映画の感想『兄に愛されすぎて困ってます』(主演:土屋太鳳)

《推定睡眠時間:0分》

コクる映画かと思ったらコケる映画だった。
ウッドテーブルにコケて血の繋がらない兄(片寄涼太)に押し倒される格好になる土屋太鳳、神社の石段でコケて兄に抱き留められる土屋太鳳、風呂場でコケて兄と混浴してしまう土屋太鳳…。
正確な回数は不明も少なくとも4回は土屋太鳳がコケる場面のあった劇場版『兄に愛されすぎて困ってます』はコケを見る映画と言っても過言ではない。

だがなぜコケるのか。血が繋がらないとはいえ兄は兄、オブラートに包んではいるが倫理的な問題を孕んだ恋愛物語を“偶然にも”とエクスキューズを入れながら肯定するために導入されたシチュエーションが太鳳のコケに他ならない。
それに加えて明らかに、このコケは演技経験の浅い片寄涼太へのアシストである。片寄涼太のみならず兄系イケメンズは全体的に演技が固いが、コケによってシークエンスにタイミングと流れをもたらすのがここでの土屋太鳳なのである。

ドジでバカで優柔不断なダメ妹に徹しながらコケによってさりげなく映画を回していく土屋太鳳。至芸だと思います。

あとこの映画がいかに土屋太鳳の存在に頼っているかというのは妹系ダメ女子高生を兄や成人男性が寄ってたかって喰おうとするそれはお前マンガなら良いけど実写に落とし込んだら生々し過ぎるだろそのちゃお的少女ドリーム世界観(※原作はショウコミでした)っていう企画の根幹に関わる巨大課題を太鳳の起用ひとつで完全回避しているところですよねだって太鳳だからね土屋太鳳だからね妹系ダメ女子高生って言ってますけど土屋太鳳だからね!

同じ役柄を仮に石井杏奈で想像したまえ。石井杏奈を口説くノンスタイル井上が変態になってしまうじゃないか。太鳳の場合はノンスタイル井上にネタを振ってあげているようにしか見えないのでそのような淫行感は感じさせないのであるいやそれがラブコメとしていいかどうかは置いておいて。

ていうか、知らなかったのですがなにこれドラマの映画化じゃんしかも追加エピソード的なやつじゃなくてドラマ版と完全地続きの完結編じゃん。映画、始まってから気づいたじゃん。すげぇじゃんアウェー感。やってしまったと思ったよね。

でも面白かったです。スクリューボール・コメディていうコメディ映画のサブジャンルがありますけれども、あのなんかテンションとかユーモアの振幅の大きい30~40年代ハリウッドのロマコメのことだそうですけれども、ジャンル論はさておきなにこれこの怒濤の躁展開スクリューボールとしか表現できないじゃんうわぁぁたーのしー!

たぶん、ドラマ版見てなかったから。見てる人にはお馴染みに違いないあれやこれが映画版なのでフェスティバル的に押し寄せてくるファンミーティング的ななにかですから説明とかそういうの無いですしねカオスじゃないすか初見の人にはカオス。
兄とイケメンズに振り回されてどうしようの土屋太鳳に心境がシンクロしてしまうよ。俺わかりましたよドS男子に壁ドンされる系の主体性のない女子高生映画がなんであんなに多いのか…。

映画、太鳳が通学バスに乗る場面で始まっていたな。どうして通学バス又は電車に乗りたがるのだろう女子高生映画。太鳳的直近では『PとJK』も同様のパターンでありこの場合は通学ではなかったが同級生と路面電車に乗る場面がファーストカット、ていうかチャリでかっ飛ばす太鳳とかすったもんだの末に二人だけのチャペルで愛の契りとかカマボコ的に同一構造なんですがなにそういう金型でもあるんですか?

そういえばプロットからソフトに香るインモラルを太鳳で脱臭する手法も同じだ…太鳳と亀梨くんが結ばれるのはチャペルじゃなくて二人きりの高校の講堂だったが意味論的な違いはないだろう。

ところでスタッフロールに入ると通例キャストのクレジットがあってそれから製作のクレジットと続きますが多いよ製作にクレジットされてる人多いよ。なんか色々あるんだろうなエグザイル族の人も出てればお笑いの人も出てるわけだから知らないけど。芸能界、って感じしたな。

あれだなバラエティ的な過剰エフェクト演出とかそのへんも芸能界な感覚だ。風呂場で太鳳に片寄涼太の髪を洗わせて「お客さん初めてですか?」の脚本上は確かに美容室を意味するとしても絵面的には全く違うものが想像される台詞を言わせるセクハラも芸能界的だし、太鳳のコメディエンヌとしての才の最大限発揮された狂騒が展開の中で萎んでいき結局はクソつまんねぇ純愛ものに落ち着く予定調和も芸能界の一言、だいたい主役が芸能界のしきたりを感じさせ過ぎる太鳳の時点で…芸能界、って感じだよな!

芸能界なのである。マンガ映画とかアイドル映画とかじゃなくて芸能界映画なのである。土屋太鳳とは何者か。司会者である。なぜ我々が相手役が違うだけで判で押したような内容しか持たない太鳳ムービーをそれでも求めるのか。ヘキサゴンだからである。つまり土屋太鳳はその進行とゲスト捌きの巧さから言ってアゴのない島田紳助である。

『兄に愛されすぎて困ってます』、通称『兄コマ』。感想の結論としてはそういうことになるが最後に出てくる土屋太鳳の母親役がYOUであり念願叶って兄妹で付き合うことになった片寄涼太と土屋太鳳が最後にそのご報告をするのだったがまぁうちの子だからね、いいんじゃない? で受け流すのはさすがのアバウト子育て術だとおもった。

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