二本立て映画感想:『ドッグ・イート・ドッグ』『ブラッド・ファーザー』

底辺の自称がポピュラーになってしまった現代日本なので誰も彼もが底辺だ底辺だと落語か。知のファッション化ならぬ痴のファッション化じゃないかこれじゃあと腐したくもなる程にくさくさしているがそんな貴様らファッション底辺に本物の底辺を叩きつけるよ『ドッグ・イート・ドッグ』と『ブラッド・ファーザー』は!

貴重な頭髪を振り乱してでもやるんだよ! 巨匠イメージをかなぐり捨ててでもやるんだよ、底辺!

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『ドッグ・イート・ドッグ』

《推定睡眠時間:20分》

いま監督ポール・シュレイダーのフィルモグラフィーを眺めていたら『ザ・ヤクザ』が脚本家デビュー作とあったのであれと思ったら『ザ・ヤクザ』、レナード・シュレイダーとの共同作業だった。へぇ。
それはべつに関係ないんですけど改めて見るとこわいポルシュレのフィルモグラフィー。『タクシードライバー』とか、『ローリング・サンダー』とか、『ブルーカラー/怒りのはみだし労働者』(これ見たいなぁ)とか、『ハードコアの夜』、『MISHIMA』などなど。

御年いくつだかわかりませんが未だテメェら皆殺しにしてやるスピリット衰えずな『ドッグ・イート・ドッグ』だったので町山智宏『映画の見方が分かる本』に引かれていた盟友マーティン・スコセッシの“孤独を映画にぶつけたが、それでも癒えることはなかった”みたいな言葉が去来する。
三つ子のタクシードライバー百まで。ポルシュレ円熟のルサンチマンが帯びた真実は、隠れキリシタンの十字架よりも重い…。

それでどういう感じの映画かというとムショ上がりのニコケイら悪党が一山当てようとしてグダグダになってくド底辺哄笑ノワールなんですけど絶対ニコラス・ウィンディング・レフン見てるだろ、絶対ニコラス・ウィンディング・レフン見てるだろ。
この色彩とか…このドラッグ感覚とか…このエログロとか…この人でなしギャグとか…この仲間内の諍いとか…この…この…超現実的なラストシーンとか…絶対ニコラス・ウィンディング・レフン見てるだろポルシュレ…!

そこ、本気だと思いましたね。それこそポルシュレ本気の証明ですよ。俺は受信しましたよポルシュレのマインドウェーブを。
俺の方が業界長いのに…俺はずっと底辺クズ人間映画やってきたのに…なんだニコラス・ウィンディング・レフンこのヤロ! ぽっと出の若造がこのヤロ! 俺だってあれぐらい出来るよこのヤロ! 俺は本当の底辺道を歩んできたんだよこのファッション底辺が! この野郎バカ野郎!

…まぁ本当のところはどういうつもりか分からないが『ブレイキング・バッド』とか経過した2017年にもなって今更こういう超過激な()クズは死ぬまでクズのまま系ノワールをぶっ放ってロクに相手にされないポルシュレの哀愁は! 沁みる。

※クソきったねぇバカ底辺のウィレム・デフォーとライムグリーンの出所スーツでおめかしのニコケイも沁みる。愛おしい。

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『ブラッド・ファーザー』

《推定睡眠時間:25分》

メルギブ荒野に帰還! 的なわくわくキャッチコピーはよくよく考えたら援護射撃と言いながら背中を蜂の巣にしている。酒をやめて今度こそ真っ当な人生を送ろうと決意したムショ上がりのメルギブがやはりやっぱり荒野の掟に絡め取られてバイオレンスに堕ちていく、の巻だったので。
魂のハクソー・リッジから逃れられないメルギブがんばれとおもう。

底辺というかアウトローの映画。アウトローの世界に文明社会のルールは通用しねぇ。ネットにスマホが当たり前と思っていた情報環境もアウトローの世界では違ぇ。ムショの知人にメッセージを送りたい時はメッセージを書いた紙を丸めて掃除当番にモップで運んでもらう。
アウトローの世界にチャットワークはねぇ。あるのはチェーンワークだけだ! まぁなんかそういう感じの映画でしたね。

面白いよねやっぱりこういうの、娘に手を出した野郎は絶対殺す系アクション。いやアクションパートで大体寝ているからアクションの印象はほぼ無いんですけど添え物程度のバイクチェイスとラストの枯れた銃撃戦を見るとあんまセガールとかリーアム・ニーソンのあれとかの感じじゃないなこれたぶん。
悪い友達とつるんで荒野道に入ってしまった娘(エリン・モリアーティ)にアウトローの不毛を身をもって教えるメルギブ。こんな生き方カッコ良くないし面白くもないぞと。行き着く先はお手製地雷原に囲まれてどっから手に入れたか知らないナチの軍服とか南北戦争の遺物とかネットオークションで売る生活だぞと。頼むから俺みたいにはならないでくれ。

メルギブが言うと説得力が違いすぎるがバイクチェイスとかソードオフだかのショットガンとかメルギブによるメルギブ映画プレイバックの趣なので半ば確信犯的にメルギブの懺悔なのだこの映画は。これは沁みるこれも沁みる。
あと南北戦争オヤジのマイケル・パークス、正常に狂っていて(荒野では狂気こそ正常なのだ!)超こわかったです。どうも? ベトナムで? 壊れてしまった? かどうかはそのへんも半睡眠だからよくわからないのですがメルギブのかつての上官だったようなことを言っていた気がするのでこうして!

彼とかつての自分を救うためにハクソー・リッジへ赴くメルギブという風に妄想接続されてしまってまた沁みるのだ…。

【ママー!これ買ってー!】


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肉体的な全盛期を過ぎたアクションスターの悲哀もの沁みる。

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