映画感想『いつまた、君と ~何日君再来~』

《推定睡眠時間:45分》

爆睡。開始約5分、タイトルが出た直後にもう寝に入ってしまった。これではストーリーがまったくわからないから公式サイトのあらすじを見てみよう…。

81歳になった芦村朋子は、不慣れな手つきでパソコンにむかい、亡くなった夫・吾郎との思い出を手記として記録していた。しかし、朋子は突然病に倒れてしまう。
(…)綴られていたのは今まで知ることのなかった、戦中・戦後の困難な時代を生きてきた祖母・朋子と祖父・吾郎の波乱の歴史と、深い絆で結ばれた夫婦と家族の愛の物語だった。http://itsukimi.jp/

いやそこは見てるんだけどなと思ったら時代背景のページの方がむしろあらすじと言え、ほぼラストまで展開が書いてある。

それによると事業のため意気揚々と南京に渡った朋子(尾野真千子)&吾郎(向井理)だったが時は昭和15年つーことでさっさと事業は破綻してしまい(そこ見てませんが)子どもが生まれ上海に移り住みこの先どうしようかなと思っていたら敗戦、引き揚げてきたところで職も無く更にもう一人もう一人と子どもも出来ちゃってあぁ大変どうしようとそういう感じのストーリーだそうですだいたいそのへんで起きました。

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しかしーこういうのはーアメリカ映画にはホワイトウォッシュなる用語があるわけですが類義語としてクールジャパンならぬクリアジャパンというものを使ってはどうかと常々思っていてたとえば『ALWAYS 三丁目の夕日』に代表される美しい/美しかった日本/汚れていなかった日本、の誇張されたイメージを喚起する行為をクリアジャパンと呼ぶことでそうした傾向の映画について一貫した見通しが得られるんじゃないかなどと、などと、考えながら見ており、つまり正直揶揄っ気満々だったのですが結論から言えばすいませんでしただよね。

いやー、金ないよ金。金ないっす。上手くいかないよ上手くいかない、人生上手くいかないっす。戦中戦後たいへんでした。やっと仕事が軌道に乗ってきたなぁとその矢先に事故に遭って腰を痛め療養している間に会社の金が横領され倒産また路頭に迷う、ぐらいのダイナミック人生の岐路がナレーションベースのダイジェスト処理に沈んでしまうとかどんだけ怒濤の人生かよ…!

貧しい中にも希望が、とか。苦しい時にも朗らかに、とか。もうそんな余裕完璧にないっす。貧しい時には貧しいだけです。苦しい時には苦しいだけ。清貧とかありませんよ嘘だよねあんなのでももしあるとしたら、諦念の中にあるに違いないのだ。
この映画のええなと思ったところは生も死も平等に並べて無表情に通り過ぎてしまうような超然とした、精神の摩耗の末に魔力の枯渇した世界が見せる平穏、というような視点だった。

まったく救いがない、救いもなければ絶望もない、ただ苦みだけを帯びた記憶を飄々と飛び石を渡るように辿っていく走馬灯の如し臨終映画として静かにハートをビートされるというものですし、それはクリアな野際陽子へのレクイエムを感じるんだよこれは。

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さーてもう十分煙に巻いたのでそろそろちゃんとしたかんそう書こう。ちゃんとした、ってでも結局これだけ寝てるわけだからちゃんとは出来ないんだどう頑張っても。臨終映画としてこれだけ老気を放てばそれは眠くもなるわ、と思うが老人の臨終映画であるから睡眠はむしろ理解の糸口なのである…とかそういう破綻文はもういいですはい。

いや、ぶっちゃけ言うとだよぶっちゃけ言うとつらい映画なんだ。戦後の福島のオープンセットとか頑張ってるんだろうなあとは思うが予算厳しかったんだろうなあという気もするんだ。それがもうバンバン伝わってくるんだ。バンバン。
関西弁の尾野真千子。つらかったよ。正確には関西弁が、つーかこういう役柄の尾野真千子がつらいよ。どんな苦境に立たされても献身的に夫を支える尾野真千子。こういう女房が理想でしょ? みたいな感じがつらいんだよ…。
なんでも向井理の祖母の手記を基にした向井理の持ち込み企画。本気じゃんそれめっちゃ本気じゃん。そういうの、悪く言えないじゃん…つーところも含めてとにかくやたら物語とは別の水準でつらい映画だった…。

そのつらさを味と言えば確実に嘘になるが、つらさの先になにかがある気はしないでもないから嫌いになれない(面白いとは言ってない)
俺の感覚ではちょっと初期の黒沢清映画に近かった。ガタガタ軋みをあげながら不安定に浮遊するような、黙ったかと思えば急に爆発する振幅の大きい、収まりは悪いのに妙に心地の良い不思議な感慨。

監督の深川栄洋という人の映画は『先生と迷い猫』つーのを見たことがある。あれもなんか変な映画だったな死の予感の漂う枯れた…そういう、俗世的な価値観から少しだけ離れた所から世界を見渡してるのかもしれないなこの人は。
ありふれた、ささやかな全くささやかなハッピーエンドもそこから眺めれば望外の輝きを放つんじゃねぇのって感じであそこ、なんか凄みがあった。

※あと高畑充希の主題歌も良かったです。

【ママー!これ買ってー!】


霧の中の風景 [DVD]

なんとなく…。

↓原作

いつまた、君と ~何日君再来 (ホーリージュンザイライ)~ (朝日文庫)

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