映画『こどもつかい』の感想(ネタバレは多少あり)

《推定睡眠時間:15分》

ヴァニラ画廊のシリアルキラー展に俄然興味が出てきた。というのも『こどもつかい』、こども喰いのお絵かき殺人鬼ジョン・ウェイン・ゲイシーをモチーフのひとつとしていたので。シリアルキラー展の目玉だそうですゲイシーのピエロ絵。
『呪怨』の清水崇監督の映画。主演おばけはジョニー・デップかROLLYのかなりROLLY寄りみたいになった滝沢秀明。そんな映画でゲイシーの意外。変態アート天然派の巨匠ヘンリー・ダーガーがイメージ引用されていたりもしたのでこれはなんだか、実は結構モチーフの採集と組み合わせの妙で見せる。

おもしろかったですね。怖くは全然ないんだけど。

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いやでも怖くないっていうのは別に怖い映画作ろうとしてないよねみたいな感じもあるからそんなに気にならなかったんだ俺は。たとえば感覚が近いのは『悪魔のいけにえ』“じゃない方の”トビー・フーパーの映画とかじゃないかと思うよ。つまり狂気の怖さよりも見世物のキッチュが充満するカーニバル(サーカス)空間のたのしさ、が前に出てしまうという点で。
だいたいあの滝沢くんに怖がれつーても無理がある。タイトルコールは子どもたちの可愛い声ですよ。こどもちゃれんじ! みたいな感じの。怖がれないよ。でも愉快ですよねなんか。

そこがトビー・フーパーとまったく違うというのは絵面の愉快に反してストーリーが陰惨極まるつーとこだった。なにかといえば児童虐待のお話。児童虐待の世代間連鎖というものがテーマになっていた。
主人公は妊娠中の保育士の門脇麦で、この人がどうも受け持った子どもの一人が虐待を受けているらしい事に気づくところから話が始まる。保育麦のパートナーは若手新聞記者。この人は虐待を受けた子どもの親が相次いで不審な死を遂げる怪事件を追っていた。
無関係に見えた(見えない)ふたつの事件は当然リンクしやがてふたり+虐待児に危険が迫り…とまぁそのへんJホラーの常道。別に書かないでもどんな展開か分かると思いますが、つまりこれは呪いを虐待の連鎖のメタファーとしてJホラーのフォーマットに乗せた社会派ホラーなのだった。

映画が始まるとすぐさま怒号。色々あって心労のパンクした母親が娘に手を上げているのですがー、ちょうどよい資料動画っていうか音声が最近あったよねほらあのあれですハゲ議員の。あんな感じ。
児童虐待のテーマでリアルにコミットしたらシリアルキラー展とかハゲ議員とか全然関係なさそうな周辺状況と偶発的リンクを形成してしまったのでこのへん、作り手のアンテナ感度の高さが発揮されたところかもしれない。

アクティヴな社会派映画に敬意を表し、ついでに参考資料として豊田真由子さんと私の関わりのfacebookエントリも置いておこう。
おれもめざすぞ社会派ブロガー!

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それでおもしろかったところなんですけどやっぱシナリオが、このビジュアルで怖がれつーのは無理なんで笑えつーのも無理なんでもうじゃあ話の面白さで保たせるぐらいしか無いと思うのですがその話がおもしろいので、おもしろいえいが。
ゲイシーがどうとか言ってるがなぜゲイシーというとハメルンの笛吹き男がライトモチーフなんである。ハメルンの笛吹き男である。滝沢くんは笛を吹いて子どもを呼ぶのである!
まぁここでバカ映画認定したやつの方がバカという程度には周到なシナリオですからバカっぽいものを貶す俺はおもしろいと思っている輩は大いに反省してください。

ハメルンの笛吹き男のモチーフがゲイシー、ダーガー、赤マント(滝沢くんの役名は黒マントという)、ピーターパンと転がっていく。おとなからゲイシーに見えるものはこどもからはピーターパンに見える的な複眼的ハメルン考察。
キュビスム的に対象を解体していく過程はストーリーの上では忘れられた呪いの震源に迫っていく過程なわけですが、そこで保育麦と新聞記者は滝沢くんの正体だけじゃなくて自分たちの過去にも向き合うことになる。自分の過去と向き合うことが虐待と向き合うことってわけか。

そのあたりでこれめっちゃ上手くないって思ったのはモチーフの組み合わせ方がおもしろい映画つーたが、人形ホラーとかイマジナリー・フレンドのジュブナイル系ホラージャンル類型を虐待を軸としてJホラーのフォーマット上で無理なく展開してんである。
カテゴリーを無視して要素だけ並べればこんな感じになる。児童虐待(暴力、ネグレクト、性的虐待)、虐待の世代間連鎖、過去のトラウマ、イマジナリー・フレンド、ハメルンの笛吹き男、ジョン・ウェイン・ゲイシー、ヘンリー・ダーガー、赤マント(青ゲット)、ピーターパン、歌、ビデオ、カーニバル、幽霊、呪いの人形、滝沢秀明、滝沢秀明、滝沢秀明…。

以上、破綻することなく整然と物語を構成しているわけだから職人芸だこれは。どこまでも機能的で無駄も無意味もひとつも残さない作劇のクールに濡れてしまうね。
加えて最後は光一もかくやの滝沢SHOCK! 滝沢くんのこども芝居はキュートでした!

ちなみにあれすねいちばん良かったのは実は怖いシーンでも滝沢SHOCKでもなくて虐待児を一時的に保護した保育麦が家で一緒に飯を食っているところなのですがあれは子役が芝居じゃなくてナチュラルに笑ってしまっているので楽しそうでよいのです。

【ママー!これ買ってー!】


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思えばドーン・オブ・ザ・こどもな『ザ・チャイルド』もカーニバルのシーンから映画が始まったのだった。こども蜂起はカーニバルから。

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