・ケンドリックが。イタい。わりとかなりイタい。落ち込むと聖域クローゼットにこもって喚く。人目につくところで猫耳ヘアバンドを着けて騒ぐ。空気が読めない。人の話をあまり聞かない。子供の頃の夢だったティラノサウルスには今でも憧れている。
つまり要するにどこにいっても浮いてしまう発達障害系の人。いまおかしんじの映画とかに出てきそうなタイプとでも言えばいいのか。ベースが脳天気なのであまりそんな風に見えないが仕事も続かないし自然と人が離れていってしまったりするので結構、苦労も苦悩もしている。

一方サム・ロックウェル。この人は超絶凄腕暗殺者。息をするように人を殺してしまうゴルゴっぷり。世界中の闇人種から引く手あまた。政府機関からも引く手あまた。すごいね。すごい。
ところが本人は引退して平凡なパンピー生活を送りたかったのだ。平凡なパンピー生活を送りたかったのだがあまたの引く手が許してくれない。伝説の暗殺者捕縛に執念を燃やすFBI捜査官ティム・ロスもその手に加わってますます平凡遠のく。
ベースがぬぼーっとしているのであまりそうは見えないがこっちはこっちで苦労と苦悩の日々なのだった。困り顔で踊りながら今日も通り道に死体を残していくサムロー。

バディというぐらいだからこの二人が運命の出会いを果たす。まぁつらい境遇に生きる者同士で通じるものがあったんだろうな。すぐに意気投合する二人。ようやく素のままの自分を受け入れてくれる相手を見つけた二人の表情にはウルッときてしまう。
アナケンはサムローを家に招く。ロマンティックなムード。サムローは言う。君には才能がある。そしてアナケンに包丁を投げつける。君なら受け取ってくれるはずだ! …あれ?
いきなり包丁を投げつけられてドン引きのアナケン。職業殺し屋って冗談かと思ってたけど、この人もしやガチでヤバイ人なのでは? ラブが一変して疑念に変わる。気づけばアナケンの手には無意識に白刃取りした包丁が握られていた。…え!

そういう映画でした『バッド・バディ! 私とカレの暗殺デート』。

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つまりこれは一種のスーパーヒーローものだよね。近いところでアナケンも出演の『ザ・コンサルタント』、あれとカテゴリー同じ。違うのは『バッド・バディ!』はもっとユーモラスだしもっとキュートだしもっと人死にがドライ。
ちょうど今『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー:リミックス』公開中のジェームズ・ガンに『スーパー!』って映画あるじゃないですか。自分をスーパーヒーローだと思い込んだ狂人のやつ。あれとも似てるな。あの感じです。
まぁ『スーパー!』だってレイン・ウィルソンとエレン・ペイジの狂男女コンビが人を殺していくわけだから“私とカレの暗殺デート”で内容的にはまったく間違っていない…(そして邦題に感嘆符が付くのも同じだ…)。

で『スーパー!』の方はキュートでエグさを隠し切れないしていうか隠そうともあまりしないドン引き系(の名作)なのですがそのへんの塩梅が『バッド・バディ!』絶妙。ギリギリで悪趣味を踏み留まってキュート維持。
アナケンとサムローのキスシーンなんてなぁ。これがなぁ。胸がキュトキュトだよねぇ。孤独な人に特有のハリネズミみたいな躊躇いとぎこちなさ超キュートじゃん。たまらないね。二人の恋路を邪魔するギャングの方々も間が抜けていて良いんです。あっけなく撃ち殺されていくところはお人形劇みたいでした。
ある意味ストレートな悪趣味よりそっちのがヤバいのではないか疑惑が脳の片隅にくすぶり続けているがまぁいいじゃないですかガーリーでキュートなんだから。可愛いは正義でしょ。殺される方が悪なんですよ(ヤバいぞ!)

脚本マックス・ランディス。ジョン・ランディスの息子というよりご近所スーパーヒーロー映画の大傑作『クロニクル』の脚本家という点が重要。そして脚本家デビュー作はジョン・ランディスが監督したホラー競作プロジェクト『マスターズ・オブ・ホラー』の一編『ディア・ウーマン』だ…!
これは猫耳アナケンに繋がるところだな…ディア(鹿です)・ウーマンじゃない…キャット・ウーマンでもない…私はティラノサウルス・ウーマンだ! だいぶいろいろ端折ってそれが『バッド・バディ!』。
監督のパコ・カベサスはニコラス・ケイジのヤケ酒映画『トカレフ』を作った人だそうですが、ここにもそこはかとないヤケ酒感が漂っていたな。確かにヤケ酒しないと私はティラノサウルスだぁぁぁなんて言えない。

あとあれだな『ハネムーン・キラーズ』とか『地獄の逃避行』とか『ナチュラル・ボーン・キラーズ』に連なる殺人カップル映画ていう側面もあって…まぁいろいろあるのですがネタバレに配慮してこれ以上言えない! もうだいぶ言っている気もするが、知らない!
とにかく面白かった可愛かった! 続編、希望!(あのええキャラの人を今度はヴィランにして!)

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